ガレッジセール ゴリが教えてくれる沖縄。お墓は全然怖くないし、便利な方言「だからよー」で地元の人と仲よしに
お笑い芸人や俳優としての活躍にとどまらず、映画監督として沖縄を舞台にした映画制作にも精力的に取り組むゴリさん。美しい海や観光スポットだけじゃない、沖縄でのディープな過ごし方や知られざる魅力について教えてもらいました。
ガレッジセール ゴリ
1972年、沖縄県那覇市生まれ。1995年に同郷の川田広樹とお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成、2025年に30周年を迎えた。2006年から映画監督のキャリアをスタート。2018年に制作した『洗骨』はモスクワ国際映画祭、上海国際映画祭などの映画祭に出品され、日本映画監督協会新人賞を受賞。現在、最新作の『かなさんどー』が公開中。
YouTube:ゴリ★オキナワ @gori_okinawa
Instagram:@teruyatoshiyuki1972
毎月帰ってきて、情報をアップデート
——沖縄には、どれくらいの頻度で帰省されますか?
ゴリ 月に一回、1週間くらい滞在するというのをもう何年も繰り返しています。その1週間で沖縄のレギュラー番組とか、YouTubeの撮影をしています。
沖縄にはほぼ仕事で帰ってくるんですけど、東京で10時間働くのと、沖縄で10時間働くのって、体にたまる疲れがまったく違うのがおもしろいんですよ。
東京でロケに行くとして、バスで2時間移動するなら、だいたいみんな寝るか、スマートフォンを見て過ごすかなんですけど、沖縄で那覇に集合して北部まで移動するなら、みんなカーテンを開けて外の景色を見ています。
時間の使い方とか心のもち方が違うんですよね。都会での移動は仮眠をする時間なのに対して、沖縄での移動は景色と人の営みを観察する時間。移動が苦じゃないのは素晴らしいです。
常に考えているのは仕事のこと
——沖縄でオフの日は、どう過ごしていますか?
ゴリ 基本的には、次にYouTubeで紹介するお店の情報収集ですね。
いろいろな人から聞いたおいしいお店をスマホにメモしていて、一人で食べに行くんです。それで紹介したい!と思ったら、スタッフにアポを取ってもらい撮影に行く。
お店の人には「この前、サングラスして隅のほうで食べてましたよね?」と、バレています(笑)。
次に撮影する映画のロケハンをすることも多いですね。僕は休みをただ休むというのができなくて、どうしても何か次につながる時間にしたいと思うので。
このインタビューは栄町市場で撮影させてもらいましたが、明るい時間に来ることはあまりないので、映画で使えるなとか思いながら歩いていました。
——ゴリさんの好きな景色は?
ゴリ うるま市の海中道路です。なぜかというと、わが照屋(てるや)家の本家がうるま市にあり、親戚がいてお墓もあるので、小さい頃から正月、お盆、シーミー(清明祭という4月のお墓参り)といった行事のときに行く場所だったんです。
海中道路は長さが5㎞くらいあって、橋に見えるけど橋ではなく道路。両側にエメラルドグリーンの海が見える景色が何分も続くから、約5㎞の天国への道みたいで、この道の往復が大好きです。
おともにぜひ! なのが、海中道路のほど近くにある『丸一食品』のいなり寿司とガーリックチキン。沖縄のいなり寿司は皮に少し酸味があり、米がもちもちしていて、ちょっと甘くて。独特の味なので、食べたらファンになる人続出です。
でもガーリックチキンは車の中で食べると、完全にガーリック車に(笑)。だから途中で車を停めて、景色を眺めながら外で食べるのが気持ちいいですよ。
——おすすめのお酒は?
ゴリ 僕がよく飲む泡盛は、菊之露酒造の「菊之露V.I.P」。ほとんどの居酒屋に置いてあって飲みやすいです。金武(きん)酒造の「龍(たつ)」も、少し甘みがあっておいしいんですよ。
あとお店にあるとうれしいのが、瑞泉(ずいせん)酒造の「御酒(うさき)」です。
古酒じゃないのに、とてもまろやかでうまい。泡盛のクセが苦手という方でも飲みやすいので、チャレンジしてほしいです!
沖縄方言を使えば、初対面でも仲よしに
——地元の方と仲よくなれる、沖縄の方言はありますか?
ゴリ 「だからよー」ですね。そうだよね、みたいな状況で「だからよー」って言うと、地元の人は大爆笑間違いなし!
自分がヘマしたときもそれをごまかせる、本当に便利な言葉なんです。例えば「なんで勝手にケーキ食べた?」と怒られても、「だからよー」でなんとかなります(笑)。
よく勘違いされるのは「○○しましょうね」という言葉。一緒にするのではなく、自分が「○○します」という意味で使います。
「そろそろ寝ましょうね」と沖縄の女性に言われて、ドキドキしながらずっと待っていたという男性の笑い話も(笑)。
3カ国を旅したような贅沢感が沖縄の魅力
——初めて沖縄に来た方を連れていくなら?
