フリーランスの「不当な働き方」とさよなら? 最強PMOが教える、フリーランス新法とは
今、フリーランスを選ぶ人が激増している。その数は、2015年の937万人から約1.7倍にあたる約1577万人に達する。
フリーランス人口増加に伴い、トラブルも増加。実にフリーランスの約4割が何らかのトラブルを経験しているとされる*。
こうしたトラブルからフリーランスを守るべく、いよいよ2024年11月1日からフリーランス新法が施行される。
一体何がどう変わるのか。フリーランスのエンジニアが気を付けるべき点もあわせて、“”最強PMO”であり、自身も15年以上フリーランス経験を持つ、甲州潤さんのコメントとともに紹介しよう。
株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(ビジネス教育出版社)
*「FREENANCE byGMO」調べ
目次
フリーランス新法で何が変わる?フリーランスの約4割がトラブルを経験。その実態とは?フリーランスエンジニアが抑えたい、取引リスクのある企業とは?新法スタート後もトラブル回避のための意識したいこと法律が変われど、自分の存在価値は変わらないおまけ書籍紹介
フリーランス新法で何が変わる?
事業者に対してフリーランスが安心して働ける環境整備等を目的に定められています。項目として、以下が挙げられています。
書面等による取引条件の明示業務委託をした場合、書⾯等により、直ちに、次の取引条件を明⽰すること
「業務の内容」「報酬の額」「⽀払期⽇」「発注事業者・フリーランスの名称」「業務委託をした⽇」「給付を受領/役務提供を受ける⽇」「給付を受領/役務提供を受ける場所」「(検査を⾏う場合)検査完了⽇」「(現⾦以外の⽅法で⽀払う場合)報酬の⽀払⽅法に関する必要事項」報酬支払期日の設定・期日内の支払発注した物品等を受け取った⽇から数えて60⽇以内のできる限り早い⽇に報酬⽀払期⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うこと1カ月以上の業務委託をする場合の禁止行為フリーランスに対し、1カ⽉以上の業務委託をした場合、次の七つの⾏為をしてはならないこと。
・受領拒否
・報酬の減額
・返品
・買いたたき
・購⼊、利⽤強制
・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更、やり直し募集情報の的確表示広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、
・虚偽の表⽰や誤解を与える表⽰をしてはならないこと
・内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと育児介護等と業務の両立に対する配慮6カ⽉以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両⽴できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないことハラスメント対策に係る体制整備フリーランスに対するハラスメント⾏為に関し、次の措置を講じること
「1」ハラスメントを⾏ってはならない旨の⽅針の明確化、⽅針の周知・啓発
「2」相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
「3」ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など中途解除等の事前予告・理由開示6カ⽉以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、
・原則として30⽇前までに予告しなければならないこと
・予告の⽇から解除⽇までにフリーランスから理由の開⽰の請求があった場合には理由の開⽰を⾏わなければならないこと
フリーランスの約4割がトラブルを経験。その実態とは?
「FREENANCE byGMO」のアンケート調査によると、36.7%のフリーランスがクライアントとの契約や取引でトラブルにあった(その可能性があった)と回答。内容は「報酬の未払い・遅延」が最多でした。
「FREENANCE byGMO」調べ
「FREENANCE byGMO」調べ
こうしたトラブルの中でも、「エンジニアだからこそ押さえておくべき点がある」と語る甲州さん。一体どこに気を付けるべきか、見ていこう。
フリーランスエンジニアが抑えたい、取引リスクのある企業とは?
危険な兆候がある企業の特徴として、甲州さんは「口約束だけで契約書を作成しなかったり、不当に契約期間を伸ばされたりするケース」をあげる。
「例えばエンジニアは、他のフリーランスのように単発でお仕事をお願いされることはありません。『三カ月』『半年』など、まとまった契約期間が決まっているのが一般的です。
そのため、そもそも口約束だけで契約書を作成しなかったり、不当に契約期間を伸ばされたりする場合は『法律に抵触する』と思ってよいと思います。ただし、クラウドソーシングサービスなどを使用してWebアプリの改修や開発をお願いされる場合、その限りではありません」
また、ベンチャー企業については、「開発業務で入社しても、開発以外の業務に従事させられることがあります。これは『業界の暗黙のルール』と言えるほどよくあることですが、契約外の業務提供を依頼するのはそもそも契約違反です」
ただ、新法ができたことにより「企業に対して言いたいことを言えるチャンスがめぐってきた」とも捉えることができてくると甲州さんは続けます。
「正しい商取引を身に付け、正しい関係性で仕事をすることができれば不当な働き方にストレスを溜めることもないですし、万一トラブルが起きた際も泣き寝入りすることなく自分の意見を言える、といった安心感が生まれます。そうすればより一層仕事に集中することができるでしょう」
新法スタート後もトラブル回避のための意識したいこと
現在はフリーランスから法人化された甲州さんですが、起業する前には15年以上フリーランスを経験。実際に契約上のトラブルに巻き込まれたこともあるという。
「例えば、契約期日に入金されない、契約書の締結なしに仕事を開始しなければならない、支払いサイクルが90日など…当時はまだフリーランス新法がない時代ですから、自分の報酬やスタンスを守れるのは自分しかいない状況でした」
トラブル回避のため、甲州さんが行ったのは次の二つ。この二点について甲州さんは「新法が施行された後も結局は。この二点はずっと活用できる普遍的なポイントだと考えています」
1.大人の対応を心がけ、コミュニケーションをミニマムで終わらせる
甲州さん:例えば、会社が契約書を作成してくれない場合は、短期間で「契約書を作りたい」ことを(しつこくならない程度に)何度もお伝えする。そうすると会社側もさすがに、「そういえば甲州さん、契約書作成の件ですが……」と言ってくれるようになります。間違っても、しつこすぎず、ケンカ口調にもしないこと。そうなればもっとこじれて、契約書どころの話ではなくなってしまう可能性があるからです。
2.自分を大切にしてくれないクライアントと、頑張って仕事をしなくてもいい
フリーランスの場合、なかなかそうやって決めきることは難しいかもしれません。しかし、こうした対応をする会社の「体制」は、一人が声を上げたところでそうそう変わるものではないのです。
不当な扱いでストレスを感じるのなら、思い切って「お付き合いしない」という選択をしてみましょう。すると、仕事と向き合う心に「余白」が生まれ、「これから、どんな人たちと仕事をしたいのか」がより鮮明になるはずです。
法律が変われど、自分の存在価値は変わらない
インボイス制度が導入され、フリーランス新法が始まり……今後も、フリーランスを取り巻く環境は変わっていくでしょう。ただ、どんなに法律が変わったとしても、会社に「この人と契約したい」と思わせることができたら、極端な話、そこに法律も業界ルールも通用しない世界を築くことができる。
フリーランスの「ランス」とは英語で「槍」を意味しますが、それが転じて「武器」という意味もあります。フリーランスとはすなわち「自分の武器を持って戦う」ことこそが本質的な意味なのです。その武器が魅力的であればあるほど、仕事は途切れません。会社の手間やコストをかけても、「この人と契約したい!」と思わせる価値のある人間になること。フリーランスにとってそれこそが、もっとも重要なことではないかと、私は思っています。
おまけ
フリーランス新法についてもっと知りたいという方は公正取引委員会が開設している特別サイトもご覧下さい。
書籍紹介
『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤
▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい
【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう
>>>詳細はこちら