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『サマソニ』が初の海外公演、FM802 DJ土井コマキ×AD「池田ちゃん」が語るタイの魅力ーー『レオレオ、タイタメ』Vol.18

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土井コマキ、池田彩乃

2020年にタイドラマのブームが起きてから早4年。今では随分とタイのエンタメにアクセスしやすくなったが、まだ整備されていなかった当時にタイドラマにハマり、ラジオとテレビでその魅力を伝えた2人のメディア人がいる。大阪のラジオ局 FM802DJの土井コマキと、日テレアックスオンのADで「池田ちゃん」の愛称でファンから親しまれている池田彩乃だ。久しぶりの連載『レオレオ、タイタメ』では共通点の多いふたりに、改めてタイエンタメの魅力やオススメの作品を訊いてみた。さらに8月24日(土)、25日(日)にバンコクで海外初開催される『Summer Sonic Bangkok 2024』についてもフィーチャー。『サマソニバンコク』の1週前にある日本の『サマソニ』に出演するタイのアーティストにも触れているので要チェック。

●同じドラマから触発されてメディア発信しているふたり●

ーーおふたりは初対面ということで、まずはタイのエンタメとの出会いを教えてください。

土井:友達に勧められてドラマ『2gether』で劇的に落ちました。でもよく考えるとアジア地域の音楽も好きだったので、元から知ってるバンドやミュージシャンはいましたね。

池田:私も同じ『2gether』からハマって。Twitterのトレンドに入っていたタイ語が気になって調べてみたら、主演のブライト(・ワチラウィット)さんのすごく美しいお顔が出てきて。あれよあれよとYouTubeで観進めていき、そのままハマりました。

ーーやはり『2gether』の影響力はすごいですね! 今は吹替版が放送中なので新たにハマる方が増えるのではと期待してます。それからどんなアクションを起こされたのですか?

土井:当時担当していた番組で、『2gether』主演のブライトとウィン(・メタウィン)のエピソードを話して関連曲を紹介する「今週のBrightWin」というコーナーを作りました。途中から「今週のタイランド」に変わり、今はタイだけでなくアジアの音楽を紹介する番組『Roundtable with Komaki』(毎週土曜22:00~24:00)を担当しています。

池田:当時就職活動がうまくいかなくてメディアを諦めかけていたんですが、「タイドラマに携わる仕事に就きたい」と改めて自分を鼓舞するキッカケになりました。入社2年目で『午前0時の森』と言う生放送番組を担当し、番組内でタイドラマ企画をさせてもらったんです。そこから自分のタイ人生が始まって、『My Engineer~華麗なる工学部~』に出演されていたパース・ナクンさんとレイ・タレイさんにご協力いただき、『ネクタイ曲がってるよ。』という短編ドラマを作らせていただきました。おふたりには「初監督作品だけど頑張ろうね」と声をかけていただき、他のスタッフとも分け隔てなく接していただきました。

初自主制作短編タイBLドラマ「初めての記念日」

ーー『ネクタイ曲がってるよ。』放送後にも、パースさんとタレイさん主演の短編ドラマを自主制作されていましたよね。

池田:そうなんです。番組内で「自分がタイBLドラマを作る時には斎藤工さんに出ていただきたい」という話をしていて。そしたらご本人に伝わり、ラジオで話していただいたり、ドラマ制作時にもメッセージをいただいたりしたので、その言葉を胸に進まないといけないなと思って2本作りました。

土井:すごいなあ。何名くらいのスタッフさんで撮影されたんですか?

池田:自主制作の時は4~5人でした。脚本、監督、カメラ、仕込みは全て自分でやったので、悔いが残らないようにと言う思いでカメラを回していましたが、自己満足な作品になっていないか不安でした。今後はチームで作っていけたらなと思います。

ーーちなみにタイドラマの魅力はどこにあると思いますか?

土井:どれも最後はほっとして終わるところ、タイらしいなぁと感じる、仏教の教えなのかなぁ? と思うようなセリフやエピソードなどが普通に散らばっているところですかね。映画も好きなんですけど、メッセージ性があるなと思っていて。『ハッピー・オールド・イヤー』や『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』などを制作したGDH559の作品は特にそうですよね。

池田:わかります。セリフがストレートで心に響くし、自分も優しくなれる気がするんですよね。コメディ要素も外せないし、今までのシーンを回想できる主題歌も外せません。あとはコロナ禍にハマったこともあり、海外の景色が見れるのも楽しくて、背景にも注目して観ています。

ーー観光名所なども出てきますもんね。おふたりはタイでロケ地巡りなどされたことはありますか?

