髙石あかりさんスペシャルインタビュー【NHK連続テレビ小説「ばけばけ」主人公・松野トキ役】
2025年後期の連続テレビ小説「ばけばけ」は、小泉セツ・八雲夫妻をモデルとした物語。主人公の没落士族の娘・松野トキを演じる髙石あかりさんのスペシャルインタビューをお送りします。
本記事は『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ばけばけ Part1』に掲載したインタビューからその一部をご紹介します。
(※NHK出版公式note「本がひらく」から抜粋)
俳優になるのは、保育園のころからの夢、そして、朝ドラ出演は小学校4年生からの夢でした。当時の小学校の先生に言われた「朝ドラでヒロインを演じているあなたが見たい」という言葉を聞いた瞬間、世界が輝いて! そこからは言霊を信じて、「朝ドラのヒロインになりたい」とたくさん口にしてきました。
実は「舞いあがれ!」と「あんぱん」のオーディションを受けていて、「ばけばけ」が3回目のチャレンジです。今回は書類審査で「化ける」というテーマでエッセイを書くなど、全部の審査がひと味違っていました。特に3次審査はお芝居のワークショップのようで、本当に楽しかったんです。あまりに楽しかったので、この方々と少しでも長い時間を共にしたいという思いでした。ただ、 過去2回のオーディションで最終審査まで進み、夢見心地になりながらも最終の難しさを味わってきたので、「ばけばけ」では期待しないようにもしていたんです。なので、マネージャーさんからのサプライズの手紙で、「ヒロイン決定」という文字を見たときは泣きました。感情がぐちゃぐちゃで目の前が真っ白になり、少したってから「あれ? 朝ドラ?」と実感が遅れて来る不思議な感覚。ずっといちばんの夢だったので、この瞬間を超える衝撃やうれしさ、感動はこの先もうないんじゃないかと思ってしまったほどです。「役者としてしっかり頑張る」という気持ちはもちろんありますが、クランクインして2か月ほどたった今(5月末現在)でも、ヒロインの実感が湧いていない自分もいます。いまだにマネージャーさんに「これは朝ドラの撮影ですか?」と聞いてしまうくらいです(笑)。
「これ、まさに私!」と思うほど、トキは自分に似ている
脚本家・ふじきみつ彦さんの台本は最高におもしろいです! ここまで声を出して笑いながら読める台本には、なかなか出会えないんじゃないかと思います。そして、読みながら「トキはなんで私が思っていることを言うんだろう?」と感じるくらい、「トキ=自分(髙石あかり)」なんです。「これ、まさに私!」と思うトキのセリフが毎回あって、演じる際に全く違和感がありません。トキとの出会いは運命だったんだな、と思っています。
トキは自分の意見を押し通すわけではなく、周りの人の反応を見ながら進めていくタイプ。自分と他人をきちんと線引きしていて、自分が黒で相手が白だとしてもその白を認められる人物なんです。そういうところが私と似ているんだと、制作統括の橋爪(はしづめ)(國臣(くにおみ))さんとお話ししていて腑(ふ)に落ちました。例えば、明治時代になっても武士の格好をし続けているおじじ様(勘右衛門(かんえもん))と父上(司之介(つかさのすけ))のことも、トキは認めているんです。自分とは違うけれど、その人はその人でいいと考えている。第5週では、外国から来たヘブンさんのことをおじじ様が嫌う場面がありますが、そんな家族の元で育っても、ヘブンさんを嫌ったりせず1人の人間として見ているのもトキらしいと思います。きっとトキはもともと人間が好きなんだと思います。
そんなトキが貧乏な松野家を背負っていくのは、使命感からじゃないでしょうか。「家族に優しくしたい」とかではなく「そう生まれてきたから」。小さいころから当たり前に「家族を守る」という感覚がトキにはあるのだと思います。何か困難があったときに盾になろうとするのがトキ。やっぱり武家の血なのか、トキはかっこいいんです。
『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説ばけばけ Part1』では、当インタビューの完全版やトミー・バストウさん、吉沢亮さんを始め豪華出演者のインタビュー、モデルとなった小泉セツ・八雲夫妻の歩みや、舞台地である松江・出雲の紹介など、ドラマがもっと楽しくなるための独自企画も満載。朝ドラファン必携の1冊です。
取材・文/安田 光
髙石あかり(たかいし・あかり)
2002年生まれ、宮崎県出身。主な出演作に、映画「ベイビーわるきゅーれ」「わたしの幸せな結婚」「私にふさわしいホテル」「遺書、公開。」「ゴーストキラー」「たべっ子どうぶつTHE MOVIE(声)」「夏の砂の上」、ドラマ「御上先生」「アポロの歌」「グラスハート」など。NHKでは、「東京の雪男」「わたしの一番最悪なともだち」に出演。