子どもに干渉しすぎて自立を阻害する「ヘリコプターペアレント」になってない? 過保護にならないための対処法
子どもの成長を願う親心が、逆効果になることがあるって、ご存知ですか?
最近、「ヘリコプターペアレント」という言葉をよく耳にします。これは、ヘリコプターがホバリングするような形で上から子どもを見張り、子どもがつまづきそうなリスクがあったら急降下して排除してしまう、自分で判断できる年齢になっても子どもに逐一関わり続ける親を指す言葉です。
サッカーの現場でも常に子どもの近くにいて動きを監視し、着替えを手伝いにチームのテントに入ってきたり、子どものすべてを把握しようとするような存在を見聞きします。
この問題について、長年、子育て相談に携わってきた心理カウンセラーのあさくらゆかりさんに話を聞きました。サッカーを題材に、子どもの自立を促す具体的な方法を紹介します。
(取材・文 鈴木智之)
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■子どもの行動を監視し何かあったら急降下「ヘリコプターペアレント」とは
子どものサッカーを応援したい。サポートしたい。もっと上手くなってほしい! など、子を思う気持ちから、ときに過保護や過干渉になってしまう......。
それが「ヘリコプターペアレント」と呼ばれる行動に現れてしまうことがあります。
ヘリコプターペアレントとは、常に子どもの周りを飛び回り、不都合なことがあったときに急接近して干渉する姿が、ヘリコプターに似ている様子を表した、アメリカ発祥の言葉です。
サッカーの現場だと、子どもたちに自立を意識させたいと遠征の引率人数が決まっているのに「心配だから」と親がついてきて身の回りのことを世話するなど、子どものすべて把握したい親御さんが増えているという声を聞きます。
中には、保護者エリアが決まっているのにベンチの後ろ、コーチのすぐ後ろに立ち指示を聞き漏らすまいとして、休憩中に我が子にダメ出しする親までいるとのこと。
■過保護・過干渉になる親の心理
心理カウンセラーのあさくらゆかりさんは「親御さんの思い自体は素晴らしいものです。でも、その思いが強すぎるあまり、親御さんの行動が、お子さんにとってマイナスになっていないか。立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません」と、優しく語りかけます。
そもそも過保護、過干渉になる親の心理として
・我が子可愛さゆえ
・親としての責任感(きちんと育てなければ、という重圧)
・自分の夢を子どもに実現させる、子どもは親の育児の成果(優秀な子を育てた自分の価値が上がる)
といったものが考えられるのでは。と教えてくれました。
■自分ではなく親の価値観で物事を決める「インナーペアレント」とは?
「子どもの側からすると、親が近くで見ているだけでも『心理的に干渉されている』というストレスがあるのに、何かあったときに急接近してきて干渉するとなると、物理的なストレスにもなりますよね」
さらに、こう続けます。
「私がカウンセリングをお受けしたケースで、成人したお子さんが、親にされた行動で辛かったと言うのが、過保護、過干渉です。
小さい頃から、親が子どもの決定に口を出したり、何でも親が決めてしまうことで、お子さんの中に『自分の親なら、こう言うだろう』という思考が生まれ、自分ではなく、親の価値観で物事を決めるようになります。
それを『インナーペアレント(自分の中にいる親)』というのですが、その思考が強制力を持っていたり、価値観が社会に合致してない場合、お子さんは非常に生きにくくなってしまいます」
この状態が続くと、お子さんにとって、ネガティブな影響が出てしまうことは明らかです。
「そうならないために思春期や反抗期があるのですが、そこをうまく通れなかったお子さんはかわいそうです。反抗する機会さえ作らせてもらえないほど、常に見張っていて、何かあったらすぐ親の方から来る。そして、親が提案したことに反抗させない。そうなると、反抗期として成立しないですよね」
■ヘリコプターペアレントの弊害
