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6台のインポート・カーに見る、やや客観的な輸入車最新事情:2025年JAIA試乗会レポート

PARCFERME

報告が遅くなり恐縮だが、今年もPFスタッフ4人がJAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会に参加した。自動車評論を本業とした経験のない者も含まれるとはいえ、全員が根っからのクルマ好きである。今回は“やや客観的”に、現在の日本における輸入車事情を観察した。その成果として、全員の総意としての試乗リポートを以下に報告する。

ロータス・エメヤ R

ロータス初のハイパーEVサルーン。カーボンエアロを装着、800V高電圧バッテリーを備え0-100km/h加速は3秒を切る。先進的エアサスペンションを装着。静粛で品のある内装も備え、スポーツカーの魂を残したプレミアムGT。ロータス・ブランド電動化の旗印。

エクステリア ― 華美に寄り過ぎず洗練を保つデザイン

エメヤ Rの外観は、ランボルギーニほど華美に振り切るわけでも、アストン・マーティンのように抑制一辺倒でもない。「派手さ」と「品位」を高い次元で両立させている。ボディとインテリアの意匠は統一感が強く、グラスルーフやキーに至るまで細部へのこだわりが感じられる。キーは高級コスメのパッケージを連想させる仕上がりで、目の肥えたマダムなら一目で“只者ではない”と気づくだろう。
リアバンパーからリアタイヤにかけて設けられたエアアウトレットや、フロントのエアフロー処理には、ロータスが培ってきた空力哲学が息づく。軽量化を追求してきた同社が、このクラスのサルーンを手がけた挑戦にもかかわらず、ブランドDNAをしっかりと継承している点が頼もしい。

インテリア ― 洗練された高級感と実用性の両立

サルーンとしての快適性を重視し、リアシートには十分なゆとりが確保されている。部分的に遮光できるサンルーフはユニークで、インテリア全体の質感も非常に高い。カップホルダーのリングに施されたカットは、ジャガーのクリスタル仕上げほど派手ではないものの、美しい処理が印象的だ。
電子サイドミラーや自動ドアといったギミックも充実しており、英国車らしい遊び心が随所に顔をのぞかせる。こうした仕掛けは、まるで映画『007』に登場する英国車を思い起こさせ、所有欲をくすぐる。

走行性能 ― 意外なほど快適で上質な乗り味

車重は約2.5 トンと従来のロータス車とは一線を画すが、乗り味は予想以上にしなやかで快適だ。「ロータス=硬派なスポーツカー」という既成概念を良い意味で裏切り、高級サルーンとしての仕上がりを示した。電動化による重量増を感じさせないフットワークと高い静粛性は特筆すべきポイントで、新しいロータスの方向性を強く印象づける。

ロータスの未来 ― 100年に一度の変革期を迎えて

今回の試乗で、ロータスが「ピュアスポーツ専門ブランド」から「高級EVメーカー」へ舵を切りつつある現実を実感した。ガソリン車はエミーラで幕を閉じ、今後は全面的に電動化するという。英国自動車業界全体も変革期に入り、ジャガーがオールEVブランドへ転換中だ。ロータスとジャガーという両雄が、この100年に一度の大変革をどう乗り切るか、今後も注視していきたい。

高級サルーンの新境地を切り拓く一台

ロータス・エメヤ Rは、従来のロータス像を塗り替える高級EVサルーンである。華やかさと品位を兼ね備えたデザイン、細部まで統一感のある洗練されたインテリア、そして快適性を優先した乗り味が融合し、大人のグランドツアラーとして成立している。車両本体価格は2268.2万円と簡単に手が届く額ではないが、Sクラス最上級モデルを検討する層にとって有力な選択肢となるだろう。EV時代に向けたロータスの第一歩として、エメヤ Rが示した意義は極めて大きい。

