迫力のあるサウンドで蘇る物語──『鬼滅の奏宴 in 横浜』開催直前! 『「鬼滅の刃」オーケストラコンサート ~鬼滅の奏~』過去公演振り返り【後編】
2025年5月3日(土・祝)パシフィコ横浜 国立大ホールで開催される『「鬼滅の刃」オーケストラコンサート ~鬼滅の奏~ 柱稽古編』。今回で5回目となるこのコンサートは、会場のスクリーンにテレビアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』の映像を映し出しながら、オーケストラによる劇伴の生演奏を楽しむというもので、アニメとはまた違った感動や興奮が味わえる時間となるはずだ。
アニメイトタイムズでは、このコンサートの開催を記念して、前・後編に分けて、これまでの『~鬼滅の奏~』を振り返る記事を展開中。後編となる今回は、上弦の鬼との戦いを迫力のあるサウンドとともに見守った『~鬼滅の奏~ 遊郭編』と『~鬼滅の奏~ 刀鍛冶の里編』の模様をお届けする。
【写真】『「鬼滅の刃」オケコン ~鬼滅の奏~』遊郭編&刀鍛冶の里編 振り返り
~鬼滅の奏~ 遊郭編
2023.3.11-12 PACIFICO YOKOHAMA NATIONAL CONVENTION HALL
新たな始まりを感じさせるオープニング。『~鬼滅の奏~ 遊郭編』は、より和を感じさせる楽曲が多かった。中でも「宇髄との対峙」で登場した三味線は、このコンサートを象徴する楽器になっていた。音楽によって、スクリーンに映し出される遊郭も、より華やかで彩り豊かなものになっていく。炭治郎、善逸、伊之助が女装をして遊郭に侵入する映像をバックに演奏された「女装 / 猪子就職 / 善子の三味線 / 嘘をつけない炭治郎」はコミカルな楽曲だが、善子(善逸)が三味線を演奏するシーンを、三味線奏者が再現していたのは、とても印象的であった。「花魁道中/鯉夏花魁」での篠笛の音も美しい。鎖を叩きつける音、ティンパニやコントラバスの低音、コーラス、エレキギターのピックスクラッチ、あらゆる楽器の特殊な奏法を駆使し、不気味さを強調した「蕨姫登場 / 本性 / たくらみ / 堕姫との邂逅」もインパクトがあった。
遊郭編は、シリアスとコミカルのバランスが良く、「準備万端~ムキムキねずみ / 伊之助、突入 / 堕姫の帯の鬼との遭遇 / 堕姫の帯の鬼との戦闘 / まきを、須磨、善逸復活」は、それをよく表した1曲だった。柱・宇髄天元と3人の嫁を映し出しながらの「宇髄参上~こっからはド派手に行くぜ」は、ホルンの響きなど、彼の実直さや懐の大きさを感じさせる。その後、上弦の陸の堕姫と炭治郎・禰󠄀豆子の激しいバトルを映し出しながら流れていた劇伴は、正義感と禍々しさがぶつかるような雰囲気があった。それはコンサートの後半、堕姫の兄・妓夫太郎が加わり、上弦の陸・堕姫、妓夫太郎と宇髄の戦いも同様だった。
善逸や伊之助が堕姫と相対するシーンでは、三味線が活躍。炭治郎と宇髄が妓夫太郎とバトルでは、「竈門炭治郎のうた」のモチーフが度々登場したり、ホルンが活躍したり、キャラクターに合わせた音色やメロディがシーンを印象付けた。「防戦一方~斬れない頸 / 方針転換 / 堕姫撃破」では、炭治郎、善逸、伊之助が力を合わせて堕姫を打ち倒すまでを、正義感溢れるサウンドで盛り上げていく。そして妓夫太郎と宇髄・炭治郎の死闘をバックに演奏された「夢の中の禰󠄀豆子 / 討伐まであと一歩~霹靂一閃 神速 / 妓夫太郎の猛攻~譜面の完成」も、テーマが目まぐるしく変わる音楽で、特に軽快なピアノの音色が、音柱・宇髄の剣技をよく表現していた。
