雨宮天、伊藤美来「“興味を持ったことは何でもやってみる”っていうのが大事」#学生の君に伝えたい3のこと
人生の先輩である著名人の方々から、まだまだ自由に使える時間が多い大学生のみなさんに、“学生のうちにやっておいたほうがいい3つのこと”をアドバイスしてもらおうという連載「学生の君に伝えたい3つのこと」。
今回お話を伺ったのは、10月25日(金)公開の劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』で、“悦ネエ”こと村上悦子を演じた雨宮天さんと、悦ネエの幼なじみの“ヒメ”こと佐伯姫を演じた伊藤美来さん。お2人がこれまでの自身の経験を振り返り、学生の今だからこそできることをアドバイスしてくれました。
【写真】雨宮天、伊藤美来の撮りおろし雨宮天、伊藤美来が<学生の君に伝えたい3つのこと>
1.学生のうちに海外に行っておけばよかった
ーー学生のうちにやっておいた方がいいと思うことはありますか?
伊藤美来(以下、伊藤):私、「学生のうちに海外とかもっと行っとけばよかった」って後悔しているんです。絶対、夏休みとかに行けたよ、って。今、学生さんはたぶん「超忙しい!」って思っていると思うんですけど、社会人になると「あれ、もっと忙しい!」ってなると思います(笑)。学生の頃に行っておけば、もしかしたら世界が変わったかもしれないし、見えていた世界とか、考え方やマインドも違ったかもな、って。だから、今のうちにちょっと遠くを見ておくといいんじゃないかなって思います。
2.興味を持ったことは何でもやってみる
雨宮天(以下、雨宮):ちょっとフワッとした言い方になるんですけど、“興味を持ったことは何でもやってみる”っていうのが大事なのかな、って。たとえば将来、興味を持ったこととは全然違うことを仕事にしたとしても、どの体験の何がどこで活きてくるかわからないというか。実際、そこで得た技術は使わなかったとしても、そこで得たメンタルとか、結構なんだかんだ体験ってのちに活きてくるものが多いなと思いますし。いろんな人と出会う中で、自分の視野とか感じ方を広げていくことも大事ですし、大人になればなるほど初めてのことがどんどん苦になっていくと思うから、学生のうちに興味を持ったことはなんでも挑戦してみたらいいんじゃないかなと思います。
3.ハッピーエンドな作品からポジティブなパワーをもらう
ーー学生のうちに見てほしいと思うものはありますか?
雨宮:なんだろう……(と少し考えて)ちょっとメモを見ます。私、自分のこと忘れちゃうから自分のことをメモしているんですよね(笑)。
伊藤:えらい! 私は、大人になってから刺さったものがあって。学生のときはあんまり詳しくなかったんですけど、ディズニーとか、そういうハッピーエンドものというか、絶対にハッピーエンドみたいな、すべてが優しい世界のコンテンツにすごく癒されるんです。学生の頃って、ちょっと怖いものとか刺激的な作品を求めがちだったんですけど、すべてに優しくなれる作品から得られる言葉とかポジティブなパワーがすごく今自分を助けてくれているなと思うし、できるだけポジティブなものに触れたいなと思う瞬間が結構あるので、ハッピーエンドものはおすすめだなって思います。
ーーわかります! 大人になったからなのかもしれないですけど、まっすぐなものって刺さりますよね。
伊藤:そうなんですよ。
ーー学生の頃はひねくれていたり、物事を斜めに見たりして、まっすぐなものを避けていたかもしれない。
伊藤:わかります。しかもそれがカッコいいって思っていたフシもあったというか。でも、ハッピーエンドもののよさにも早めに気づけたらより視野が広がっていいかもしれません。
雨宮:(メモを見終わって)私が最近読んですごくよかった本になるんですけど、太宰治の『斜陽』がめちゃくちゃ好きで。私、高校の時は“悦ネエ”じゃないですけど、授業をあんまりちゃんと受けてなかったんです(笑)。でも、大人になってから、言葉とか物語とか、心情とか感情とかはすごく好きだから、ちょっと数人で集まって読書会をやろうってことになって。いわゆる純文学を毎回1冊それぞれで読んだ後、集まって感想を言い合うという会をやっているんです。
ーー同じ本を読んで感想を言い合うんですか?
