同じ症状名でも特性の現れ方は人によって違う。生きづらさを軽減し克服するために大切な事とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】
症状名だけで特性は決まらない
ひと口に発達障害といっても、それによって現れる特性はさまざま。たとえば「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断された人のすべてが「場の空気や人の表情を読むのが苦手」「人とのコミュニケーションが上手にできない」といった特性を必ずしも持っているわけではなく、人によって特性の現れ方や程度の強弱は違っているのです。相互のコミュニケーションが難しい子どもがいる一方で、呼びかけに応じたり、自分から積極的に話しかけたりできる子もいるので、単純に症状名だけで「この子はこういう特性がある」と決めつけてしまうのは避けるべきでしょう。たとえるなら、双子やきょうだいでもそれぞれに個性があり、性格が違っているのと同じことなのです。
また、発達障害に見られる特性のいくつかは、成長とともにその程度が弱まり、次第に目立たなくなっていくこともあります。療育などを通じてさまざまな経験を積み、社会のルールに触れることで、その時々の状況に合わせた好ましい身の振る舞い方、適切な発言の内容などを学び、次第に適応できるようになっていくのです。
成長や経験によって特性自体が消えてなくなることはありません。しかし、毎日の生活の中にある困りごとを周囲の人々がサポートし、社会のルールをわかりやすい形で示してあげることで、子どもの適応力は育っていきます。ひいてはそれが生きづらさの軽減にもつながっていくのです。
【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊
監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。