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三好たたみ店 ~ 水島で昭和45年創業。女性職人の三代目店主が畳に込める、未来への挑戦

倉敷とことこ

三好たたみ店 ~ 水島で昭和45年創業。女性職人の三代目店主が畳に込める、未来への挑戦

最近の住宅ではフローリングが主流となり、日常生活のなかで畳(たたみ)を見る機会が少なくなったと感じるかたもいるかもしれません。

畳離れが進む今でも、暮らしのなかで畳の心地良さや魅力を感じていただきたい

そのような思いから、伝統的な技法を守りつつ、へりなし畳や和紙製、カラーバリエーション豊かな畳など、現代のニーズにも応えている女性職人が営む「三好たたみ店」が、倉敷水島にあります。

初代が1970年(昭和45年)に「三好たたみ店」を創業した当時のエピソードや、畳づくりに込める三代目店主の想いを紹介します。

三好たたみ店について

水島の工業地帯にほど近い場所に、三好たたみ店の店舗・作業場があります。

畳の製造や修繕の相談を受けた際は、まず一度自宅などに足を運び、サイズの計測や希望を聞きます。その内容をもとに見積もりを作成し、説明したうえで作業を進めています。

現在、三好たたみ店で提供しているサービスや商品は以下のとおりです。

・畳の製造、修繕
・へりなし畳の製造
・和紙畳の製造
・ふすま、障子、網戸の張り替え
・畳縁商品の製作

畳の製造、修繕

新しい畳の製造はもちろん、メンテナンスもおこなっています。

畳の新調・製造

畳縁を縫い付けているようす(画像提供:三好たたみ店)

畳の新調とは、中央にある「畳床(たたみどこ)」と呼ばれる芯材から新しくすることを指します。

新築用の畳や、古くなって床まで傷んでしまった畳は新調します。

畳床(たたみどこ)
畳の芯となる内側のボード部分。
昔ながらの稲わらや最近は軽量である建材ボード(圧縮した木材チップを圧縮や発泡スチロールなどを組み合わせたもの)などがあります。

裏返し、表替え

畳を使っているうちに、どうしても色あせたり傷んだりするのが、畳表(たたみおもて)であるゴザの部分です。

畳表(たたみおもて)
私たちが直接触れる、い草で編まれたゴザ部分。
最近は和紙でできた素材もあります。

状態の良くない畳を使い続けると、見た目が悪くなるだけでなく、汚れやホコリが溜まり、カビや害虫などが発生しやすくなります。

裏返し・表替えの依頼を受けたらまず、畳をお店へ持って帰り、畳縁を取って古いゴザをはがします。

裏返しの場合、畳床はそのまま使い、古いゴザの裏側(きれいな面)を表にして張り替えます。ゴザは表裏両面使えるため、使用から10年以内であれば裏返しが可能です。

畳 裏返し(画像提供:三好たたみ店)

表替えは、畳床はそのまま既存のものを使い、畳表であるゴザだけを新品に交換します。裏返しをしてから5年以上経過した畳には、表替えをおすすめしています。

畳 表替え(画像提供:三好たたみ店)

へりなし畳の製造

畳の長辺や短辺に付ける布製の畳縁を使わず、ゴザを折り曲げて仕上げる畳です。

現在はカラーバリエーションも豊富で、洋室のような雰囲気のお部屋にも合うため、とても人気があります。

へりなし畳(画像提供:三好たたみ店)

和紙畳の製造

い草ではなく、こより状にした和紙で作られた畳です。
本物のい草のように加工されているため、通常の畳と見た目はほとんど変わりません。

い草のような香りはありませんが、変色や傷みが少ないため、現在人気の素材です。

和紙畳

畳は一見すべて同じに見えますが、実際は部屋の大きさに合わせて作られているため、サイズが少しずつ異なります。

部屋のなかで畳の配置場所によってもサイズが異なるため、適当に入れ替えることはできません。

ふすま、障子、網戸の張り替え

定期的にメンテナンスが必要な「ふすま」「障子」「網戸」の張り替えの要望にも対応しています。

破れたり、古くなって色が変わった場合などに張り替えをおこないます。

畳縁商品の製作

畳縁を使ったカバンペンケースカードケースなどを製作しています。一つひとつ手作りしており、プレゼントにも喜ばれる商品です。

畳縁(たたみべり)
畳の長辺に付けられる布部分
デザインや色柄が豊富で、部屋の印象も変わります。

畳縁カードケース

お部屋の印象を左右する畳替えは、数年に一度程度しかおこなわないもの。だからこそ、安心して任せられるお店選びが大切です。

三好たたみ店は小さなお店ですが、誠実でていねいな対応により、多くのリピーターが利用しているそうです。

時代のニーズに合わせ、さまざまなサービスと商品を提供している三好たたみ店の店主に話を聞きました。

「三好たたみ店」の三代目店主 幅岸ひとみにさんインタビュー

三好たたみ店店主である幅岸ひとみ(はばぎし ひとみ)さんは、畳業界では数少ない女性職人です。

幅岸さんの想いや仕事へのこだわりを聞きました。

開業の経緯

左から店主の幅岸ひとみさん、幅岸さんのサポートしているお母様

──三好たたみ店をオープンした当時のことを教えてください

幅岸(敬称略)──

もともとは私の父が水島の近くで畳職人として働いていました。その後、独立し1970年(昭和45年)に父がこのお店を始めました

この場所にお店を構えた当時は、この地域周辺は工場地帯のため県外からも含め多くのかたが移住してきていた時代です。田んぼばかりだったところに家やアパート、社宅などが次々と建てられていました。

