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ルールやマナーに強いこだわり、予定変更でパニック!発達障害息子の気持ち、どう受け止める?【専門家アドバイスも】

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ルールやマナーに強いこだわり、予定変更でパニック!発達障害息子の気持ち、どう受け止める?【専門家アドバイスも】

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

ルールを守るのは正しいこと。でも、こだわりすぎてトラブルのもとに……

ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けている息子のトール。特性のひとつなのか、「ルールを守ること」に対して独自のこだわりがあるように感じます。トールがこだわるルールというのは、一般的な交通ルールや、学校での決まりごとなどで、ポイ捨てをしないことや物を大切に扱うなどの倫理的なものも含まれます。

それらのルールを守るのは正しいことなのですが、過剰に反応してしまって対応に困る場合もあります。例えば、見ず知らずの人が横断歩道ではない道路を横断しているのを見かけた時、相手が大人でも関係なく注意しようとします。

知らない人にむやみに注意しようとするのはやめてほしいと思うのですが、見て見ぬふりを推奨してしまっていいものかと、かなり悩んだ時期もありました。でも、注意した相手が怒ってしまったり、万が一にも危害を加えられないとも限りませんので、やはり知らない人に注意するのはやめるよう話しています。

学校でも、ランドセルを雑に扱っているクラスメイトを注意して揉めたことがありました。その子本人のランドセルなので、トールやほかの子が何か被害を受けたわけではないのですが、ランドセルは大切に扱わないといけないとトール本人が思っているのでしょうか。口を出さずにいられなかったようです。

特別支援学級の先生とも話して、もしどうしても何か注意したいことがあったら、それは大人がやることだから、先生や親に言うようにしてほしいと伝えました。トラブルの回避のためにも、そのようにしてほしいと思っています。

これも「こだわり」の特性だった?予定変更で大泣きしていた幼少期

またルールとは少し違うのですが、トールは診断を受ける前の小さい頃から、予定を変更することが苦手でした。特に楽しみしている予定だとなおさらで、急にキャンセルになってしまうとなかなかそれを受け入れることができず、大泣きして予定通りに行動しようとしていました。そんなことがあったので、いろいろな予定は前もって伝えず、当日になって確実に行けることが分かってから、トールに伝えるようにしていました。

例えばお友だちと遊ぶ約束があっても、集まるメンバーの誰かが体調を崩す可能性もあるのでトールには伝えず、当日みんな元気で集まることができるのを確認してから伝えていました。

そのように、トール本人の中で「遊ぶ予定」を決定事項にしてしまうと、変更するのにすごくストレスを感じていたようでしたので、予定変更をできるだけなくすように声かけに気をつけていました。

成長とともにこだわりが和らいできたと思っていたけれど……!?

今は小学6年生になったトール。成長とともに、キャンセルも仕方ないこともあると理解したのか、大泣きするようなことはなくなってきました。そのため、もうこだわりはなくなったのかな?と思い、予定は事前に伝えるようになってきていました。しかし、先日久しぶりに、急なキャンセルに抵抗感を示したことがありました。

わたしが風邪をひいてしまい、家族でのお出かけの予定の日に治りきらず、来週に延期しようという話をした時でした。トールが楽しみにしていた予定だったので諦めきれなかったのか、どうしても今日行きたいと言われました。なぜ今日じゃダメなのか分からないという様子でした。

わたしの体調ももう治りかけていたので、行けそうに見えたのかもしれません。治りかけとはいえまだ楽しくお出かけできる体調ではないと話し、誰かの体調が悪くなった時に、延期できる予定ならほかの日に変更するというのは一般的な行動だということを説明しました。普段は、私や家族の誰かが体調不良の時はとても気遣ってくれるので、少し驚いた出来事でした。

成長とともに予定変更を受け入れられるようになったと思っていましたが、実は本人の中では、まだまだ大きなストレスを感じていたのかもしれません。同様に、他人の破る「ルール」に対してもストレスを感じているとすると、トールが日々感じているストレスはわたしの想像以上なのかもしれないと改めて考えました。

ルールや決まりごとを守る姿勢は素晴らしいので、ぜひ大切にしていってほしいものの、それが破られることへの葛藤とどう折り合いをつけていくか、これからの課題なのかなと感じています。

執筆/メイ

(監修:初川先生より)
トールくんのルールやマナーへのこだわり、急な予定変更の苦手さのお話をありがとうございます。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにはよく見られる様子なので、共感的に読まれた方も多いと思います。

ルールやマナーへのこだわりは、メイさんがされたように、「注意するのは大人(先生)の仕事」として、大人(先生や保護者)に伝えるようにしていくことが多いかなと思います。ダイレクトに注意をした際に、残念ながら自身が危険な目に遭う可能性や、トラブルに巻き込まれる可能性もあります。急な予定変更が苦手なお子さんに関しては、「直前に知らせる」「変更の可能性もあらかじめよく伝えておく」など、お子さんの発達段階や理解度に応じてさまざま工夫できそうですね。

さて、ルールやマナーへのこだわりも、予定変更の苦手さもそうですが、本人の気持ちを大人側が受け取っているよということを伝えたいところでもあります。「ランドセルを雑に扱っているのを見ると、悲しくなっちゃうね(・イライラしちゃうね)」、「楽しみにしていた予定だから、今日行けないのは、仕方がないと分かるけど、でも悲しいね」など、お子さん本人の気持ちをあえて言語化して、その気持ちは受けとめているよ、と伝えたいところです。こだわりやパニックなどが生じると、どうしても周りの大人はその事象に「対処」してできるだけ早く収めようとしてしまいます。もちろん対処も予防も大切です。しかしながら、こだわりやパニックが生じるほどに、お子さん本人に湧きあがる強い気持ち自体は悪いものではなく、そしてそれは伝わっているよ・その気持ちは受け止めるよと伝えてあげたいなと感じます(もちろん、それどころではない時もあると思います。大人側の気持ちに余裕があるときからぜひと思います)。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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