下柘植宮踊り保存会が活動休止前最後の奉納 伊賀・日置神社の神事踊
三重県伊賀市下柘植の日置神社(西口昌寛宮司)で4月13日、神事踊が奉納された。伝統を守ってきた団体の一つ「下柘植宮踊り保存会」は、担い手不足や会員の高齢化を理由に、この日の奉納を最後に活動を休止した。〈YouTubeで動画(https://youtu.be/0mu1fPnx01g)〉
日置神社の神事踊は、県内で「かんこ踊り」と総称される風流太鼓踊りの一つ。五穀豊穣や雨乞いなどのため江戸時代から踊られ、県指定無形民俗文化財になっている。
鬼と踊り子が登場し、踊り子は細く割った竹に花と葉の形の紙をつけて枝垂れ桜に似せた飾り「オチズイ」を背負い、胸の前に着けた太鼓を打ち鳴らす。
毎年、春の例祭で下柘植地区の下柘植宮踊り保存会と愛田地区の愛田かっこ踊り保存会が持ち回りで奉納してきた。氏子の数から、下柘植が2年続けて奉納した後に愛田が奉納し、再び下柘植が2年続けるのが慣例だったという。
下柘植宮踊り保存会は約50年前に発足し、現在は30から70代の会員26人が所属。発足当初は若者が中心だったが、今は高齢化が進み、60代後半の会員が中心になっていた。
この日は境内に住民ら約100人が集まり、奉納を見守った。踊り子と鬼は輪になったり2列縦隊になったりと、歌やほら貝の音に合せてさまざまな動きを見せ、約1時間かけて3曲を舞った。境内には桜の花びらが舞い、オチズイも優雅に花開いた。全ての曲が終わると、周囲から大きな拍手が起こった。
週2回の稽古を続け、奉納を終えた下柘植宮踊り保存会の松島秀生代表(70)は「半世紀の間に、少子高齢化の波に飲み込まれてしまった。我々の踊りは十数人いなければ形にならないが、それだけの人数を集めようと思うと難しい。時代に合わせた形にする方法もあるが、それは若い人たちに期待したい」と話した。
奉納を見守った地元の女性(68)は「亡くなった主人も若い時に踊った。寂しいが、動きのある踊りなので若くないと体力が持たないと思う。いつか復活してくれることを願いたい」と話した。
西口宮司によると、来年は愛田の保存会が奉納する予定だが、再来年以降をどうするのかは決まっていないという。