ラジオって作れるの!? 子どもらの好奇心を刺激 釜石海保、無線の仕組みを知る工作教室
釜石海上保安部(佐々木篤部長)は20、21日、釜石市魚河岸の同保安部でラジオ工作教室を開いた。海の安全を守る業務などに欠かせない無線の仕組みを学んでもらおうと初企画。小学校中・高学年対象だったが、科学やものづくりに関心がある低学年の児童や中学生も市内外から参加した。「あんな構造で音が聞こえるの?」という不思議に触れた子どもは、2日間で計21人。目には見えなくても身近なところにある電波とその利用についても興味を深めた。
教室には、一般財団法人日本航路標識協会(東京都)、日本無線(同)、サンコーシヤ(同)が協力する。21日は釜石市内の児童を中心に10人とその保護者ら約20人が参加。初めに、釜石海保の担当者が▽船舶交通の安全を守る▽命を守る海難救助▽青い海を守る環境保全活動―など「海の警察官」としての業務を説明した。学校の夏休み期間になることから海水浴での事故を防ぐための注意点も強調。夏場の気象にひそむ危険の一つ、雷の発生や落雷から身を守るすべをサンコーシヤの関係者が解説した。
落雷のエネルギーに触れて電気、電流とのキーワードを得て、いよいよ無線、電波の話。講師は日本無線の社員が務め、船舶に搭載されたレーダーや交通系IC乗車券などを紹介しながら「電気の信号、電波は身近なところで使われている」と伝えた。電波の利用を感じられるものとして挙げたのがラジオ。待ち構えた子どもたちが工作に挑んだ。
つくるのは日本無線がこの工作教室のために用意する「AM/FM 2バンドラジオ」。子どもらはハンダごてを持ち、回路基板に放送局の切り替えを行うダイヤルなどの部品を付けていった。慣れない手つきだったが徐々にコツをつかんで、1時間ほどで完成。イヤホンを付け、ダイヤルを回して探っていると雑音の中からラジオ放送が聞こえてきて、子どもは笑顔を広げた。
市内の阿部理央さん(10)は「はんだを溶かして付けるのが少し難しかった。ドキドキしながら作ったけど、音がちゃんと聞こえてうれしかった。ラジオってあんな構造なんだ」と学びを深めた。印象に残ったのは雷の話。目に見えていない電流についても興味を持った様子で、「夏休みの自由研究のテーマを決めていなかったから、ヒントになった」と思考を巡らせた。
日本航路標識協会の佐々木忠男常務理事・事業部長は元海保職員だったといい、東日本大震災発生時に電話回線が不通となる中、漁業無線が災害対応に貢献した事例を紹介。「いざという時に命を守るためには情報を発信すること、集めることが重要になる」と、子どもらに防災の視点も植え付けた。
釜石海保の美野重和交通課長は「無線、電波をフル活用して業務にあたっている。電波は身近にあることに気づいて、無線の仕組みをさらに勉強してもらえたら。いつかは日本の技術者に。そして、誰かを、何かを助けることをやりたいと考えている若い子たちの将来の視野を広げる機会になれば。ぜひ仲間入りを」と期待を込めた。