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ホンダ・日産経営統合、効果を引き出す施策は

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ホンダ・日産経営統合、効果を引き出す施策は

ホンダと日産自動車は23日、経営統合に向け協議することで合意したと発表した。持ち株会社を設立し、両社が傘下に入る案を検討する。日産が出資する三菱自動車の合流も視野に入れている。3社の世界販売は合計800万台超。実現すればトヨタ自動車、独フォルクスワーゲンに次ぐ、世界第3位の自動車グループが誕生する。本稿では3社統合の効果を引き出す施策を考える。

新分野への投資負担を軽減

ホンダの三部敏宏社長は同日開いた記者会見で「経営統合で真の競争力強化が実現できる」と述べた。大きな効果が期待できるのは新分野での開発投資だ。自動車業界の競争は、電気自動車(EV)やSDV(ソフトウェアの更新で性能を高める次世代車)、自動運転車といった分野が主戦場となり、米テスラや中国のBYDなど新興勢力が先行。こうした新分野に、ホンダは2030年度までに10兆円、日産は2026年度までに2兆円を投資する計画を打ち出しており、巨額の資金が必要だ。自動車メーカーが対処すべき技術分野が急速に広がる中で、開発投資を分担し負担が減らせるのはメリットとなる。

HVなどの既存技術を共有

既存技術を共有できるのもメリットだと考えられる。世界的にEVの普及が減速する一方で、米国を中心にハイブリッド車(HV)の売れ行きは好調だ。現状、HVを強みとするホンダに対し、日産はHVの商品群が手薄で業績不振に陥っている。日産がホンダのHV技術を活用すれば、商品群を拡充でき、ホンダは「規模の効果」が期待できる。日産はEVで先行しており、三菱自動車はプラグインハイブリッド(PHV)が強い。互いの電動技術を補完できる可能性がある。

車種統廃合・部品共通化

ホンダと日産は大衆車メーカーであり、車種が重複している。小型車ではホンダの「フィット」と日産の「ノート」、軽自動車ではホンダの「N-BOX」、日産と三菱自動車が共同開発する「デイズ/ekワゴン」、スポーツ多目的車(SUV)では「CR-V」と「エクストレイル(海外名:ローグ)」といった具合である。三菱自動車はSUVやビックアップトラックに注力しているのが特徴だ。

車種をまたがる部品の共通化や、同サイズ車種のプラットフォーム(車台)の共用、車種の統廃合・補完を進めると、コスト削減や開発負担の軽減につながる。特にEVの性能を左右する蓄電池の共通化は大きな効果が期待できる。部品の共通化や車種の統廃合は、自動車部品メーカーの淘汰を加速することが予想される。

東南アジア地域を補完できる可能性も

ホンダも日産も主力地域は中国と米国と日本であり、地域の補完は考えにくい。ただし、東南アジアについては三菱自動車が強く、ホンダと日産は存在感が低いため、補完が効くかもしれない。

日産は業績不振で世界の生産能力を20%削減するとの構造改革計画を発表したが、具体的にどこの地域で生産能力を削減するかを明示していない。ホンダとの経営統合の協議が削減地域の選定に影響するだろう。

経営統合に向けた課題

以上、考えられる施策を挙げたが、経営統合に向けた協議は緒に就いたばかりで、経営統合が実現するのか、実現したところで効果をどこまで引き出せるのかは不透明な情勢だ。環境変化のスピードは増しており、統合効果を引き出すにはスピードも求められる。

報道によると、台湾の鴻海精密工業が日産の株式取得向けて、日産の筆頭株主であるルノーと交渉をしており、統合協議に何らかの影響を与えるだろう。鴻海の動きが今回の経営統合を後押ししたとの見方も強い。

日産は2024年9月期決算で営業利益が前年同期比9割減となり業績不振が深刻だ。ホンダの三部社長は会見で「前提として日産のターンアラウンド(再生)の実行が条件だ」と述べた。経営統合の協議を前に進めるために、日産は業績回復の道筋を示す必要がある。
3社ともに技術やデザインの自負心が強く、以前の記事で取り上げた通り(ついに来た日産・ホンダ協業 文化の違いを乗り越えられるか)企業文化の違いも、足かせになる恐れがある。

経営統合が実現すれば、国内の自動車産業は、「トヨタ自動車とスズキ、マツダ、SUBARU、ダイハツ工業」と「ホンダ、日産、三菱自動車」の2大陣営に集約されることになる。日本の自動車産業の発展につながるような協議となることを期待したい。

文献
時事通信社 『日産に鴻海から提携の打診 ホンダとの協議後押し、HVも焦点』
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024121801085&g=eco(2024/12/19)
東洋経済ONLINE『ホンダと日産、電撃浮上した「経営統合」の現実味 立役者はホンハイ?株式市場の反応は明暗』
https://toyokeizai.net/articles/-/847648?display=b(2024/12/19)

執筆者:フロンティア・マネジメント株式会社 池田 勝敏

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