四日市の旧家から小川半助の陶芸作品多数、現代萬古焼への流れ研究にも貴重な資料
三重県四日市市の旧家で、明治中ごろ以降に制作された四日市萬古焼の作家小川半助の作品が多数見つかり、旧家の主人と研究者が10月31日、報道陣に公開した。多くの作家たちが四日市で腕を競った時期の作品といい、中でも小川半助の「手捻り」「薄作り」は文化財としての価値を持つという。また、萬古焼の現代への流れを解明する資料としても重要だという。これらの作品はすでに寄贈されることが決まっているという。
公開されたのは四日市市東阿倉川の日比義也さん(85)の自宅に所蔵されていた小川半助と二代目半助(娘可久と夫の大沢政一郎による)の作品で、約35点あるという。もともとは、義也さんの祖父で経済人だった日比義太郎さん(1884~1955)が半助の作品を愛し、応援する気持ちで買い集めたのだという。約20年前に何点かが市などに譲られたが、さらに存在することが分かった。
公開にあたって解説役を務めた萬古焼研究家の岡村奉一郎さん(55)によると、半助は明治から戦前にかけて活躍。手指を繊細に使った「手捻り」で、当時の作家の中でも陶器の厚みを薄く仕上げる「薄作り」に秀でていたという。外観では重く見える作品も、手にすると非常に軽く仕上がっている。
蔵の中で小川半助の作品について説明する岡村奉一郎さん
岡村さんは元四日市市博物館の学芸員で、約20年前の件にも立ち会った。「日比家の半助の作品は、コレクションとして今後の基本となるものだ。半助の箱書きが付属し、他に例のない紀年銘入のものもあること、手捻り急須で蓋が狸摘みと取手先宝珠を備えたものなどは特に希少価値が高い」などと述べている。
当時、半助はまだ全国区の作家ではなかったが、すでに全国的に名が通っていた画家の山岡米華や弟子の高田米雲が半助の作品に絵を描いていることも注目に値するという。義也さんは、参考に所蔵の中から山岡米華の作品「北窗間友」を公開したが、同一の品かどうかは未解明ながら、夏目漱石の日記にも出てくる作品と思われると話した。義也さんは、義太郎さんの日記などを調べて著書にもしているが、これからも芸術などの作品と人物との関係などが解明されていくことが楽しみだと話していた。
小川半助の作品にも絵を描いた画家の作品と日比義也さん。真ん中が夏目漱石が見たかも知れないという「北窗間友」