【散歩プレイリスト】雅楽芸人・カニササレアヤコ~脳味噌ぶっかき回しタンゴ
音楽好きは散歩好き。……ということで、各ジャンルで活躍中の音楽の“達人”たちに、「散歩」のイメージにぴったりの楽曲をセレクトしてもらいました。いつもと違う音楽さんぽを楽しみましょう♪今回はカニササレアヤコさんの散歩プレイリスト「脳味噌ぶっかき回しタンゴ」をご紹介します。
カニササレアヤコ
雅楽芸人・ロボットエンジニア
早稲田大学卒業後、人型ロボPepperの開発を経て東京藝大雅楽専攻に入学。雅楽モノマネでR-1グランプリ決勝に進出し、「世界を変える30歳未満30人」に選ばれた。2025年8月、雅楽器の笙(しょう)でバッハやドビュッシー、ピアソラなどを演奏する初アルバム『阿』『吽』をリリース。
「Decarisimo」Astor Piazzolla
タンゴの革命家として知られたピアソラが、フリオ・デ・カロという音楽家に捧げた曲。美しいイントロで気分が明るくなります。
「陶器のワルツ」大柴拓カルテット
大好きな作曲家でギタリスト・アニメ作家の大柴拓さん。私が人生で初めて笙の作曲をお願いした方。ワルツのリズムが散歩にぴったり。
「Seeds」三枝伸太郎 Orquesta de la Esperanza
タンゴ界でも活躍するピアニスト・作曲家の三枝伸太郎さん率いるバンド。ボーカルの小田朋美さんと収録された「北へ」も大好き。
「Meridional」Victor Lavallen
御年89のバンドネオン奏者ラバジェン。音づかいも演奏もとにかくかっこいい。ベースのカバルコスとピアノのエスティガリビアも最高。
「Sho」JP Jofre
昔から大ファンだったJP、なんと私の笙をSNSで聞いてこの曲を書いたんだそう。今では共演する仲。「Contrabando」も好き。
「組曲「 キャバレー・タンガフリーク」1)孔雀」菊地成孔、ペペ・トルメント・アスカラール
初っぱなから何が起きているのか分からなくなるタイム感。これを実現できるアンサンブルの力量にため息をつきます。
「Tacleatta Nro1」Juan Pablo Navarro Sexteto
開始2秒で頭ゆさぶられる。コンテンポラリータンゴの世界を牽引する音楽家の一人、ベーシストのナバーロが率いるバンド。
「Árbol」Diego Schissi Quinteto
ちょっとかっこよすぎますね。ピアソラ以来のタンゴの革命家とも言われるディエゴ・スキッシ。タンゴを一つ上の次元に昇華しています。
「Moebius Strip」New Tide Orquesta
意外とアツい北欧タンゴ界。その名の通りタンゴに“新しい潮流”をもたらすオルケスタ。バンドネオン入りのミニマルが気持ちいい。
「Oda Para Un Hippie」Astor Piazzolla
最後はピアソラで。と言っても「愛と情熱の……」というタンゴではなく、終始不思議な浮遊感のある曲。古い音質で聴くのもまた良し。
カニササレアヤコの「散歩と音楽」とは?
Q.1 散歩をするのはどんなときですか?
アイデアが浮かばないとき。その季節の植物や生き物の様子を眺めるのが好き。こういうのは平安の頃と変わらない感覚だよなあと思います。
Q.2 好きな街や道はありますか?
家の周りは緑が多く、夏にはホタルも見られて楽しいです。あとは先日行ったソウル駅前の丘が古い民家と生活の匂いが残っていて素敵でした。
Q.3 プレイリストのコンセプトを教えてください!
雅楽のプレイリストがいいのかなとも思ったのですが、散歩するにはテンポが遅すぎるので……学生時代はまっていたタンゴを軸に選曲しました。頭の中をかき回されるカオスな音とリズムで、渦に呑み込まれるような散歩もたまにはどうでしょうか。
構成=さんたつ編集部
『散歩の達人』2025年10月号より