クライマックスの「決着 堕姫、妓夫太郎戦」の迫力にも圧倒される。そして堕姫、妓夫太郎の頸が斬られたあと「遊郭崩壊」は、コーラスが印象的だった。戦いを終え、穏やかなところから、上限の鬼を倒し、運命が大きく変わり始める予兆を感じさせた「大団円」。本編最後は遊郭編のEDとOP主題歌である「朝が来る」「残響散歌」をオーケストラで華々しく演奏し、締めくくる。
~鬼滅の奏~ 刀鍛冶の里編
2024.5.18 TOKYO GARDEN THEATER
フルオーケストラとバンドの迫力に圧倒された「刀鍛冶の里編開幕」で、コンサートは幕を開ける。過去3回と同様、今回もアニメのストーリーを辿っていく構成。「猗窩座、無限城回遊/鬼舞辻の怒り、上弦への失望」は、コーラスや演奏の緊迫感から、恐怖と緊張感が感じられた。「後藤のツッコミ/天井に張りつく伊之助」では、歯切れのよい演奏、シロフォンや笛の音で、コミカルさを表現していく。「刀鍛冶の里へ」からは、炭治郎が柱である甘露寺蜜璃や時透無一郎らと出会いながら、刀鍛冶の里へ旅していく模様が映し出され、音楽もそれに寄り添うように奏でられていく。「鋼鐵塚家の日輪刀研磨術」では、笛やピチカート奏法などで、刀鍛冶の呑気な面を見せていた。
空気が変わったのは、上弦の伍 玉壺が登場する「上弦襲来」。ティンパニやコーラスが、何かが動きはじめたことを告げる。そして「半天狗襲撃/半天狗、分裂/玄弥の銃撃」では、上弦の肆 半天狗と、炭治郎、禰󠄀豆子、玄弥、そして時透無一郎の戦いが繰り広げられていく。重低音が響く楽曲が、事の深刻さを感じさせてくれた。「小鉄を救う時透/お館様と時透」では、時透から見たお館様の温かさを、女性コーラスや優しいメロディで表現。篠笛やエレキギター、そして女性コーラスが響き、正義感溢れるメロディで甘露寺の活躍を描いた「森を駆ける甘露寺/恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき」。「水獄鉢~ヒノカミ神楽 日暈の龍 頭舞い」では、真っ直ぐな音楽と共に、鬼たちをなぎ倒していく炭治郎の姿を映し出す。ハープの穏やかな音色が、玄弥の過去回想とマッチしていた「玄弥の後悔/諦めの玄弥、炭治郎の鼓舞」は、次第に激しい展開を見せ、コンサート後半へと繋げる。
逃げる半天狗の頸を斬りつけるシーンを映しながら「半天狗、おぞましい叫び/憎珀天登場」からスタートした後半。緊迫感のある戦いを楽器で表現し、最後は「竈門炭治郎のうた」のモチーフで、炭治郎の強い決意を表した「理不尽への怒り/憎珀天との問答」。静かなピアノから、水の中に閉じ込めらえた時透無一郎が抜け出していくまでをドラマチックに描いた「時透、薄れゆく意識の中で/小鉄に迫る脅威/霞の呼吸 弐ノ型 八重霞」。ホルンの音がうねりを上げ、ヒーロー然とした音楽ではじまり、時透が玉壺を打ち破るまでの長い激闘を、場面に合わせた音楽で展開をしていくと、「月夜に舞い降りる甘露寺/私怒ってるから!/甘露寺の日輪刀/甘露寺対憎珀天」では、メロディアスな劇伴が、美しく舞いながら戦う甘露寺を見事に表現していた。
緊迫感のある半天狗と炭治郎の戦いを決着させた「人間の補給/届けられた刀/円舞一閃」のあと、朝日を浴びる禰󠄀豆子を犠牲にし、半天狗から刀鍛冶たちの命を守りに行くのか……大きな選択に迫られる炭治郎のためらいと葛藤を表した「彼は誰時・朝ぼらけ」。そして、中川奈美が歌う「竈門禰󠄀豆子のうた-full ver.-」は、禰󠄀豆子の想いを受け取り、半天狗の頸を斬るまでの展開を、劇伴と歌で表現。最後は歌にコーラスが加わり、涙を誘う。太陽を克服し、炭治郎に笑顔を向ける禰󠄀豆子の映像が感動的で、観客からは大きな拍手が贈られていた。長閑な旅立ちから始まり、壮絶な戦いを音楽で描いていった『~鬼滅の奏~ 刀鍛冶の里編』の本編は、刀鍛冶の里編のEDとOP主題歌である「コイコガレ」「絆ノ奇跡」のオーケストラによる演奏で、幕を下ろした。
[文・塚越淳一]