保護犬の魅力を伝え、犬との生活の素晴らしさを伝える写真家犬丸さんに聞いた
ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、『いぬのきもち』本誌でもおなじみ、保護犬ほか数多くの犬たちの写真を撮影する犬丸美絵さん。現在の活動の起点となった神奈川県動物愛護センターとのかかわりを紹介します。
写真を通じて保護犬の魅力をアピールし、犬との生活の素晴らしさを伝えるカメラマン
今回は、『いぬのきもち』本誌の表紙やカレンダーの写真でおなじみのカメラマン、犬丸美絵さんの活動を紹介します。犬丸さんは動物をはじめ、幅広い分野の撮影を手がけていますが、もうひとつの顔として、写真を通して保護犬の魅力を多くの人々に広め、また動物愛護の啓発にも力を入れるボランティア活動を行っています。
たとえば、保護団体に収容されている保護犬の写真を無償で撮影して譲渡に貢献したり、飼い主さんと愛犬の絆を深めるために「Photrip」というお散歩写真教室を自然の中で開催するなど。こうした活動の原点のひとつとなるのが、神奈川県動物愛護センター(以下、センター)の登録ボランティアとして保護犬たちの写真を撮影したことです。
そもそも、犬丸さんが写真を始めるきっかけになったのは、愛犬の存在があったからだそう。
「20代のころ九州の実家でシェットランド・シープドッグ(以下シェルティ)を飼っていました。その犬がシニアになったとき、今のうちにたくさんの表情を写真に残しておきたい!と思い写真を撮り始めたんです」と犬丸さん。
愛犬の生き生きとした表情を撮影するうちに、写真の魅力にもすっかりはまったとのこと。「当初はカメラマンを職業にしようとは思わず、趣味として独学で写真を学びました」。
その後、神奈川県に出て、実家のシェルティが亡くなったあと「ゴマシオーネ(通称ごま)」と名づけたシェルティをブリーダーから迎えることに。犬丸さんはごまくんの写真を撮りまくり、ポストカードや自身のブログで紹介していきました。そのうちに雑誌から声がかかるようになり、友人からも有料で、愛犬の写真撮影の依頼が来るようになりました。こうして気づくと、導かれるようにカメラマンの道へと進んでいたそうです。
犬の写真を数多く撮るうちに保護団体との輪が広がる
以後、公私にわたりさまざまな犬の写真を各地で撮影するうちに、犬関連の仲間の輪が広がり、保護活動家や保護団体とのつながりもできたそうです。
「私が初めて保護犬の現状を知ったのは2011年ごろで、当時はまだ犬の殺処分数も多い時代でした。私の中で『愛犬を捨てる人がいる』という事実が本当に信じられなくて、何か自分にもできることはないかと考え始めました」
そして、民間の保護団体がレスキューした犬たちをかわいく撮って譲渡先が早く決まるよう協力するほか、保護犬の現状を知ってもらうために写真展なども開催。そんななか、2016年に懇意にしている動物保護団体の代表から「神奈川県のセンターの保護犬を撮りませんか」という依頼が来ました。でも犬丸さんは当初、センターへ出向く勇気がなかったそう。「収容される犬たちは恐怖におびえ、悲惨な状況に置かれていると思っていたので、そんな姿を見て気持ちを感じるのがつらかった……」。
でも、その数カ月後、「センターが老朽化のため全面建て替えを行うので旧センターの記録も残してほしい」という依頼があらためてくることに。犬丸さんは意を決してセンターに向かうことにしました。
出典/「いぬのきもち」2024年4月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/犬丸美絵
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年4月5日現在のものです。