【最新アルバムを語る】THE BACK HORN・松田晋二 独占ロングインタビュー
2023年、結成から25周年を迎えた「THE BACK HORN(ザ・バックホーン)」。
2024年3月には一夜限りの25周年記念ライブに始まり、東京・大阪の野外音楽堂でのワンマンライブ、4都市での対バンツアーに加えて、ロックフェスティバルへの出演。その最中に、“影”がテーマの「修羅場」「ジャンクワーカー」を、“光”をテーマにした「タイムラプス」「光とシナジー」を配信シングルとして4曲リリース。そして2025年1月に2年9ヶ月ぶりとなる、最新アルバム「親愛なるあなたへ」を発売。
バンドのリーダーでドラム担当の松田晋二さんに、この一枚に込めたメンバーの思いをうかがいました。
2025年1月、普段あまりライブでは演奏しない楽曲を選曲するライブ「マニアックヘブン」が開催されました。過去の楽曲を振り返る機会になったと思いますが、昔に比べると作曲の仕方がだいぶ変化したのではないでしょうか?
松田さんだいぶ変わりましたね。ほぼ100%と言っていいくらい。
昔は、合宿で「こんな曲作ろう」とアイデアを出し合い、ギターのアルペジオやドラムとベースのセッションから楽曲を作っていましたが、今はメンバーそれぞれがある程度完成したデモを作り、それを持ち寄る形になっています。
デモはワンコーラスだけのこともあれば、フルコーラスで構成まで作り込んでいることもあります。
今は打ち込みもできるので、昔とはまた違ったアプローチになっていますね。
打ち込みだと、実際に演奏すると「このフレーズは叩けない」みたいなこともありますよね?
松田さんありますね(笑)。ただ、メンバーは全員ドラムが好きで、実はみんな叩けるんです。でも、それぞれこだわるポイントが違っています。
(Gt.菅波)栄純は、展開ごとにドラムパターンを変えたがるタイプ。曲の個性に直結しているので、展開を作るのが好き。
(Ba.岡峰)光舟は、フィルインや細部へのこだわりが強い。
(Vo.山田)将司は、ドラマーが思いつかないような、奇想天外なグルーヴを持ち込むことが多いですね。「これ、かっこいい!」って。
それぞれの個性が、今回のアルバムにもかなり影響しています。
1月29日に発売になったアルバム「親愛なるあなたへ」も、メンバーの個性が強く出た楽曲ばかりですね。メタルっぽい曲もあれば、パンクやスカっぽい曲もある、かなり挑戦したアルバムになった印象です。
松田さん先行して配信されていた「光と影」シリーズの制作自体が、もう一度自分たちがワクワクするような曲をつくりたいと思ってスタートしたんです。
最初は「アルバムを作る」と決めていたわけではなく、まず新しいコンセプトに身を投じてみた感じです。 その中で、今まで好きだったグランジ的な要素やオリエンタルな要素を取り入れて、これまでになかったような楽曲構成が生まれていきました。
「修羅場」ができたときは、「これは新しい手応えがある」と感じましたね。
「光と影」シリーズがあったからこそ生まれたアルバムですね。
松田さんそうです。「光と影」シリーズだけでは収まらない、自分たちの表現があるはずだ。
もしアルバムにするとしたらどうするか、と想像してメンバーそれぞれがアイデアを持ち寄ったんです。
今回は主に栄純が大きく作曲に携わっていますが、アルバムの全貌が見えてきた時、「こういう要素の楽曲を他のメンバーが作ったらどうなるんだろう?」と考え、さらに広げていきました。
「修羅場」を初めて単発で聞いたときは、ファンの皆さんはきっと「え、これはどこに向かっているんだろう…」って、戸惑いと言いますか、ファンだからこその心配と言いますか、「なんかまたとんでもないことになってきたな」という予感があったと思うんですけど(笑)。
アルバムで聞くのと、1曲で聞くのではまた違った印象になるのではないかなと思いました。
やっぱり、アルバムにできてよかったな、というのが感想です。
楽曲の並び順にも悩まれたのでは?
松田さんかなり悩みましたね。今回は、配信シングルの「光と影」シリーズと25周年ライブのために作った「親愛なるあなたへ」の5曲がすでに発表済みで、アルバムのための新曲が少なかったんです。なので、僕は新鮮さが出るようにはどうしたらいいか、と考えていましたが、そうすると「光と影」のグラデーションがうまく出なくて。
結局は、「Mayday」や「透明人間」とか、影の部分から光へ向かう楽曲をイメージして作っていた栄純が考えてきた曲順で決まりました。
やっぱり、意識して作ってきていたので「あ、この曲はこの場所に必要だったんだ!」と流れがしっくりきましたし、ラストの「明日世界が終わるとしても」へと感動的につながる。
聴いた時に「これがベストだ」と確信しましたね。
アルバムタイトル『親愛なるあなたへ』もストレートで新鮮でした。どのように決まったのですか?
