16歳の友人が亡くなり…「私たちの夢は壊された」それでもバーベルをあげる青年 ガザから北海道の記者に届いたメッセージ
パレスチナのガザ地区で、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから、100日あまりが経ちました。
HBCの新人記者に、ガザ地区の友人から届いた悲痛なメッセージと札幌で停戦を訴える人たちの思いです。
土の上でバーベルを持ち上げているアブデ・スカイクさん(22)。
アブデさんはパレスチナを代表するパワーリフティング選手で、2022年の世界学生大会では銅メダルを獲得しました。
HBC報道部の金子将也記者は、学生時代からパワーリフティングを続けてきて、アブデさんが銅メダルをとった大会にも出場していました。
金子記者は大会後も、SNSでアブデさんとつながっていました。
2023年10月7日に始まった、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突。
ガザ地区北部に住むアブデさんが投稿した映像には、破壊されたマチの様子が映っていました。
金子記者がメッセージを送ると、アブデさんからすぐに返事がきました。
「運動はできず少ししか食べれていない。ここが今住んでいる場所」
アブデさんは、このメッセージを送った2週間ほど前に、ガザ地区の南部に避難し、無事でした。## 広がる支援の一方で…侵攻が迫る
JR札幌駅前では、ある団体が停戦を訴えました。
北海道パレスチナ医療奉仕団です。
団長の猫塚義夫さんは、札幌の病院の整形外科医をしています。
2011年から医療支援を始め、毎年およそ400人の治療を行ってきました。
猫塚さんたちは、2023年10月23日からガザ地区で支援を行う予定でしたが、戦闘が始まったため支援を延期しました。
札幌で行われたデモ行進は予想の3倍、300人ほどが参加しました。
猫塚さんは「今日のようなことを映像とか画像でガザに送って、皆さんに『1人だけではない、世界中で応援している』と伝えたい」と話しました。
11月3日、ガザ地区では、本格的に地上侵攻が始まっていることが明らかになりました。
このころ、アブデさんから届いた写真には、爆撃された北部の自宅や近所の様子が映っていました。
しかし、避難した南部でも、攻撃は続いていました。
11月7日にアブデさんから届いたメッセージには…
「毎日とても恐ろしい音(爆撃)が聞こえ、眠れない」
イスラム組織ハマスとの戦闘停止期限が切れた12月1日、イスラエル軍は再び戦闘を開始しました。
この日、トレーニング中の金子記者に突然のメッセージが届きました。
「私たちの夢は壊された」友人の死
12月1日。金子記者に突然届いたアブデさんからのメッセージ。
それは、アブデさんの友人が亡くなったという連絡でした。
死亡したのは、2022年のサブジュニア世界大会に出場した16歳の少年、ムハマドさんです。
その横にアブデさんの姿もあります。
アブデさんからのメッセージにはこうありました。
「私たちの夢は壊された。彼は世界4位だったのに。毎日、友人の悲しいニュースを耳にする」
12月3日、札幌では通行人が絵の具で赤い涙を書き、犠牲者を追悼しました。
「ティアズフォーパレスチナ」。停戦を訴えるため、世界中で始まった活動です。
呼びかけ人の柳瀬安寿さんはこの活動について「ハードルが低いし、視覚的に目に残って意味があると思う」と意義を語ります。
JR札幌駅前には、今までと変わった光景が…。
若者たちが次々と筆をとり、涙を描きはじめたのです。
ガザから遠く離れた札幌で、犠牲者に心を痛め、平和を願う若者たち。
北海道パレスチナ医療奉仕団の猫塚さんは、大きな変化を感じています。
「旭川、釧路、函館など中都市でも、人々がスタンディングや集会をやってくれている。努力すればまだまだ北海道の方々は、関心を寄せて力になってくるんじゃないかなと思う」
12月31日、アブデさんから金子記者にひとつの動画が送られてきました。
アブデさんがトレーニングする映像です。
アブデさんは金子記者に、こうメッセージを送りました。
「自分のジムを開き、結婚して、自分と子供たちのためによい未来を築くことが夢だったが、この戦争により、私が築いたものはすべて壊された」
友人として、記者として。
取材した金子将也記者は、アブデさんの思いをどのように受け止めたのでしょうか。
それでもバーベルをあげる友人に
ガザから届いたメッセージ。
過酷な現状の中でもバーベルを見つけ、トレーニングを続けるアブデさんの映像を見て、
金子記者は「日常を取り戻そうとしていると感じた」といいます。
札幌で行われた、デモや集会の様子を金子記者がSNSで送ると、アブデさんはとても喜んでくれたそうです。
「北海道からでもガザの現状を発信していく必要性を感じた」と金子記者は話します。
アブデさんは金子記者を通して、日本人に対してメッセージを送ってくれました。
「日本の皆さんへ。皆さんは今、毎日子どもや女性たちが殺される、悲惨な状況を把握していると思います。私たちは何としても、あなた方の支援が必要です。今までも支援してくれた皆さま、力を貸してください」
アブデさんは現在の生活について、「食事がしっかりとれない中でもトレーニングをしていて、普段はパンや豆しか食べれず、そのパンを買うためにも列ができている」と金子記者に伝えています。
北海道パレスチナ医療奉仕団の猫塚さんは、来月にもパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区に行き、現地の難民キャンプで医療支援をする予定です。
ひとりでも多くの人が関心を寄せ続けてほしいと思います。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年1月17日)の情報に基づきます。