ゴリ やっぱり栄町。まず『新小屋(あらこや)』に行きます。豚専門の串焼き屋さんで、僕のお気に入りはタン、タン元、タンスジというタン3種とハラミ。
あとぜひ食べてほしいのがレバー。僕はレバーのパサパサ感が苦手でいつもは食べないんですが、ここのはフォアグラみたいなおいしさで。それを紹介したくて食べてもらうんです。
でも、ここでお腹いっぱいにはさせずに、そこから『栄町ボトルネック』に行き、沖縄そばを食べます。あつあつのスープがやかんに入った状態で出てきて、自分で注ぐスタイルがうまいんですよね。
まだお腹に余裕があったら『食堂カフェとも』へ。にんにく餃子を食べてみんなでニンニク臭くなり、締めで知り合いのバーに行って、ベロベロになってほぼ記憶なく帰るっていう流れ(笑)。
栄町市場の夜の、東南アジアに来たような雰囲気がいいですよね。
沖縄って3カ国を旅したような、さまざまな表情があるんです。海のきれいさを一つめの表情としたら、市場本通りのせんべろ街とか、栄町市場の迷路感って東南アジアのような二つめの表情がある。
また北谷(ちゃたん)のアメリカンビレッジに行けば、アメリカに来たような三つめの表情が。小さい島の中で、いろいろ楽しめる贅沢感が沖縄の魅力だと思います。
——沖縄に帰ってくると食べたくなる、沖縄そばのお店は?
ゴリ 国際通りから近めのところでいうと『楚辺(そべ)そば』ですね。カツオ出汁のスープが濃厚でおいしいし、ソーキも三枚肉も甘く煮てありやわらかくて間違いないです。
あとは宜野湾(ぎのわん)の『3丁目の島そば屋』。ここの特徴は一杯の島そばに細麺、太麺、ちぢれ麺の3種類の麺がまざっていて、食感の違いが楽しめるのがおもしろい。
お墓を見に行くと霊が喜ぶ!
——映画の撮影で出会った、思い出深い場所はありますか?
ゴリ 『洗骨(せんこつ)』に出てくる粟国島(あぐにじま)のお墓です。全然怖くないんですよ。
映画にも出てきますが、あの世とこの世の境という道が実際にあります。島の人も「また帰ってこられるからね」と、普通に車で通る道なんですが、その楽観的な死生観が心地よくて。あの世って怖いものとか、戻ってこられないものじゃなくって、案外気楽に考えてもいいのかなって思わせてくれたのが粟国島です。
命あるものは日が昇る東側に住んで、死んだ人=お墓は日が沈む西側にあるんです。西側の海岸に面した崖は階段状になっていて、海が見渡せる気持ちのいい場所にお墓がたくさんあります。
『洗骨』の撮影を始める前、粟国島にいるユタ(霊媒師)のおばあちゃんに「お墓で映画の撮影をしようと思うんですけど、霊に怒られますかね、失礼ですかね?」って聞いたら、「人が来てくれるとにぎやかになるから、うれしいものよ」って言ってもらえたんです。だから、怖がらずにぜひ行ってみてください。霊が喜ぶらしいので。
沖縄に帰ってくると、まず親のお墓に手を合わせに行くんです。お線香をつけて、少し話をして、燃えつきるまで20分くらい時間がかかるので、そこでパソコンを開いて映画の脚本を書き始めます。
沖縄のお墓って怖くないし、文化であり芸術だなと思っていて、僕は好きなんですよ。いまは破風(はふ)墓という簡易的な形のお墓が主流ですが、亀甲(かめこう)墓という亀の甲羅みたいなむかしながらのお墓が、風格があって美しいので見てほしいです。
亀甲墓の形は女性の子宮をイメージしていて、人間は子宮から生まれ、亡くなったら子宮に帰るという意味で作られていて、そういう考え方が好きですね。
——知られざる沖縄の魅力は、ほかにも?
ゴリ 映画『かなさんどー』に出演してくれた浅野忠信さんが、沖縄の“筋道”を歩くのが好きと言っていて、なるほどなと改めて気づかされたんです。古い住宅地の筋道を歩くと異国情緒を感じます。
戦後焼け野原になったあとに、たぶん無法地帯のまま家を建てていったという歴史的背景があると思うのですが、道が入り組んでいて細かったり、曲がっていたり、その味がたまらないですね。
北部のやんばるに行けば、「ジュラシック・パーク」のような原生林がたくさんありますが、ちょっと遠いので、僕のおすすめはお手軽な那覇の末吉公園です。
公園っていう名前だけど、もう森ですよね、巨大な森。ガジュマルとか南国を感じる植物が多いので、だだ歩くだけで心のデトックスになると思います。首里城に行った帰りに寄るのもいいかもしれないですね。
——最後に、ゴリさんにとって沖縄はどんな存在ですか?
ゴリ いずれ帰る場所です。いろいろなところに行って、いろいろな経験をして、刺激を受けて、学んで、それを沖縄に感謝を込めて還元したいです。
骨を埋める場所は沖縄だと思っていて、木の下に埋めてもらうか、海にまいてもらうかを考えています。
親族だけじゃなくて、僕のエンタメが好きだった方も気軽に来られる、木の下に埋めてもらえたらうれしいなって思っています。
聞き手=竹内省二 撮影=松本佳恵
『旅の手帖』2025年6月号より