あさくらさんはヘリコプターペアレントの弊害として、次の要素を挙げます。
・年齢に合った自立心
・自律心を持つことが難しい子どもになる
・問題解決能力を身に付ける機会が減ってしまい、依存的な子どもになる
・自己決定ができない
・他人の評価を過剰に気にする
特にサッカーのような団体競技では、自立心や問題解決能力が重要です。「一流のサッカー選手で、問題解決能力が低くて、依存体質がある人っていないですよね」というあさくらさんの言葉は、とても示唆的です。
■ヘリコプターペアレントにならないために
では、ヘリコプターペアレントにならないために、どうすれば良いのでしょうか。あさくらさんは、具体的な対策を提案してくれました。
「例えば、練習の準備をいつも親御さんがしているのであれば、お子さんに任せてみるのもいいかもしれません。ほかにも、新しいソックスを買うといったときに、お子さんに選ばせてみましょう。
いつもお母様が準備したり、選んでいるのであれば、お子さんは戸惑うかと思いますが、『自分でやってみる?』『自分で選んでみる?』と聞いてみましょう。そのときに、お子さんが喜ぶか、嫌がるかを見ていただきたいです」
このときに、お子さんが「自分ではできない、決められない」「面倒だから、お母さんがやって」と言ってきたら、危険信号かもしれません。
「お母様の提案に対して、お子さんが『うまくできるかな』『やってみたいけど不安』というのはOKだと思います。そこで『じゃあ一緒にやろうよ』とふたりでやることで、やり方がわかったり、自信がつき、次からはひとりでできるようになるかもしれません」
■子どもの問題解決能力を阻害しているか、他責思考にしてしまっているか確認する方法
日常生活の中にも、親の関わり方によって、子どもの問題解決能力を阻害していないか、他責思考になっていないかを測る方法があります。
「例えば、食事のときに、お味噌汁を洋服や床にこぼしてしまったとします。基本的に大人が『シャツを脱ぎなさい』『雑巾で拭きなさい』など、解決方法を提示しますよね。
でもそこで、親御さんの方から『こぼしちゃったね。どうしようか?』と言って、お子さんに問題を解決する能力があるのか、見てみるのはいかがでしょうか」
問題解決の具体的な方法を思いつくのか、その手順に沿って解決できるのかを、見てみる作戦です。
「そこで、呆然として何もできなかったらまずいですよね。反対に、急いで行動してくれたら、その子に問題解決能力が備わっていると言えます」
■サッカー上達のために必要な思考力、問題解決能力は、チームだけでなく家庭でも育てられる
サッカーが上手くなるためには「自分で考え、ピッチ上の問題を解決する能力」が必要です。それはサッカーの時間だけでなく、日頃の親の関わり方からも育むことができます。
過保護・過干渉は止めて、お子さん自身に考えさせ、決断させる。その繰り返しが、ピッチ内外で、自立した人間へと成長していくための、大切なことと言えるでしょう。
次回の記事では「ヘリコプターペアレントにならないための、親の心構え」について、あさくらさんに解説していただきます。
あさくらゆかり
公認心理師・心理カウンセラー
一般社団法人日本ライトカウンセリング協会代表理事、株式会社kikiwell所属カウンセラー・統括責任者
幼稚園教諭・保育士・公立小学校学級支援員を経て心理カウンセラーに。2007年1月より(株)kikiwellが運営するキキウェルメンタルヘルスサービス(旧:聞き上手倶楽部)に所属。ライトカウンセラーとして活動開始。「聞ける人ほどうまくいく」をスローガンに、カウンセラー養成講座の講師を務めている。また「聞かせて下さい、あなたのお話」、このひとことを熱く胸に抱え(株)kikiwellで電話カウンセラーとしても活動している。
【カウンセリング実績】
キキウェルメンタルヘルスサービスのカウンセラーとして 17年間で、のべ14000件以上の電話カウンセリング、3600件のメールカウンセリング実績。最長連続カウンセリング11時間。
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