メルセデス・ベンツ EQS 450+

118 kWh電池で航続759 kmを実現したメルセデス・ベンツのフラッグシップEVサルーン。雲間を滑るような静粛性とSクラス級の後席快適性に加え、MBUXハイパースクリーンと妖艶なアンビエントライトが車内を非日常へと変える。走りはジェントルだが瞬発力は十分。高級ゼロエミッションを求める富裕層とテック志向層の羨望を一身に集める存在だ。

進化した乗り味――よりマイルドで快適に

最新のEQSに試乗して、昨年型と比べて“さらにマイルドになった”のではないかと感じた。すべての動きが以前よりもソフトで、快適性は一段と向上している。直前までロータス・エメヤに乗っていた影響もあるかもしれないが、それを差し引いてもEQSのしなやかな乗り味には改めて感心させられた。

音の演出は適度に進化

EQSはEVでありながら、ドライバーの感性に訴えるサウンド演出を取り入れている。メルセデスはこの分野に積極的だが、最新モデルでは初期よりもやや控えめになり、洗練を感じさせる仕上がりだ。アクセルを踏んだときのフィードバックは重要であり、その表現を最適化し続ける姿勢が興味深い。

大幅に向上した航続距離

今回のハイライトは、バッテリー容量を118 kWhへ拡大した結果、一充電あたり国内トップクラスとなる759 kmの航続距離を実現した点である。長距離移動に伴うストレスがさらに軽減され、EQSが持つグランドツアラーとしての資質が一層強化された。

伝統と革新が融合したデザイン

フロントフェイスにはガソリン車由来の伝統的モチーフが加えられた。グリルに桟を設けることで往年のエンジン車を想起させ、内燃機モデルに慣れ親しんだユーザーでも違和感なく受け入れられる表情に仕上がっている。

内装は極上のラグジュアリー空間

キャビンに足を踏み入れると、高級ホテルにいるかのような上質な雰囲気に包まれる。マッサージ機能付きシートをはじめ、ホスピタリティを感じさせる装備が満載で、夜間にはアンビエントライトがクラブのような華やかさを演出し、非日常感を高めてくれる。

助手席ディスプレイが標準装備に

今回のマイナーチェンジでは、従来オプションだった助手席用ディスプレイが標準装備となった。テクノロジー好きには嬉しいポイントであり、同乗者の体験価値を確実に引き上げている。

さらなる洗練を遂げた究極のEVラグジュアリー

乗り心地は依然として高級車そのもので、特に発進直後の“フワッ”としたタッチはメルセデスらしさを鮮明に示す。走りの上質さ、デザインの完成度、快適性、そして最先端の技術が高いレベルで融合し、EQSがラグジュアリーEVの頂点に君臨する一台であることを改めて実感させられた。

シボレー・コルベット コンバーチブル

ミッドシップ化で走りを磨きつつ、ロングホイールベースと電動屋根でGT的快適性も備えた大人のアメリカンスポーツ。1000万円強でスーパーカー体験を提供してくれる、アメリカンスポーツの象徴だ。

乗り心地 ― ライバルを凌ぐ快適性

コルベット コンバーチブルに試乗し、まず驚かされたのは乗り心地の質だ。2723 mmという長めのホイールベースが安定感を生み、近年のスポーツカーやスーパーカーの中でもトップクラスの快適性を実現している。標準グレードゆえマフラー音は控えめで落ち着いた印象にとどまりつつ、アクセルを踏み込めば心地よいエキゾーストノートが後方から響き、大人が楽しめるスポーツカー像を見事に描いてみせる。

洗練された運転体験

コルベットは伝統的なアメリカンスポーツのブランドでありながら、そのキャラクターを大きく進化させた。最新モデルは驚くほど乗りやすい。フェンダーの峰が視認しやすく車両感覚をつかみやすいことに加え、センターコンソールのスイッチ類を縦一列に配置したコックピットは操作系が手の内に収まり、慣れれば極めて使い勝手が良い。四角いステアリングも実際に回せば自然で違和感を覚えない。

走行性能 ― バランスと精緻さの進化

最新型のコルベットは“パワーで押し切るアメリカンスポーツ”という従来のイメージを刷新し、緻密な制御によって高い安定感を実現した。最新世代が手に入れた“洗練”の証だ。

