【東京レトロゲームさんぽ】サムライスピリッツ~今も「ゲームセンター」には誰かが待っている
1990年代、「対戦格闘ゲームブーム」があった。ジャンルの開拓者となったのは、1991年の『ストリートファイターⅡ』(カプコン)、さらにそれを、一般層にまで届くムーブメントに広げた大きな要因となったのが『バーチャファイター』(セガ)、特に2ということになるだろう。今、対戦格闘ゲームを、メジャーな視点から語る時には、このふたつのシリーズがピックアップされるが、当時はこのほか、非常に多くの格闘ゲームがリリースされた。そのひとつが『サムライスピリッツ(以下、サムスピ)』(SNK)である。
『サムライスピリッツ』シリーズ
剣劇対戦格闘ゲーム『サムライスピリッツ(初代)』が発売されたのは1993年。対戦格闘ゲームブームのさなかのことであり、特に第2作目『真サムライスピリッツ』は、テレビCM、新聞、雑誌等各種メディア広告を通して大々的にプロモーションされ、話題となった。その後シリーズを重ね、2019年に『SAMURAI SPIRITS』が発売、また2022年にexA-Arcadia版『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』が稼働するなど、今も愛され続けているシリーズである。
『サムスピ』の時代は、ゲームセンターの隆盛の時代と重なる
『サムスピ』について特徴的なのが、現在「初代」と呼ばれる1作目が登場する時には、前評判がまったくなく、広告を見たユーザーが「なにこれ?」と首を傾げていた。実際発売されると、キャラクターが全員「武器」を持っていることや、今までにありそうでなかった「和」な世界観が、ゲーセンに集っていたキッズたちの心をつかみ、たちまち大ヒットとなった。
当初は複雑なレバー入力を伴う必殺技がそれほどいらないシンプルなゲームデザインだったため、パーティーゲーム感覚で遊ぶことができた。当時ゲーセンで、「初代」と2作目の「真サムライスピリッツ」をプレイしたことのある人は、かなり多いのではないだろうか。
また『サムスピ』の時代は、ゲームセンターの隆盛の時代と重なる。あの頃、ハマっているゲームをゲーセンにプレイしに行くと、必ず見知った誰かに会えた。時に知らない強豪が現れ、常識はずれの強さを見せつけられてがくぜんとしたりした。普通に生活していたら知り合うことがないような、別の世界に生きる人間と、深い親交を結べることもあった。
——現在、対戦格闘ゲームを通じてのコミュニケーションは、ネットが中心になっている。しかし、今でもゲーセンは、直接誰かと出会うことができる場所なのである。今回取材した、立川の『ゲームセンターWILL』はまさにそのひとつ。
今だから「ゲームセンター」へと、散歩にでかけてみてはいかがだろうか。そこでは懐かしくて、それでいて新しいなにかに出合うことができるかもしれない。
ゲーセン仲間と出会えるのはここ! 『ゲームセンターWILL』【立川】
ゲームセンターWILL
住所:東京都立川市曙町2-23-1 フタバソシアルビル7F/営業時間:15:00~20:00(土・日・祝は10:00~)/定休日:定休日は公式Xにて確認/アクセス:JR立川駅から徒歩5分
かつてあった『ゲーセン専門誌』の時代
1990年代は『対戦格闘ゲーム』が国民的ブームを起こした時代で、雑誌全盛の頃でもあった。その流れを受けて、対戦格闘ゲームを中心に扱う雑誌が多数登場した。
中でも『ゲーメスト』(新声社)と、『ネオジオフリーク』(芸文社)が長期定期刊行物として知られている。特に『ゲーメスト』は月2回刊行で、コンビニにも置かれていたという、今では想像できないような、高い人気を誇っていた。他にも『パワーゲーマー』(マガジンボックス)など短期間で消えた雑誌や、単発ムック本も多数刊行。攻略の角度の違いや、連載の種類など、それぞれのカラーがあった。
2000年代になると、百花繚乱の時代は終わり、ゲーメスト、ネオジオフリーク両方の系譜を受け継ぐ『アルカディア』(エンターブレイン)に統合され、その後、現代の動画時代へと移っていくことになる。
取材・文=来栖美憂 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年9月号より
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来栖美憂
フリーライター
雑誌・新聞・ネットなどメディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。ゲーム関係では雑誌『月刊アルカディア』『闘劇魂』『GAME JAPAN』など各誌で執筆。近著に『サムライスピリッツネオジオコレクション対戦攻略ガイド』(スタンダーズ)。