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昭和歌謡を代表する作詞家「阿久悠」と 国民的アイドル「ピンク・レディー」の誕生!

Re:minder

1976年08月25日 ピンク・レディーのシングル「ペッパー警部」発売日

昭和の歌謡曲を代表する作詞家、阿久悠


NHK-BSにて、ドラマ『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』が放送される。作詞家・阿久悠を主軸とした、70年代アイドル黎明期の物語。当時のままに再現された『スター誕生!』のセットをはじめ、風貌からしっかり寄せていった阿久役の宇野祥平、ライバルとされる酒井政利役の三浦誠己ら、絶妙なキャストにも期待が高まる。

作詞家の売上ランキングでは、2013年に日本一の座についた秋元康が今なお現役で記録を更新し続けているが、それまで長きにわたってトップは阿久悠だった。そういった数字だけに限らずとも、昭和の歌謡曲を代表する作詞家といえば、やはり阿久悠の名が一番に挙げられる。

2007年に氏が世を去ってから17年経つ現在でもその評価は変わらない。作詞活動50年、3000曲を超える作品を遺し、膨大な数のヒット曲が生まれた。日本レコード大賞も5度受賞している。歌謡曲のみならず、テレビ主題歌やノベルティソングなどジャンルは幅広く、さらには小説や随筆などの著作物も数多い。

作詞家・阿久悠の作品で最初にレコード発売されたのは、グループサウンズ時代の先駆けとなったザ・スパイダース(当時は田辺昭知とザ・スパイダース名義)が1965年5月に出したシングル「フリ・フリ」のB面に収録された「モンキー・ダンス」という曲。その時、阿久はまだ広告代理店の社員だった。制作部門で『月光仮面』をはじめ数々の番組を世に送り出した宣弘社であったことから、テレビとの深い関わりを持つようになる。

1966年に退社してからは、並行して手がけていた放送作家の仕事に取り組み、バラエティ番組や歌番組を担当した。本格的な作詞家のスタートとなったのも、やはりGSナンバーで、1967年のモップス「朝まで待てない」。1970年には森山加代子に書いた「白い蝶のサンバ」がチャート1位を獲得したことでヒットメーカーとして一躍注目を浴びることとなったのだった。そして1971年には幼児向け番組『ママとあそぼう!ピンポンパン』から生まれた「ピンポンパン体操」が大ヒットして話題をさらう。

「スター誕生!」の審査員で、お茶の間でもお馴染みの存在に

広告代理店から放送作家を経て作詞家という経歴を持つ阿久は、プロデューサーとしての資質も持ち合わせていた。その際たるものが、スターへの登竜門となっていた日本テレビ系のオーディション番組『スター誕生!』である。審査員を務めたことでお茶の間でもお馴染みの存在になったが、企画の段階から参加した阿久は監修の立場で番組を支えた。

最初に合格してデビューした森昌子をはじめ、桜田淳子、伊藤咲子、岩崎宏美ら、番組から輩出されたアイドルたちはデビューからしばらくの間、阿久が作詞し、同じく審査員を務めた森田公一や中村泰士が作曲するというケースがほとんどであった。その流れで登場したのが、やがてモンスターアイドルとなるピンク・レディーである。

「スター誕生!」でデビューの切符を手にしたピンク・レディー


ⓒNTV

ミリオンヒットを連発し、社会現象にまで至る一大ブームを巻き起こしたピンク・レディーの物語は、静岡の中学2年生だった2人の少女、根本美鶴代と増田啓子が出会った1971年に始まる。1973年からヤマハボーカルスクールに通った二人は、“クッキー” という名前のデュオを結成し、1974年のヤマハポピュラーソングコンテストで東海地区大会決勝に進出する。

その後ヤマハのプロ歌手オーディションにも合格したがデビューの機会はなかなか訪れなかった。なんとしてでも歌手を目指していた2人はフジテレビ系のオーディション番組『君こそスターだ!』に出場し、ホットパンツの派手な衣装と振りで歌うも結果は不合格。審査員から「素人くささがない」という評価をされてしまったのだった。

