4月に「出生後休業支援給付金」が創設 男性育休取得をあと押し、企業の取り組みが加速
共働き・共育ての推進を目的に、改正雇用保険法が2024年4月1日より施行され、「出生後休業支援給付金」が新たに創設される。これは、子の出生直後の一定期間内に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合に、最大28日間の給付率を現行の67%(手取り8割相当)から80%(手取り10割相当)に引き上げる制度だ。
こうした制度改正を背景に、企業による男性育休取得の促進が進んでいる。ポッカサッポロフード&ビバレッジ、日本生活協同組合連合会(日本生協連)、デジタルホールディングスの3社は3月26日、それぞれの男性育児休暇に関する実績や取り組みを発表した。
ポッカ、社内イントラで育休取得事例を共有 初の男性育休率100%を達成
ポッカサッポロフード&ビバレッジ(愛知県名古屋市)は、2024年末に男性社員の育児休業取得率が初めて100%に達したと発表した。同社では、仕事と育児・介護・治療の両立を支援する制度や取り組みを通じ、安心して働ける職場環境の整備を進めている。
育児休業制度は、子どもが3歳になるまで取得可能。さらに、小学校6年生の年度末まで時短勤務や深夜業の制限が利用できるなど、独自制度を2013年から本格導入している。
取得促進策として、育児休業の対象者に祝い品を贈るほか、社内イントラネットで他部署の取得事例を共有。対象者だけでなく周囲の理解も促し、育児休業を取得しやすい企業風土の醸成を図っている。
日本生協連では職員同士で子供用品の交換会
日本生協連(東京都渋谷区)によると、2024年の男性職員の育児休業取得率は84.2%となった。2016年から開始された社内調査では、同年比で取得率が80.6ポイント増加している。配偶者の出産後1か月以内に最大3日取得できる有給の「特別休暇」を含めると、実質的な取得率は100%に達している。
背景には、2022年10月1日に施行された「育児・介護休業法」改正による「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度の導入や、独自の取り組みがある。
同会では、子ども用品のリユースを目的とした交換会「サンケンおさがりクラブ」を実施。2024年には40人以上が参加し、120点以上の品がやり取りされ、職員同士の交流促進にもつながっている。
デジタルHDでは、給与支給の「チャイルドケア休暇」を制度化
デジタルホールディングスも、2024年1月から2024年12月の男性育休取得率が100%を達成したと発表。背景には、同社が独自に導入した「チャイルドケア休暇」の浸透があるという。
「チャイルドケア休暇」は、配偶者の出産前6週から出産後8週の間に、最短10日・最長20日間の休暇を取得できる制度で、休暇中は給与が全額支給される。休暇後のスムーズな職場復帰も支援する仕組みとなっている。
また、同社は「チャイルドケア休暇」の取得率100%達成に向け、必要な情報提供のフローを整備。社内での育児休業の重要性や制度浸透を促進するため、申請フローの構築、無意識バイアス研修、プレパパセミナーなどを実施している。
そのほかにもパパメンター制度、Slackでのパパチャンネルグループの開設、休暇・休職前面談の実施など、さまざまな活動に継続的に取り組んでいる。
ポッカサッポロフード&ビバレッジ、日本生協連、デジタルホールディングスの各社による男性育休支援の取り組みは、それぞれの企業文化や人材戦略と連動している。少子化対策や働き方改革が社会的課題となる中、制度と企業の工夫が両輪となる形での浸透が今後も期待される。
ポッカサッポロフード&ビバレッジの発表の詳細は同社公式リリースより、日本生協連は同会公式リリースより、デジタルホールディングスは同社公式リリースより確認できる。