洗練されたアメリカンスポーツの新境地

コルベットは荒々しいイメージを脱ぎ捨て、快適な乗り心地と刺激的なサウンドを高次元で両立させた。視認性の高さ、合理的なインテリアレイアウト、扱いやすいハンドリングが相まって、日常でも気負わず楽しめるスポーツカーへと進化している。従来の“ドッカンパワー”一辺倒から、“洗練されたハンドリングと快適性”を兼ね備えた新時代のコルベットへ――ブランドの進化を象徴する一台である。

BYD シール RWD

洗練されたデザインとナッパレザー内装をまとった電動スポーツセダン。静粛かつ俊敏で航続も十分、補助金を差し引いた後の車両本体価格は400万円台前半相当と破壊力大。高級車の質感を普及価格で提供する“新興プレミアム”として市場の話題をさらっている。

エクステリア ― 洗練されたプレミアムデザイン

シールの外装は流麗なフォルムにせり出すドアハンドルを組み合わせ、高級車の雰囲気をまとっている。ハンドル部分にはBYDのロゴが刻まれ、細部へのこだわりが伝わる。価格帯を考えると、この上質さは驚きを禁じ得ない。見た目の華やかさにとどまらず、ナッパレザーをまとったシートが触感でも高級感を演出し、乗員の期待に応える。

走行性能 ― 軽快でスポーティなハンドリング

ハンドルを握った瞬間、シールは「Eスポーツセダン」を名乗る資格を示してくれる。軽快なステアリングとEV特有の静粛かつ鋭い加速が調和し、ドライビングに爽快感をもたらす。高速域ではわずかな修正舵が必要だが、全体としては高いバランスを実現している。

インテリアと装備 ― 上質素材と先進技術の融合

キャビンに足を踏み入れると、ナッパレザーの柔らかな質感と上質な座り心地が迎えてくれる。オーディオにはDYNAUDIOを採用し、音響面でも妥協がない。音声認識の精度が高く、車内操作のストレスを軽減する点からも、BYDの技術がうかがえる。

コストパフォーマンス ― 補助金適用で圧倒的な価格競争力

シールの魅力の一つは、その価格設定だ。フル装備で528万円というプライスタグは、同クラスの欧州EVと比較しても圧倒的なコストパフォーマンスを誇る。国のCEV補助金(2025年度)は45万円。東京都の独自補助は区分により変動するが、個人の場合は最大約60万円が追加されるため、実質価格が400万円前半となるケースもある。

高級感とスポーツ性能を兼ね備えたEVセダン

デザイン、走行性能、インテリアの質感、価格のいずれもが高い次元でバランスし、シールは完成度の高いEVスポーツセダンとして仕上がっている。直進安定性に若干の改善余地は残るものの、補助金適用後の実勢価格を考えれば、この価格帯で最も魅力的な一台と言える。

メルセデスAMG CLE 53 4MATIC+ カブリオレ

直6ターボ+ISGが奏でる厚みあるサウンドと俊敏なステアリングを備えた4座オープンGT。スポーツカーの刺激を抱えつつ、快適装備と高剛性ボディで日常も優雅にこなす高級“オールインワン”。「クーペもロードスターもサルーンも一台で」というプレミアム層の関心を集めている。

エンジン始動から伝わるISGの滑らかさ

運転席でスターターボタンを押すと、驚くほど静かにエンジンが目覚めた。ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)がオルタネーターを兼ねる構造により、クランキング時の振動と音を抑制している。メーターパネルを見なければ始動を認識できないほど滑らかで、路上に出る前から上質さを実感した。

V8を思わせるエキゾーストノート

3.0 L直列6気筒ターボながら、排気音はV8を想起させる低く厚みのあるサウンドを奏でる。AMGの入念なチューニングによって「53」の名にふさわしい重厚感を確保した一方、耳を劈くほどの刺激は控えており、長距離でも疲れにくいバランスに仕立てられている。