雨宮:そうなんです。感想とか、自分が好きだった表現を話したり、あと、勝手に物語のその後を想像してみたり。「本当はこの人とこの人は好き合っていたんじゃないか」とかそういう妄想も語るみたいな、とにかく思ったこと全部言うみたいな会をやっていて。その中ですごい『斜陽』が刺さったんです。だから、みなさんにすごくおすすめしたいというよりは、日本語的にすごく刺さる言い回しも多かったし、登場人物たちがみんな個性豊かで、かなり独特なので、みんなだったら何を感じるのかなって聞いてみたいですね。
ーーそれ、せっかくなら読書会とセットでおすすめしたいですね。
雨宮:確かに! 本当にキャラクターの性格も個性的で、ちょっと難解なところもあるから、大学生のときに読んだらどう感じるのか、数年経って社会人になってから読んだら今度はどう感じるのか、見え方が変わると思うので、それも含めて読んでみてほしい……というか、語り合いたいです(笑)!
長く愛され続けている作品に携わるプレッシャーみたいなものも感じた
ーー本作の出演が決まった時の心境はいかがでしたか?
雨宮:私は、今作はかなり生っぽいお芝居が必要とされる作品かなという風に捉えていて、そういうアプローチでオーディションに臨んだんです。それは普段の自分の演技プランとは違うものだったんですけど、それでちゃんとこの作品に決まったということがすごく嬉しかったですね。それと同時に、長くずっと愛され続けている作品に携わるプレッシャーみたいなものも感じました。
伊藤:私は(主要キャスト)全員(分のオーディションを)受けたんですよ(笑)。だから、1人ひとりにすごく時間をかけて一生懸命オーディションをした記憶があって。この作品の小説やドラマ、映画の存在も知っていたので、今回アニメーションということで、この作品の世界に入るチャンスが来たんだっていうことが嬉しくて。全員受けた中で、ヒメが私の中でもいちばんしっくりきていた部分があったので、ヒメで決まったと聞いたときは「やはり!」と嬉しい気持ちでした。あと、そらっち(雨宮天)の悦ネエのお芝居を聞いたとき、「ピッタリ!」と思って(笑)。
雨宮:(笑)!:嬉しい〜。
伊藤:最初のすっごい不機嫌なところとか、その自然なお芝居感というか。一緒には録れなかったんですけど、そらちゃんの自然なお芝居を聞いて、すごく新鮮味もあったし、でもすごくピッタリだな、って。悦ネエって、登場人物の中でいちばん感情が動く、変化していくキャラクターだと思うんですけど、その繊細さとか、「あ、今イラっとしたんだな」とか「今ちょっと嬉しいんだな」とかが「うん」の一言だけで伝わってくる感じがすごくリアルで「わ〜、いい!」って思いながら見てました。
雨宮:ちょっと嬉しすぎて鳥肌が立ちすぎて、服が持ち上がりそうです(笑)。
伊藤:(笑)。
雨宮:めちゃくちゃ嬉しい……!鳥肌が止まらない(笑)。
“観る”というより“体験する”感覚の作品
ーーご自身が演じるキャラクターに似ていると感じる点はありますか?
雨宮:悦ネエは高校で「自分が特別でもなんでもない存在なんだ」ということに気づいて、ちょっと諦め癖がついてしまったキャラクターなんですけど、私はものすごく悦ネエに共感できると思っていて……というかもう私なんじゃないかっていうくらい本当に共感できて。小学生の頃は、足が速いとか、勉強ができるとか、人よりちょっとできることがあるだけで「自分は世界に選ばれた1人なんだ」みたいな万能感があったものが、高校生になると打ち砕かれる感じがあるなって。私もまさに悦ネエみたいな感じで、自分に対して諦めたくない気持ちと、でも諦めちゃった方が傷つかないし、ラクだから諦めたことにしたいという思いもあって。授業中もだるいし眠いしみたいな感じだったから、本当に悦ネエと似ているところばっかりだなと思います。
伊藤:私が演じるヒメは本当に優しくて明るくて、誰とでもコミュニケーションがとれて、誰もが好きになるような優しい雰囲気のある女の子なんですけど、私自身はコミュニケーション能力がヒメほど高いかって言われるとそうじゃない気がするので、似ているというよりは、尊敬できるところが多いキャラクターかなって思います。自分を前に出さず、友達である悦ネエが幸せでいてくれたらいいという気持ちとか、「悦ネエががんばってる姿を隣で見たい!」っていう、嫁ムーブみたいな、無償の愛みたいなところが本当に魅力的だし、そんなヒメがいるからこそ、悦ネエを始めボート部のみんなが前を向けるんじゃないかなって。
ーー演じる際、特に意識したことや心がけたことはありますか?
