県高校総体前特集 バレーボール女子(2)大分商業 キャプテンのために、チームが一つになる 【大分県】
県高校総体まで残り1カ月を切った。4月に行われた全九州バレーボール総合選手権(九州総合)の女子県予選では、絶対王者・東九州龍谷が貫禄の優勝を果たしたものの、大分商業が第2セットで健闘し、確かな成長を示した。国東や臼杵も着実に力を付けており、上位争いは激しさを増している。今回紹介するのは、大分商業。たった一人の3年生の背中に導かれ、若いチームが静かに着実に歩を進めている。
静かにチームを見つめる3年生がいる。大分商業のキャプテン平田咲凪だ。新チーム唯一の最上級生であり、高校最後のこの1年間にすべてを懸ける。
4月の九州総合県予選では、東九州龍谷(東龍)にストレートで敗れたものの、第2セットは23-25と善戦。確実に手応えをつかんでいる。森栄一郎監督は「点数よりも、力で押し切られずにラリーができたことが収穫。あとはどれだけ仕上げを徹底できるか」と振り返る。
チームの主力は2年生トリオの安藤美空、帆秋杏、小田原明日香。特にエースの安藤は森監督がこれまで指導してきた中で「歴代で一番」と評されるほどの高さと爆発力を持ち、攻撃の柱として注目されている。一方、左利きでしなやかなスパイクを放つ帆秋、テクニックとパワーを兼ね備えた小田原も確実に存在感を増している。
それでも、このチームの要は、やはり3年生の平田だ。森監督は「速攻やセンター攻撃の起点になれる唯一の存在。まだ体力的に物足りなさはあるが、平田が目立つ展開になればチーム全体が楽になる」と語る。昨年は卒業した先輩たちが強力な土台となり、安藤ら下級生が活躍しやすい環境を整えていた。今年はその役割を、平田が一人で担っている。
チームの要となる平田咲凪
平田のリーダーシップは、言葉よりも姿勢で示される。「練習でも手を抜かず、地味なこともコツコツやる。下級生たちも『平田のために』という思いを持ち始めている」と森監督は目を細める。
九州総合県予選では、1年生の起用にも踏み切った。県中学選抜経験のある選手らがベンチ入りし、戦力の底上げが進む。現時点では東龍と肩を並べるには及ばない。しかし「秘策はある」と森監督は静かに語る。「そのためには、1年生の台頭が欠かせない。条件が整えば、形にできる準備はしている」
照準はあくまでも県高校総体。東龍との一騎討ちが想定される一戦で、平田がどんな姿を見せるか。安藤ら2年生に託す来年とは異なり、平田にとってはこれから全ての大会が最後の舞台となる。一人きりの3年生が、どこまでチームを引き上げられるか。その背中が導く未来に、静かな期待が集まっている。
県総体に向けて着実に歩を進める
(柚野真也)