松田さんTHE BACK HORNって、想像性のあるというか、イメージが膨らむアルバムタイトルが多かったと思うんです。なのでタイトルが最初に発表されたとき、ファンの皆さんも「どんな意味が込められているのか?」と考えたんじゃないかなと思います。
アルバムの1番最初の曲「親愛なるあなたへ」は、25周年ライブの前に、将司が「ライブに向けて、ファンのみんなへのサプライズとして1曲作りたい」と言ったことがきっかけで制作しました。
栄純が曲を作って、僕が歌詞を担当することになったんですけど、それって(ライブで)1回聴いて終わりじゃないですか。(なにを歌っているか伝えるには)ハードルが高いなと。
なので、難しいことではなく、まっすぐに、わかりやすく、でもしっかりと理由を感じられる言葉、歌詞が必要だなって思ったんです。
最終的に栄純と一緒に「『親愛なるあなたへ』は本当に自分にとって大切な人って意味で、誰でも自分事に置き換えられる言葉だね」と。
英語にすると、“Dear”という単語が当てはまりますが、Dearに値する大切な人って、誰にでもいると思いますし、こういう文学的なメッセージ、言葉遣いは、僕たちとしてもぴったりだなって。
もちろん、そのときはアルバムタイトルになるなんて、ましてやアルバムに収録されるなんて思ってもいなかったんですけど。
そのあと、「光と影」シリーズを経て、アルバムの全貌が見えてきたときに、やっぱり思いが1番強くて、制作の動機や楽曲に込めたメッセージ、自分たちの意思表明でもある「親愛なるあなたへ」からアルバムが始まって、ラストの「明日世界が終わるとしても」でもう一方の誓いというか、覚悟というか、「歌い続けて希望の種を蒔いて行くだろう。変わらぬものを俺らは歌うだろう」というフレーズにたどり着く物語っていうので、「このアルバム完成したな」って。
アルバムを通して聴いてもらうと、「ここから、このまっすぐな親愛であなたへ歌い続けて行くんだ。
俺たちを結びつけてるライブの場所、音楽が鳴り、生きている音がする場所は誰にも邪魔されずに俺たちでこれからもこの場所を守って行くんだ、続けて行くんだ、この音楽を続けて行くんだ。
一緒に共鳴し合っていくんだ」という思いが伝わると思います。
「月夜のブルース」は、松田さんが歌詞を担当されていますね。
松田さんそうですね、曲は将司が担当しました。
実は、「光と影」シリーズの制作中、自分の中でスランプのような時期があったんです。
普段から、机に向かって「さあ書くぞ!」って曲を何度も聴いて、将司が歌っている姿をイメージしたり、メロディーから言葉を拾いながら書くことが多いんですが、光シリーズ2曲目の「タイムラプス」の作詞のときに、“光ってなんだろう”って考え込んじゃって、結構長い時間テーマに向き合っていたんです。
最終的に栄純や将司から意見をもらいながら作って、ファンの皆さんからの反響もあったのでひと安心でした。
そのあと、「月夜のブルース」のフレーズがある日突然、言葉がバーッと降りてきたんです。
まるで天からの力を受け取ったような感覚でした。
ほかのミュージシャンにも、「歌詞ってどうやって書いてるの?」と酒飲みながら聞いてみたんですけど、みんな年月を重ねてくると「あ、もうこれ以上出てこないな」っていうのがわかるらしいんです。
そのタイミングがわかっているから、「あ、これだ、今見えた!」という瞬間に寝食をぶん投げて極限まで詰める、って言っていたんです。
短期間で仕留めそこねると解釈がだんだん変わってきちゃって別物になってしまうことがあるから。
この、瞬発力が大事な作詞方法は初めてだったので、いい経験でした。
ただ、歌詞は「向き合いきれずにいなくなってしまった相手をずっと悔やんでいる」という、かなり切ない内容。
男目線のしみったれた歌ではありますが、女性のリスナーがどのように受け取るか気になりますね。
アルバムを引っ提げてのツアー、仙台には2025年5月24日(土)、セミファイナルでいらっしゃいます。
松田さんライブでは、さらに生々しさや肉体的なエネルギーが加わると思うので、ぜひ体感してほしいですね。
(Live Information)
“THE BACK HORN「KYO-MEI ワンマンツアー」~Dear Moment~”
日時/2025年5月24日(土)開場17:15、開演18:00
会場/仙台Rensa
料金/6,000円(ドリンク代別)、4歳~18歳2,000円キャッシュバック(当日会場にて身分証提示)
問合せ/GIP(https://www.gip-web.co.jp/)