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味が見える!? 日本酒テクノロジー

TBSラジオ

今日は日本酒の日。日本酒といえば、去年ユネスコ無形文化遺産へ登録されるなど世界的にも注目されていますよね。一方で、味わいの表現となるとワインやウイスキーのように国際的に統一されたテイスティング用語が整っておらず、曖昧な言葉が多く、なかなか伝わりづらい・・・説明を受けても、想像がつかない、なんて経験をした方もいるのでは?

電子部品メーカー、なぜ日本酒の世界へ?

そんな日本酒の味を、最先端の技術で“見える化”しようという試みが始まっているんです。その技術「Sake Sensing System(サケセンシングシステム)」を開発したのは、電子部品メーカー・TDK。なぜ電子部品メーカーが日本酒の世界へ・・・? 日本酒プロジェクトの兼森庸充さんに伺いました。

TDK株式会社/技術知財本部/日本酒プロジェクトリーダー/兼森庸充さん


私、秋田に半年くらいいたことがあって、そこで日本酒にはまりまして、それまで日本酒は全然飲まなかったんですけど、色々飲みたいけど効率的に味が分からないなという、私の課題に直面しましてですね。この日本酒の味をTDKの技術をもって可視化できれば面白いんじゃないかということで、この日本酒のプロジェクトを立ち上げました。考え方としては、既存のTDKができること、素材解析とかソフトウェア、AI、これを全く新しいマーケットに持っていって、新たな価値を出そうというコンセプトですね。基本的に日本酒の味、ガス感、香りを100種類の成分分析データから、AIソフトウェアで解析して、3次元で見て分かるような表現形態、独自のレーダーチャートに出力するという技術ですね。

味が一目見て想像しやすくなったんですね~!これまで電子部品の計測などで培った“検出技術”を持っていて、それを応用したんです。

チャートの見方:TDK提供

チャートでは、中心の五角形で甘さ、酸味、余韻(味わいの持続)、濃淡(味の強さや濃厚さ)、複雑さを数字で表しています。0を基準に、4からマイナス4まで。

五角形の外側には円形の図でガス感を表現しています。円の中ほどまでで微炭酸、一番上までであればスパークリングを表す形に。

さらにその外側の円では「香り」を表しています。一般的に香りの表現ではバナナとリンゴを用いることが多いそうで、円の右側に黄色でバナナの甘いフルーツの香り、左側に赤色でリンゴのフレッシュなフルーツの香りを示しています。表現が曖昧になりがちな味を、日本酒好きなエンジニアの発想で数値化したわけなんですね。こだわりが詰まっていますね~!

この「Sake Sensing System」ポイントとしては、日本酒に全くかかわりのないTDKだからこその客観的な視点、そして膨大なデータによる正確性で味わいを示すことができるということ。開発段階では酒類総合研究所と何度も実験・意見交換を行い、微調整を重ねてきたそうで、日本酒については全くの初心者からのスタート、3~4年データ収集に時間をかけたとのことです。

導入後の変化は?

では実際に導入している酒蔵さんはどんな変化を感じているのでしょうか?システムを導入している、天寿酒造の大井仁史さんに伺いました。

天寿酒造株式会社/専務取締役/大井仁史さん

日本酒の酒蔵がデータできちんと測って表示している項目というのは、アルコール度数とか精米歩合とか、非常に少なかったんですね。酒センシングシステムで何が変わったかというとですね、ものすごい多くの項目を、それが客観的にベンチマークされていくというような部分は数を比べただけでも数倍違いますので、大きな違いになっていくんじゃないかなと。それに、日本酒業界って一種の科学ですので、発酵という部分を突き詰めていくには、単なる経験値だけでなく、それを裏付けができるデータというものがあると、これの精度を上げていきながら、場合によっては他社の研究とかいう部分でも役立つかと思いますし、自分たちの特徴をもっと尖らせていくとかですね、製品のレベルアップにつなげていければなというふうに思っています。

研究材料としてシステムを活用しようってことなんですね、「日本酒は科学だ」というコメントも・・・。

天寿酒造 純米大吟醸「鳥海山」のチャート

天寿酒造では、システムとコラボしたお酒のラベルにチャートを表示していて、購入者アンケートによると、80%以上が「味の表現が合っている」と回答したそうです。また、「日本酒が苦手」という人もチャートをきっかけに購入し「美味しい」と回答するケースがあり、新たなファン獲得にも繋がっているようです。

他にも酒蔵側のメリットとしては、インバウンド向け、海外輸出に向けて活用できるということ。日本語でも表現が難しいのに、海外の言葉だとなおさらですよね。

消費者と酒蔵を繋ぐ架け橋へ

活躍が期待される「Sake Sensing System」ですが、これからの日本酒業界にどんな影響を与えていくんでしょうか。今後の展開について再びTDK兼森さんのお話です。

TDK株式会社/技術知財本部/日本酒プロジェクトリーダー/兼森庸充さん

根本的に考える課題というのがありましてですね。消費者が日本酒を飲まない理由という中で、結局どんな味わいなのか分からないというか、「飲まず嫌いな人」が結構多いかなと思ってて、あとはやっぱりブランドに価値が偏在しているということですね。分からないからみんなが美味しいというような、銘柄に人気が集中していて・・・。競争軸をブランドから味にしたいというのを思っているんですよね。あと日本酒を飲む人って、酔っ払いたいから飲んでいるわけではなくて、意見交換して、これ美味しいね、今年のやつはどうだね、とか会話する楽しみがあって、このレーダーチャートがあればより会話も進むという・・・あとは酒蔵のストーリーと味を絡めて説明できるというのは非常に酒蔵さんのニーズとも合うんじゃないかなと。そういうところに貢献できたらなって思いますね。

兼森さんは、お酒を選ぶときになぜか思わず構えてしまう、あの現象を無くしたいんだと。確かに、なんでかお酒を選ぶ時って少し緊張するというか、構えちゃいますよね~。

「Sake Sensing System」があれば、気負わずに日本酒を選ぶことができるかもしれない、今まで出会わなかった新しい酒蔵との出会いも生まれるかもしれない、その架け橋になりたいんだと。これからの日本酒の世界を、より身近なものにしてくれそうですね。これから日本酒を選ぶ際には、ラベルの裏を覗いてみては・・・?

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)

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