そこで今度は日本テレビ『スター誕生!』へチャレンジする。1975年12月の予選を見事通過し、翌1976年2月に開かれたグランドチャンピオン大会へ出場することになった。フジテレビでの反省から、今度はあえて揃いのサロペットという地味めの衣装で臨み、選曲もあまり知られていなかったピーマンの「部屋を出て下さい」を歌った。その成果があってか、結果8社のスカウトマンからプラカードが上がってデビューの切符を手にする。

事務所はまだ発足間もなかったT&Cミュージック、レコード会社はビクター音楽産業(現:ビクターエンタテインメント)と決まり、1976年4月に上京。オーディションでの印象からフォーク路線が敷かれ、当初は “白い風船” というグループ名が用意されたが、それに異を唱えたのはビクターの担当ディレクターとなった飯田久彦である。元歌手で数多のステージに立ち、観てきた飯田には閃くものがあったのだろう。

作詞と作曲は阿久悠と都倉俊一に決まり、事務所の相馬一比古も加えた制作陣が思案の末、デビューはポップな歌謡曲路線に決定された。カクテルの名前をヒントに “ピンク・レディー” の名を提案したのは作曲の都倉俊一だったという。

デビュー曲は「ぺッパー警部」に決まり、1976年8月25日リリース。結局はB面に落ち着いた「乾杯!お嬢さん」をA面にする意見もあったらしいが、最終的には阿久と都倉の強い推しで決まった。『スター誕生!』グランドチャンピオン大会からわずか半年後のデビューであった。派手な衣装や大胆な振付けのインパクトはもちろんのこと、なんといっても阿久の詞と都倉の曲が斬新だったといえる。

後の松本隆、筒美京平のコンビに通ずる阿久悠と都倉俊一のコンビ

2人のコンビ作はこの時が初めてではなく、過去にも2人で山本リンダ「どうにもとまらない」(72年)、フィンガー5「個人授業」(73年)などのヒットを共に手がけていた。ノベルティ性の高いこれらの作品があった上でたどり着いたのがピンク・レディーであったのだ。

阿久が小林亜星と組んだ「ピンポンパン体操」は子供を入口に大人からも支持されたが、ピンク・レディーの場合は大人向けに売り出されながらも、特に子供たちから多大な人気を得ることになり、制作サイドも一時期はその方向に振り切っていたとおぼしい。阿久は「ピンポンパン体操」以外にも『デビルマン』や『ウルトラマンタロウ』『宇宙戦艦ヤマト』といったアニメや特撮番組の主題歌も書いており、フィンガー5の人気とも相まって、当時の子供にとってもかなり大きな存在だった。

阿久と都倉には10歳以上の年の差があったが、その関係性もかえってよかったのではないだろうか。後の松本隆、筒美京平のコンビに通ずるものがある。

山口百恵を凌ぐアイドルを世に放つことへのこだわり

阿久がピンク・レディーに力を注いだのはもうひとつ、山口百恵の存在も大きかったかもしれない。諸事情あって、70年代に『スター誕生!』からデビューした大物スターでは唯一阿久が手がけずに大成した山口百恵。彼女を凌ぐアイドルを世に放つことに、阿久は強い拘りを持っていたようだ。

特に百恵がそれまでの千家和也や都倉俊一の手を離れ、主に阿木燿子と宇崎竜童コンビ作品にシフトしたところで、その思いは一層強くなったのではないかと思われる。そして阿久が最も得意とする時代背景やトレンドを巧みに折り込んだ作品群を次々に供して、77年の「渚のシンドバッド」から78年の「カメレオン・アーミー」に至る7作品を連続チャート1位、ミリオンヒットの快挙へと導いたのである。その時点で、阿久は名実共に日本一の作詞家になったといえるだろう。

国民的アイドルデュオ、ピンク・レディーのミイ(根本美鶴代、現:未唯mie)とケイ(増田啓子、現:増田惠子)は、阿久が手がけた歌手の中でも最も大きな輝きを見せたアイドル。そして天賦の才能に恵まれた阿久悠もまた、国民的作詞家と呼べる唯一無二の存在となっているのだ。

▶ タイトル:アイドル誕生 輝け昭和歌謡
▶ 放送情報:NHK BS / 2024年1月2日(火)21:00〜

https://www.nhk.jp/p/ts/P292X9P4WK/

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