乗り心地と高いボディ剛性の両立

走り出してすぐ感じるのは、メルセデスらしい快適さだ。サスペンションはソフト過ぎずハード過ぎず、中速域から高速域まで一貫して落ち着きがある。低速トルクは十分で、街なかでもストレスを覚えない。カブリオレとしてはボディ剛性が高く、ねじれや振動の伝達は皆無に近い。長年オープンモデルを熟成させてきた技術力の賜物といえる。

大人4人が快適に座れる室内空間

2+2レイアウトでありながら後席の膝まわりとヘッドクリアランスには余裕がある。若干バックレストが立ち気味ではあるが、小柄なパッセンジャーなら小旅行でも不満は生じにくいだろう。ラグジュアリークーペとしての実用性がしっかりと確保されている。

AMGならではのステアリングフィールと足もと

ステアリングから伝わる剛性感はAMGらしく濃密で、コーナリング時の安心感が高い。装着タイヤはミシュラン・パイロットスポーツの最新世代S5で、現在もっとも高い評価を得ているモデルだ。サスペンションとのマッチングが良好で、路面の荒れを巧みにいなす一方、高速域では確かなグリップを発揮する。車内に漂う上質な香りも相まって、五感でラグジュアリーを味わえる仕立てだ。

直6ターボが奏でる極上クーペ体験

街なかで他車と並ぶと、CLE 53 4MATIC+のフロントマスクは迫力を示しながらも気品を失わない。走行性能、快適性、実用性のバランスが際立っており、1台で多彩なシーンをこなせる完成度を備えている。もしガレージにこのクーペとSUVを組み合わせれば、日常から長距離旅行まで不自由なく楽しめるはずだ。価格はプレミアムだが、支払った分の価値を確実に返してくれる――それが「さすがメルセデスAMG」と評される所以である。

ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ

クーペ風スタイルを纏うハイブリッドSUV。1.5トン未満の軽量ボディと独自ハイブリッドシステムで走りは軽快、後席と荷室の実用性も確保。欧州では“手頃に走りを楽しめるファミリーカー”と評され、デザインとコストパフォーマンスを重視する層から注目を集めている。

スポーティな走りと快適性のバランス

試乗車は「エスプリ アルピーヌ」仕様で、足元には19インチホイールを装着している。このサイズが乗り味に影響し、路面からの入力をしっかり伝えつつも、適度なしなやかさを残して快適性との折り合いを付けていた。ルノー独自のドグクラッチ式ハイブリッドも搭載され、メカ好きの心をくすぐるだけでなく、燃費面でも優れた数字を実現している。

ルノーらしさが色濃く残る

ステアリングを握ると、昔から続くルノーの思想が今も息づいていると感じる。最新のハイブリッド技術を組み込みながら、ガソリン車ならではの走りの心地よさを大切にしており、そのこだわりがドライバーに伝わる。車重は1.5トン未満に抑えられ、サイズのわりに軽量に仕上がったことで運動性能を確保。リア剛性を高めて積載性とのバランスを整え、装備は必要最小限にとどめている。90年代フランス車や往年のゴルフを彷彿とさせる「シンプルで実用的」な哲学が見え、機能性を重視する姿勢に好感を持った。

走りの楽しさと惜しい価格設定

アルカナはシンプルで実用性に優れる一方、シフトレバーの操作感に懐かしい味わいがあり、現代技術と過去の魅力がきれいに融合している。ただ、価格がもう少しこなれていれば、かつてのゴルフのような立ち位置を確立できたかもしれない。フランス車特有のクセは少なく、作り込みは丁寧で、ハマる人には深く刺さる一台だ。

懐かしさと革新が融合するクルマ

突出した派手さこそないものの、アルカナは軽い車重ゆえに路面のフィードバックを素直に伝え、ハンドリングも癖がなく扱いやすい。気負わずに乗れるスポーティモデルとして、多くのユーザーに魅力的な選択肢となるだろう。今のルノーがどこへ向かおうとしているのか、その片鱗を感じ取れる興味深い一台だった。

写真:J.ハイド

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