『SOTUS/ソータス』に登場する大学の運動場
『Theory of Love/セオリー・オブ・ラブ』主要メンバー4人がいたバルコニー
サイアム・パラゴンの噴水

池田:『午前0時の森』でタイから生中継をした際に、ドラマのロケ地になっていた大学や、ラーマ8世橋に行きました。プライベートでも『Cutie Pie』の最終回で出てきたサイアム・パラゴンの噴水も観に行きました。ドラマでは噴水が高く吹き上がって、それを背景に主人公たちが愛を誓うんですけど、実際はそんなに勢いがなくて(笑)。やっぱり自分の目で見ると違いますね。

テーの家(土井)
岬の夕日(細かい場所は特定できませんでした)(土井)

土井:私は2泊3日で『I Told Sunset About You ~僕の愛を君の心で訳して』ロケ地のプーケットに行ったんですよ。ドラマに明け方がよく出てきたと思うんですけど、映像のまんまで今にも彼らが飛び出してきそうでした。ドラマには出てないけど「ここに来てたんかな」と想像しながら市場に行ってみたり。岬で主人公ふたりが座ってたところを探して、スイカを食べながら夕日を見たり。

池田:贅沢な時間ですね! 

テーのサイドカーがオーエウを乗せて走ってきそう(土井)
「Coming of Age」のMVで2人が手を離して別の道に別れて歩き出す場所(土井)

土井:ドラマ挿入歌「ไม่ปล่อยมือ (Coming of Age)」のミュージックビデオで街並みが出てきたので、後ろ歩きでスマホを持って同じアングルで撮ってみたりもしました。生まれて初めて聖地巡礼をしたのですが、友達に「1回1回全力でやることに意味がある」と言われて。

池田:海外だと次行けるのがいつかわからないから後悔はしたくないですね。

レイアウトが少し変わってますが、みんなの溜まり場のカフェ(土井)
テーが泣いてしまうベンチ(土井)
そんなテーの目の前はこんな景色。背後が気になるし泣いてて見えてなかっただろうけど。(テーを想像しすぎて泣ける)(土井)

土井:そう。あとは主人公のテーが壁に隠れて泣いちゃったり、皆が集まってかき氷を食べたりするカフェがあるんですが、そこはホテルなので泊まりました。プーケットの中で一番古いホテルで建物自体に年季が入ってるので時の流れを感じられて良かったです。ほかにもドラマに出てくる2つのお寺に行ったんですが、朝晩は閉まっていて中に入れなかったので、もう一回、この良さが分かる人と一緒に行きたいなと思っています。

●最近気になるアーティストや面白かったドラマは?●

ーーお話を聞いてタイに行きたくなってきました。今後タイに行かれる予定はありますか?

池田:まだ決めてないんですが9月~10月に行きたいです。

土井:私は『Summer Sonic Bangkok』。

池田:会場のIMPACT Challenger Hallは、選ばれしスターが立てる場所みたいなイメージですよね。

ーー日本の多くのアーティストがタイでも人気であることに加え、現地の音楽シーンも非常に魅力的でマーケット的にも可能性を感じていることから、『サマソニ』が初めて国外に展開するようです。第2弾アーティストまでの発表で、日本からはYOASOBI、Travis Japan、PSYCHIC FEVERなどの出演が決まっています。

池田:PSYCHIC FEVERはタイで武者修行していましたよね。

土井:そうそう。番組にも出てもらったりしてるし応援してるので、今回ようやくタイでサイフィが観れるのも楽しみにしています。

ーーPSYCHIC FEVERが所属しているLDHはタイでの活動に活発的ですよね。タイのアーティストは5組発表されていますが、気になるアーティストはいらっしゃいますか?

池田:日本でも出演するヴィオーレット・ウォーティアさん。彼女も出演していた映画『プアン/友だちと呼ばせて』主題歌「Nobody Knows」のカバーがめちゃくちゃいいですよね。原曲のSTAMPさんバージョンも良いけど、女性が歌うことでこの曲の違う一面を聞けるような気がして。歌声がすごく好きです。

土井:2022年に行ったタイのフェス『CAT EXPO』でどちらのバージョンも聴いたんですけど、胸が締め付けられました。主題歌で言うと、ゲツノワもじゃないですか?