1979年(昭和54年)、私が15歳だったときに父が病気で亡くなり、母が二代目としてお店を継ぎました。当時はメインの職人2名と、日雇いの従業員を2~3名雇っていたそうです。

私は7年ほど銀行に就職していましたが、結婚、妊娠を機に退職。
1989年(平成元年)ごろ、パートで働こうかと考えましたが、それなら機械を扱えるようになったほうが良いと思い、三好たたみ店で作業を手伝うようになりました。

2015年(平成27年)に母が高齢のためお店を閉めたいという話になり、私がお店を継ぐことになりました。

現在、母は私のサポートをしてくれています。

女性二人で作業している

三好たたみ店 作業場

── 大事にしていることや意識していることはありますか

幅岸──

お客様第一、仕事第一」というのを心がけています。

畳を扱う仕事は想像よりも重労働です。
畳は重いので持ち運んだり、ひっくり返すのも大変なため、男性の職人が多い業界ですが、当店では私と母の女性二人で作業しています

お客様の目線に立った、きめ細やかなサービスやアドバイスを心がけています。

幅岸さんのサポートをしているお母様と店主の幅岸さん

たとえば、畳を部屋に運ぶとき、大きな家具や仏壇などを移動する場合が多くあります。

企業によってはプラス料金がかかることがあるのですが、ご高齢のお客様も多いため、時間がかかっても家具の移動は無料で対応しています。

畳に関するアドバイスとしては、畳のお困りごとでご相談いただいたお宅を訪問した際、害虫やシロアリなどが原因で畳の下の床板や床材が傷んでいたこともありました。

このような場合は、原因や畳の管理のコツなどをお伝えし、ご希望があれば知り合いの大工さんをご紹介することもあります。

ずっとこのスタンスで続けてきましたが、こうした心がけが功を奏したのか、おかげさまで口コミで広がり、今でもご依頼が途切れることはありません。

畳需要の変化

へりなし畳 製作作業中(画像提供:三好たたみ店)

──昔と比べて畳需要の変化を感じますか

幅岸──

現在はゴザの張り替えなど畳の修繕が依頼の7割を占め、新品の製造は3割程度です。父の代ではその割合が逆でした。

最近ではへりなし畳のご依頼も増えていますし、従来のい草を使用した緑色の畳だけでなく、カラーバリエーション豊かな畳や和紙を使った畳なども登場しています。

昔よりも種類が増え、最近では畳をおしゃれなインテリアとして取り入れるご家庭も増えています。

さまざまなゴザ

──印象的だったエピソードはありますか

幅岸──

畳のご相談に来られたお客様のお話が印象的でした。
生前、お茶をしていたおばあさまが「畳が硬い」とおっしゃっていたことがどうしても忘れられず、もう少し柔らかい畳に変えたいというご要望を伺いました。

畳の存在は日本人の心に根付いているんだなと思いましたし、家には人の想いがつながっていることを実感しました。

フローリングの床と比べて、畳は赤ちゃんがハイハイしても安全ですし、お年寄りが転んでもケガをしにくく、ケガの程度も軽減されます。

私の息子が家を建てたとき、4畳半の畳部屋を作ったのですが、そこで子どものおむつ変えやお昼寝をしていましたね。

畳文化を残していきたい

──今後の目標や展望などがあれば教えてください

幅岸──

畳の管理が不十分だとカビが生え、そこにダニが発生します。それが原因で喘息になることもあります。そのため、畳自体が悪いと言われてしまうこともあります。

母がよく言うのですが「畳は生き物」なんです。

畳はきちんと管理すれば長く使えるものです。
防カビや防虫の対策や、畳修繕の際には目に見えないゴザの下の部分も拭き掃除をおこない、ていねいな作業を心がけていきたいと思います。

最近は畳を知らない世代が増えてきて、畳の存在自体が珍しくなってきていると実感しています。畳は日本の伝統的な文化ですので、これからも残していきたいです。

また、お店としては技術の進歩や時代、お客様のニーズに合わせた商品を提供できるよう、試行錯誤しながら努力していきたいと思っています。

──読者へメッセージをお願いします

幅岸──

長年お使いの畳があれば、ぜひゴザの部分だけでも交換してみてください。見た目がきれいになるだけでなく、衛生面も向上します。

私たちは「心に残ること」を特に意識しているわけではありませんが、目に見えない部分まで手を抜かず、ていねいな仕事を心がけています。

素材や価格についてのご相談だけでも、どうぞお気軽にご連絡ください。

日本の伝統文化を守りながら、新しいことにも挑戦している女性畳職人がいることを、心に留めていただき、畳のご相談の際には三好たたみ店を思い出していただければうれしいです。

おわりに

生活スタイルの変化により、日本の伝統文化である畳が減少している現状に、改めて気づかされた取材でした。もしかすると、数十年後には畳が畳博物館でしか見られない、伝統品のような存在になっているかもしれません。

三好たたみ店では、時代のニーズに合わせて新しい商品を提供するだけでなく、お客様思いでていねいな作業をおこなう店主の人柄こそが、このお店の最大の魅力だと感じました。

畳に関する困りごとや相談があるときは、ぜひ三好たたみ店に連絡してみてください。

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