雨宮:悦ネエはいわゆるアニメ的なアプローチみたいなものは今回ちょっと減らして、喜怒哀楽をしっかり立てて分かりやすく伝えるというよりは、こんなとき自分はどんなふうになるかな? みたいな、よりリアルなお芝居を突き詰めていきました。だから、お芝居の中で「今ちょっと音に頼ったな」みたいな、“アニメ的なわかりやすさ”みたいなところにいっちゃったなと思ったら、それは悦ネエからも外れるし、私のイメージするこの作品からも外れる気がしたので、やり直させてもらったりしましたね。さっきみっくるも言ってくれたんですけど、「うん」っていうセリフがすごい多くて。「うん」だけ、みたいな。
ーー難しそうですね。
雨宮:そうなんですよ。そこをアニメ的に「うん!」ってやっちゃえば今嬉しいんだなって伝わるかもしれないけど、そうじゃないから、味付けするというか、出汁とかスパイスとかで香らせていくみたいな作業が多かったので、「うん」のリテイクは結構自分から申し出て、かなりやらせていただいたりしました。ずっと、ホントにちっちゃい針の穴に糸を通すようなことをやってるようなイメージだったし、ずっと集中し続けてたので、そんなにアフレコが難航したわけでもなければ、悦ネエにそんなに叫ぶセリフがすごいあったわけでもないんですけど、終わった時はヘットヘトで、疲労感がものすごかったです。
伊藤:私は、この作品の雰囲気が自然な感じというか、実写に近い感じのテンポ感だなって思ったので、そこは意識するようにしていたんですけど、ヒメに関しては「あはは〜」っていう口ぐせがありまして。その口ぐせがめちゃくちゃ出てくるので、いろんな「あはは〜」をやりました(笑)。結構いろんな「あはは〜」が出てくるので、注目してもらえたら嬉しいです(笑)。
ーー実際に本作をご覧になられた感想は?
雨宮:まずは「なんて綺麗なんだろう!」っていうところに圧倒されました。大きなスクリーンと音響で観ると、“観る”というより“体験する”感覚がすごい作品だな、って。音や絵ももちろん細部にこだわってますし、ものすごい臨場感のある作品だなと思いました。
伊藤:最初観たとき、ホントに生きてる、ここにいるっていう感覚がすごいあって。背景とかも「ほんとに絵ですか?」っていうくらいのリアルさと美しさがありました。本当に今、自分は松山にいるんだっていう気分になって、より没入できる感じがあったのがすごいなと思いました。これはぜひみなさんにも体験してもらいたい感覚ですね。
PROFILE
雨宮天
8月28日生まれ、東京都出身。主な主演作に、TVアニメ「アカメが斬る!」(アカメ役)、「東京喰種」(霧嶋董香役)、「七つの大罪」(エリザベス役)、「この素晴らしい世界に祝福を!」(アクア役)、「彼女、お借りします」(水原千鶴役)などがある。
PROFILE
伊藤美来
10月12日生まれ、東京都出身。主な出演作に、TVアニメ「夜のクラゲは泳げない」(光月まひる役)、「五等分の花嫁」(中野三玖)、「声優ラジオのウラオモテ」(歌種やすみ役/佐藤由美子役)、「アクロトリップ」(伊達地図子役)、「魔王2099」(マキナ=ソレージュ役)、「菜なれ花なれ」(海音寺恵深役)などがある。
劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』10月25日(金)全国公開
学校をあげてボートのクラスマッチを行っている三津東高校。誰もが全力で競技に挑む中、2年生の村上悦子はひとり醒めた表情だ。才能もないのに頑張ったって仕方ない……そう気づいてからの悦子は、勝負をあきらめてばかりいる。そんなある日、悦子のクラスに高橋梨衣奈という転入生がやってきた。クラスマッチのボートに感動した梨衣奈は、悦子と幼なじみの佐伯姫を巻き込み、廃部状態だったボート部の復活に奔走する。同学年の兵頭妙子と井本真優美が入部し5人になると、名義貸しのつもりだった悦子も渋々、初の大会に出場することに。試合当日、理想と現実の差に打ちのめされてしまった悦子たち。全員がゴールをあきらめかけた瞬間、悦子がオールを再び握りしめる。 「私、もっと上手くなりたい」という悦子の言葉で、5人の気持ちはひとつになるーー! 眩しい水しぶきと真直ぐな思いがあなたの背中を押す
https://sh-anime.shochiku.co.jp/ganbatte-anime/
取材・文/東海林その子
撮影/三橋優美子