【大相撲】最近5年は大関陥落力士が急増…角界の期待背負うスター候補・大の里
史上最速の所要9場所で大関昇進する大の里
大相撲9月場所は関脇・大の里が13勝2敗で優勝し、大関昇進を確実にした。
史上最速のデビュー7場所目、12勝3敗で初優勝した5月場所に続いて2度目の賜杯。7月場所でも9勝を挙げており、大関昇進の目安とされる3場所合計33勝をクリアする34勝を挙げ、そのうち2度が優勝とあって文句なしの昇進だ。
幕下付け出しデビューから所要9場所での大関昇進は、昭和以降では豊山と雅山の12場所を更新する史上最速。また、敢闘賞と技能賞をダブル受賞し、自身の記録を更新する、新入幕から5場所連続の三賞受賞となった。
平成以降の大関昇進力士の直前3場所成績は下の通りとなっている。
大関陥落の貴景勝は引退
スピード出世を果たした大の里だが、重要なのはこれからだ。最近は大関に昇進しても定着せず、陥落する力士も少なくない。
大の里と入れ替わるように大関から陥落した貴景勝は、関脇で迎えた今場所も早々に休場し、千秋楽を待たずして引退を決めた。
照ノ富士が2021年9月場所に昇進して以来、横綱は誕生しておらず、その前は2017年3月場所の稀勢の里までさかのぼる。強い大関、そして名横綱の存在がないと角界の空洞化は避けられない。
白鵬が引退して以降の混沌とした状況はいつまで続くのだろうか。最近20年の大関陥落力士と翌場所成績は下の通りとなっている。
尊富士も十両優勝で復活ののろし
2019年以降、栃ノ心、高安、朝乃山、御嶽海、正代、霧島ら将来を期待された新大関が次々と陥落していった。今場所の両大関・琴櫻と豊昇龍も8勝7敗と勝ち越すのがやっとだ。上位陣が強くないと場所は盛り上がらない。
わずか9場所での大関昇進は称賛されるべき記録だが、望まれるのは決してそこではない。強い大関として実績を残し、いずれ横綱に昇進することこそ大の里には期待される。
石川県河北郡津幡町出身の大の里は、能登半島地震や記録的な豪雨被害に苦しむ故郷の希望の光でもある。また、3月場所で110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士もケガで番付を落としたものの、今場所13勝2敗で十両優勝。大の里とともに角界を盛り上げないといけない存在だろう。
いつの時代も、どんな競技でも、スターの存在は底辺を拡大し、ファンを増やす。大関になるとタニマチの誘惑やメディア露出が増え、土俵の外で忙しくなるが、大の里は今後もケガに注意して稽古に励み、いずれ角界を背負う存在に成長することを切に願う。
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記事:SPAIA編集部