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【魚が旨い!北九州の名店】戸畑駅前の割烹で、春を告げる料理の余韻に浸る

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柚香メイン

北九州市の都心・小倉と、副都心・黒崎のちょうど中間に位置する戸畑。区域の約半分を日本製鉄(旧八幡製鐵所)の工場が占めるため工業地域のイメージが強いが、もともとは響灘に面した漁村であり、昭和の初め頃から捕鯨基地として栄えた漁業の町でもある。何を隠そう(と隠すほどのこともないが)僕は生まれも育ちも戸畑で、子どもの頃駅前の浅生市場にある魚屋の店頭に活きのいい魚が並んでいた光景をよく覚えている。今では高級食材となった鯨も、当時は学校給食も含めて週に2、3日は食べていたものだ。
そんな思い出のある地元の町で美味しい旨い魚を食べさせる店があると聞き、電車に乗って戸畑駅に降り立った。

目指したのは、戸畑駅の改札を抜けて徒歩3分ほどのロケーションにある「柚香」。主人の宮﨑直さんは地元の老舗ホテルや日本料理店などで伝統的な和食の技術を身につけた料理人で、12年前に独立開業した。メニューにはアラカルトで注文できる多彩な料理も並ぶが、その真骨頂は懐石料理の献立を基本にしたコース料理だ。昨今の一般的なジャンル分けでは居酒屋や和食店に分類されるだろうが、あえて"割烹"と呼びたい店である。

今回注文したのは8,800円のコースで、先付は温出汁を張った「鰆(サワラ)と春菊、柚子のお浸し」から。「春」の字が入った2種類の食材に店名である柚子の香りをまとわせた組み合わせは懐石における亭主の心得を感じさせる一品で、淡い味付けの温出汁がほんわりと懐を温めてくれる。

この日の造りは、天然ヒラメ、シマアジ、イカ、ウニに加えて、なんと僕の大好物であるクジラまで! 白身、青物、赤身がバランス良く切られ、それぞれの持ち味を食べ比べできるのも嬉しい趣向だ。特にクジラは赤身に程よくサシが入り、今まで食べた中でも極上といえる部類のものだった。

「蕪のうま煮です」とだけ言って提供された椀物の蓋を取った瞬間、決して大袈裟な表現ではなくのけ反った。そこに主役であるはずのカブは見当たらず、煮穴子が一本ドーンと幅をきかせているではないか。関西芸人ばりに「ウソやん、カブちゃんどこいったん?」とセルフツッコミをかましながら食べ進めると穴子の下に立派な蕪が隠れているのだが、これは思わぬサプライズ。いきなり変化球を投げてくる亭主の術中に嵌まりつつあるのを自覚しながら、ビールから日本酒に切り替えることにした。

数ある銘柄の中から選んだのは、八幡にある蔵元・溝上酒造の「皿倉」の吟醸。北九州市民なら知らぬ者はいない地元のシンボルである皿倉山の名を冠した地酒である。スッキリとした飲み口で程よい甘みもあり、どんな料理が出てきても合わせられそうだ。

はたして八寸皿に盛られてきたのは、鰆の押し寿司、甘鯛の西京焼き、鮎の甘露煮、自家製のカラスミ、明太子、クリームチーズといった、美味・珍味・佳味のオンパレード。どれも酒が進む肴ばかりで、我ながら日本酒にチェンジしたのは正解だった。

この後も和牛の焼き物や、ハマグリ、桜エビの揚げ物、白身魚の昆布締めなどが続くが、感心したのは懐石料理の基本をベースにしながら「走り・旬・名残」の食材を使い分け、さらに独自のアレンジを加えた献立の組み立てだ。創作料理の名のもとに和食の基本をわきまえない店も多い中、あえて"割烹"と呼びたい由縁である。

最後は春を告げる和布(ワカメ)を添えた半田素麺で締めるのも、さもありなん。熱々の出汁に磯の香りがプウンと漂い、春の訪れを予感しながら箸を置く幸せは、余韻となって後に続く。それがまた残り香となって記憶に残り、四季折々に訪れたいと思わせてくれる。これから戸畑に帰省する際の楽しみが一つ増えた。

四季鮮彩 柚香(ゆうこう)
北九州市戸畑区中本町8−25
093-883-1040

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