「昭和100年映画祭」から「さよなら丸の内TOEI」で閉館イベントのラストスパートに入った東映、多田憲之会長が語る〝新映画五社協定〟誕生の舞台裏
再開発計画に伴って、刻一刻と銀座3丁目の東映本社の移転とともに、最後の直営映画館〈丸の内TOEI〉の閉館が近づいている。そのフィナーレを飾る上映イベントとして3月に始まった「昭和100年映画祭 あの感動をもう一度」が終了し、現在は「さよなら丸の内TOEI」(7月27日まで)と銘打って東映製作・配給の上映イベント開催によってラストスパートに入った。
東映会長・多田憲之氏
本誌でも連載していただいた東映会長の多田憲之さんは、予想以上の反響に満足気で、自ら企画したイベントだけに胸を撫で下ろしているといった風。ことに3月28日からの5月8日まで開催した〈昭和100年映画祭 あの感動をもう一度〉は、「昭和」を彩った名作、ヒット作42本が上映されたが、多田さん曰く、「‶昭和100年〟というキーワードで、かつての五社の垣根を超えて、東映だけでなく、松竹・東宝・KADOKAWA(大映)・日活の名作を閉館する〈丸の内TOEI〉でやろう」と閃いたという。
「実は昨年11月に高倉健さんの没後10年特集上映を企画し、東映作品だけでなく健さんの代表作でもある『幸せの黄色いハンカチ』もラインナップしたいが、山田洋次監督に舞台に立ってもらいたい、と松竹さんに持ち掛けたらそれが実現したんです。丸の内TOEIに山田監督と出演した武田鉄矢さんが来館して舞台挨拶してくれた。その時の山田監督の〝昭和の匂いのする映画館だねぇ〟の一言がきっかけで、〝そうだ、来年は昭和100年だ〟と。丸の内TOEIの閉館も決めていたし、昭和100年映画祭をやろうと決めたんです。かつて映画五社協定の時代には思いもよらない出来事で、松竹、東宝と声を掛けたら、全社快諾してくれましたので、これは〝新五社協定〟が誕生した」
と多田会長は欣喜雀躍した。因みに、 『男はつらいよ』、『遥かなる山の呼び声』など山田洋次監督の作品も架けられ大好評。東宝の『南極物語』や『八甲田山』など、初めは東映に持ち込まれた企画だったが、東映では取り組むことができなかった名作の数々が「昭和100年映画祭」では架けられた。かつて映画評論家の淀川長治さんは、テレビの映画番組の最後に、「映画っていいですねぇ…」という感想の一言を必ず添えたが、まさに映画界が一丸となって、「映画っていいもんですねぇ」と大合唱が聞こえてきそうなお祭りが実現したのである。
さて、ラストスパートに入った上映イベント「さよなら丸の内TOEI」の後半ラインナップがそろそろ出始めているので見逃さないために記しておくと、東映映画といえば、高倉健の『網走番外地』『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』とつづき、吉永小百合との共演が話題となった『動乱』や『冬の華』『ホタル』『鉄道員(ぽっぽや)』もラインナップされている。『あぶない刑事』シリーズ、夏目雅子主演の畢生の文芸映画『鬼龍院花子の生涯』など名作、話題作がズラリと予定されている。これからが本番だと言わんばかりだ。
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