「見た目は綺麗だけど・・」夜行虫は釣り人の敵か味方か 酸欠の海中で魚は低活性
「夜光虫」というものをご存じだろうか?海に発生するもので、刺激に反応して青っぽく光るプランクトンのことだ。その名を「ノクチルカ」という。発生時には結構ぶわっと明るく見えるので気になってしまうのだが、果たしてこの夜光虫、釣りの敵か味方か。今回はそのことについて詳しく説明したい。
敵か味方か夜光虫
夜光虫は、海洋性のプランクトンだ。大発生すると夜に、水面や水中で光り輝いて見える。
このプランクトンの名前は「ノクチルカ」と言い、どうもラテン語で光るプランクトンという意味があるらしい。あまり知られていないことだが、実は、夜光虫は赤潮の正体と同一犯でもある。
よって夜の夜光虫は、すなわち赤潮状態なのだ。ご存じのように赤潮の海は極端に釣れ渋る。そのため、敵か味方かをはっきり言ってしまうと、決して夜光虫は釣りの味方ではない。敵だ。
プランクトン過多で魚は酸欠気味
なぜ、赤潮が発生するのか? これにはいくつかの理由がある。
まずは、生活排水の問題だ。洗剤や肥料などに含まれる窒素やリンなどの栄養塩が、海や湖に大量に流れ込むことで、プランクトンが異常に増殖しやすくなる。さらに、日照時間の増加と気温上昇も関係している。
春から夏にかけて、日照時間が長くなり気温が上昇すると、海水温も上昇し、プランクトンの増殖が活発になります。ノクチルカは植物性プランクトンで、光合成によって大量増殖し、日中は赤潮を発生させる。そして、夜になると今度は青白っぽく光るというわけだ。
プランクトンは脆弱で、すぐに死ぬ。そして、大量に死滅すると、分解される際に一層の酸素を消費するため、水中の酸素が不足し、魚介類が酸欠で死んでしまう。赤潮の海で魚の死体が見られやすいのもそのような理由からだ。
酸素を奪うだけでなく、魚のえらに付着して毒素を出し死なせるという説もある。魚にとっては、まさしく大迷惑な存在というわけだ。
赤潮の海、夜光虫の海では、魚は基本的に低活性となる。上記の理由で酸欠状態なので、活動するのも辛いのだ。魚の敵は、釣り人の敵でもある。やはり、夜光虫が釣りのフォローになることはない。
魚に怪しまれやすいのも難
夜光虫がわいていて何がうっとうしいかと言うと、ルアーもラインも水中に刺激を与えてしまい、光ってしまうことだ。波動の少ないワームでもリトリーブしてくると、ばっちり光跡が見えてしまう。それがどれだけ魚に不信感を抱かせるかはわからないが、決してナチュラルに見えるということはない。
ルアーを追ってくるチヌやシーバスなどの姿を見ているとよくわかるが、夜光虫の影響で彼らの体もまた光の輪郭を帯びているので、まあ別に小魚などを模したルアーに関して極端に怪しむということはないだろうと推察される。しかし厄介なのはラインの跡で、これが見られているとすると大打撃となる。
低活性と見て一尾を逃さないように
夜光虫は釣りの敵と確定。筆者などは夜釣りのライトゲームアングラーなので、極端にこれを嫌う。まあワームのアジングではそこまで被害が大きくない気がするが、これがメバリングやシーバスゲームだとまったく話が違う。魚がしっかりとルアーを見て食ってくるので、ラインさばきにも神経を使う。
確実に魚は酸欠状態で低活性なので、夜光虫が発生しているときには、ひとつのアタリを逃さないように注意したい。確実にモノにするつもりで、気を張って釣りをしたいものだ。もちろんそれでも釣れないときは釣れない。
これから夏や秋にかけてまた一層夜光虫が発生する機会が多くなってくるので、そんな日には「まあ渋いかもな」と半分あきらめてしまったほうが、いっそ釣りもしやすいかもしれない。
<井上海生/TSURINEWSライター>