今の高校生に必要な英語の力 変わる大学入試、検定…対応できる学習とは
2022年度から始まった高校教育の新課程では、英語は特に書く・話す力を重視しコミュニケーション力の充実を図るようになり、大学入試も変わりつつあります。今、高校生が身につけるべき英語の力とはどのようなものなのでしょうか。東京都立小石川中等教育学校で英語科主任を務める石澤昌大先生に聞きました。
入試長文の語数が増加傾向
大学入試はどう変わってきていますか?
大学入学共通テストでは、英語の知識そのものを問う設問は少なくなり、「知識を活用するプロセスでの思考力・判断力・表現力」といった総合的な英語力が問われるようになってきています。単語や文法の知識は土台としてもちろん必要ですが、4技能(聞く・読む・話す・書く)・5領域(聞く・読む・やり取り・発表・書く)の力をバランスよく伸ばしていくことが重要です。
また、近年の大学入試では長文の語数が増加する傾向にあり、日頃から語彙を増やすとともに、いろいろな長文を読み慣れておく必要があります。高1・高2のうちから、音楽や映画、スポーツといった自分の好きなものや、SDGsをはじめ自分が興味を持っている話題やニュースに関する英語の文章を読む習慣をつけておくと、大学受験の長文対策にもスムーズに取り組めるようになるはずです。
スキマ時間に楽しく学ぶ工夫を
実用英語技能検定(日本英語検定協会)など外部検定に挑戦する高校生も多いです。4技能をバランスよく身につけるにはどうすればよいですか。
英語4技能の検定試験のリーディングとリスニング対策に関しては、市販教材での対策が可能だと思います。楽しく取り組めるリスニング対策としては、海外の映画やアニメ、YouTube動画を英語字幕で見てみるのもよいでしょう。「ラジオ英会話」のように、実際の場面でよく使われる英語表現を耳から聴くのも良い方法だと思います。家で机に向かって取り組むのはハードルが高いと感じる場合でも、通学時間などのスキマ時間に聴ける英語のコンテンツやアプリをスマホに入れておくと、学習を継続しやすくなるのではないでしょうか。
英語での発信力が問われるスピーキングとライティングに関しては、学校の授業で行うディベートやディスカッションなどにしっかり取り組んで、自分の意見を英語で論理的に伝える場合の「型」を覚え、それを使いこなせるようにしておくことが大切です。
「生きた英語」を身につけて
グローバル化が進む中で、高校生が身につけるべき英語の力とはどのようなものなのでしょうか。
高校生の皆さんは将来、海外で学んだり働いたりするかもしれませんし、日本国内にいても外国の人と接する機会はこれまで以上に増えていくでしょう。私は旅行や留学、ボランティアの活動で30カ国ほどを訪ねたことがあるのですが、英語を母語としない人々が英語でコミュニケーションをとる場面では、流ちょうな英語が話せるかよりも、英語で何を伝えたいのか、英語で何ができるのかが重視されます。自分が言いたいことを伝え、相手の言おうとしていることを理解し、良い関係を築いていける人になるためにも、高校生の皆さんには「生きた英語」を学んでほしいと思います。
そして、英語力と同じくらい大切なのが、いろいろなことに興味や関心を持ち、異なる立場の人の意見に耳を傾ける姿勢やマインドを身につけることです。新学習指導要領では4技能を統合した力を伸ばすことがこれまで以上に重視されるようになったことに伴い、学校の授業ではペアワークやグループワークで英語を使う活動を取り入れる場面が増えてきています。そういった活動は、自分とは異なる意見を理解しようとするトレーニングにもなるので、ぜひ主体的に取り組んでみてください。
高校生へメッセージをください。
言葉は常に新しいものが生まれ続けていきますから、英語の学習には終わりがありません。教師である私自身もいまだに学ぶことの連続です。英語はあくまでもツールにすぎないので、その先に広がる世界や人との出会いに思いをはせて、楽しみながら学び続けてくださいね。
石澤昌大(いしざわ・まさひろ)
東京都立小石川中等教育学校英語科主任。主任教諭。同校に赴任して23年4月で10年目。ディベートを多く取り入れた授業を実践。
■『高校生新聞』記事より特別転載
♦文・安永美穂