米軍基地で麻薬の密輸が急増する背景に「日米地位協定」…摘発は前年同期比4.9倍
日本の郵便局を経由しない米軍の「非公用軍事郵便」を利用し麻薬を密輸したとして、九州厚生局沖縄麻薬取締支所は今月27日までに沖縄・嘉手納基地などに所属する米兵の男女9人を麻薬取締法違反容疑で書類送検した。沖縄では近年、非公用軍事郵便を利用した麻薬の密輸が急増しており、その背景には「在沖米軍人の規範意識の低さ」(県警担当記者)が関係しているという。
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「9人が密輸した合成麻薬『MDMB-4en-PINACA』は日本では2021年、米国でも昨年5月から麻薬指定されていますが基地内で流行。送検された9人は米国の通販サイトで麻薬を購入していましたが、『違法だとは思わなかった』と容疑を否認しています」(同前)
日米地位協定に基づき税関の検査を免除されている公用軍事郵便と違い非公用軍事郵便は税関の検査対象となる。密輸された麻薬を発見した沖縄地区税関の担当者は、「今年の摘発量は上半期ですでに昨年を上回っています」と説明する。
「24年上半期において非公用軍事郵便物からの麻薬の摘発は49件。前年同期比4.9倍となっています。そのうち44件は今回、書類送検された合成麻薬と同様のもので、その多くが小包などで密輸されています」
同税関によると、「現在のところ密輸された麻薬は個人使用が目的で、転売等は確認されていない」というが、前出の県警担当記者は次のように懸念する。
「米軍人にも非公用軍事郵便が検査対象なのは周知されています。にもかかわらず、違法な薬物を密輸していることからも一部米軍人の規範意識の低下が見て取れます。今のところ、密輸された麻薬が基地外へ流出したり、麻薬絡みの犯罪は起きていませんが、今後も起こらないとは限りません」
16歳未満と知りながら昨年12月、少女をわいせつ目的で誘拐、不同意性交を行ったとして米空軍兵長が起訴されるなど、在沖米軍絡みの事件は相次いでいる。沖縄地区税関は米軍に対し、「綱紀粛正を呼びかけ取り締まりを強化している」という。