池田:『Theory of Love/セオリー・オブ・ラブ』の主題歌をしていましたね。「僕を偽の主役にしてほしい」みたいな曲で、切ない感じがドラマとマッチしていました。他にも『Who Are You』などの主題歌もしていましたね。

土井:意外とポップなバンドですよね。バンドとしてはベテランのボディースラムも気になります。日本のBABYMETALとタイのラッパーのエフ・ヒーローとのコラボ曲「LEAVE IT ALL BEHIND」がやばいです。本人たちもおっしゃってるんですけど、他の曲と比べてめちゃくちゃヘビーロックじゃないですか。この3組のコラボがステージで観られるのが楽しみです。

ーーおふたりがハマった『2gether』主演のブライトさんも、日本でもタイでもアーティストとしての参加が決まっています。

土井:私はメローな曲が好きで、ブライトはそんな曲が多いんですよね。FM802で他にかかってる曲たちと混じっても並びが良くて。いつかは802でスタジオライブをしてほしい。タイではエフ・ヒーローが出演するので、ふたりのコラボ曲「Sad Movie」のオリジナルバージョンが聞けるのかなと期待もしています。

池田:ブライトさんは音楽が好きなんだなと伝わってきますよね。あと歌声も心地よくて。全然タイに興味がなくてもメロディーが優しくて耳なじみが良いところが素敵です。

ーーT-Popは全体的に、柔らかくてかわいらしいタイ語とゆったりとしたメロディーが心地良いですよね。

土井:でもその一方で英語で歌うアーティストもいて、インディーロックもすごく素敵なんです。ちょっと話が変わるけど、タイは食事がメインのパブのような場所で生演奏を聴くのが主流で、生演奏をみるのが目的の、いわゆるライブハウスが根付いていないんだって。バンコクに去年できたBlueprint Livehouseで聞いた話では「ライブハウスに行くことで、照明とかPAさんとか裏方の人の仕事も見ることができる。身近に感じてもらえれば若い子たちも興味を持つかもしれないし、そうすることで音楽シーン全体の底上げになる。だからハコを作って、各所に認めてもらえるようにきちんとした運営の姿勢をみせてるところ」と言ってはって。意義のあることをされているなと感じたし、そう思うと日本独特のライブハウス文化って良いんやなと思う。世界中のインディーロックファンが好きそうなサウンドのアーティストがたくさんいます。それでいうとタイのアーテイストの世界への扉を開いたプム(・ヴィプリット)くんは独特の柔らかいハスキーな声が素敵。ライブの最後はお決まりでバンドでパートチェンジするんですけど、やりたい放題するのがもうめちゃくちゃ面白くて。世界から引きがあるのがわかる。プムくんの後に続くようなアーティストもたくさんいます。

ーー素敵なお話ですね。『サマソニ』出演者以外でも、おふたりが最近心を動かされた音楽やドラマはありますか?

池田:他にはタイ映画を制覇しようと思いつつ、『消えた初恋』のタイリメイク版『My Love Mix-Up!』を観ているところです。原作のコミックスが好きなんですが、その世界観がうまく表現されています。主演の二人が歌ってる主題歌もかわいらしくて、これまたいいのでぜひ聞いてください。他にもアーティストのノン・タノンさんには、最近行ったコンサートで本当に心奪われました。マイクパフォーマンスもすごいし、生の歌も良くて、また観たいなと思っています。やっぱり機械から聴くのと生で聴くのは全然違うじゃないですか。タイの方も多かったので声援も大きくて、タイで観ている感覚になったのも楽しかったです。

土井:応援の仕方が違うよね。私が最近観ておもしろかったのは、タイムスリップものの『The Warp Effect』。音楽の使い方も洒落てて、見ながら検索してました。「本人の意向を聞かないと人に触れてはいけない」みたいなことが散りばめられていて、性教育に踏み込んでるのも良かった。音楽でいうと、生で聴いてみたいなと思っているのはジェフ・サターですね。それこそボディースラムのアルバムに入ってるコラボ曲も良いし、『サマソニ』に出てくれないかなと思ったり。いつか生で聴いてみたいです。

ふたりと話をしながら感じたのは、日本とタイがお互いにエンタメで交流するフェーズに入ったのかもしれないということ。これまで日本から漫画や音楽などを輸出し続け、この数年でタイから日本にドラマを中心としたエンタメが大量輸入されてはいた。しかし今年は『サマソニ』がバンコクで開催されたり、途中で話に出たLDHが両国での活動を視野に入れてタイの大手レーベルと提携したりと、昨年までとは違い交じり合うような動きを感じることが増えてきた。これからは「どのようにして両国のコラボレーションができるか」を軸に展開されていくのかもしれない、など期待する気持ちを押さえられない。いつも想像以上の展開で驚かせてくれるタイのエンタメに、今後もずっと注目していきたい。

文=川井美波

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