院内学級 夢の木展(2025年3月17日~26日開催)~ 倉敷中央病院内の院内学級に関わる人たちの「生の声」が見られる作品展
「子どもは風の子」とは言いますが、病気や怪我をする可能性は誰にでもあります。時には、入院を余儀なくされることもあるでしょう。そのような期間に、子どもたちの教育を保障する場のひとつに院内学級があります。
院内学級とは、ケガや病気のため、入院しなければならない児童・生徒のために病院内に設置された、病弱・身体虚弱特別支援学級のことです。
倉敷市には、以下の二つの院内学級が設置されています。
・公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
倉敷市立倉敷東小学校および倉敷市立東中学校の院内学級
・川崎医科大学附属病院
倉敷市立庄小学校および倉敷市立庄中学校の院内学級
新型コロナウイルス感染症拡大対策なども落ち着きはじめ、ボランティアなど院外の人たちとの関わりが再開している倉敷中央病院では、院内学級の取り組みやそこに関わる人たちの「生の声」を見られる作品展が開催されています。
倉敷中央病院とは
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院(以下、「倉敷中央病院」と記載)は、倉敷駅から徒歩15分程度の場所に位置する民間総合病院です。
創立者は、倉敷美観地区にある大原美術館と同じ大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)。倉敷市中心部には公立の総合病院がないため、地域の人たちにとって市民病院のような存在です。
高度医療を担う急性期基幹病院としての機能のほか、総合周産期母子医療センターも設置されていることから、倉敷市民のみならず岡山県全域、さらには専門的な治療を必要とする近隣他県の患者さんの治療も行っています。
倉敷中央病院 院内学級 とは
倉敷中央病院の小児科病棟には、院内学級が設置されています。
小学校は倉敷市立倉敷東小学校、中学校は倉敷市立東中学校の特別支援学級という位置付けです。
このため、院内の特別支援学級を利用する児童生徒は、院内学級に通う期間の転入手続きを経て入級します。
児童生徒は治療や検査を優先しつつ、各教科の学習を進めます。内容は、入院前に在籍していた学校の教科書や教材に沿った内容で、中学生は入院前の在籍校から問題を取り寄せて定期考査や実力考査も実施するそう。
また、特別支援学級にあたるため、特別支援教育特有の活動として自立活動の時間もあります。倉敷中央病院は「元気の時間」と名付けており、子どもたちが一堂に会してなかよく交流を深められる活動をしているそうです。
自立活動
個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う。(文部科学省)
院内学級 夢の木展
「院内学級 夢の木展」は、倉敷中央病院の院内学級で学ぶ児童生徒の作品と、院内学級に関わる人たちのメッセージが掲示された作品展です。
倉敷中央病院一階のセントラルパーラーで、2025年3月17日(月)~26日(水)まで開催されています。
病院内で開催されている作品展ですが、一般のかたも入場可能です。感染症対策のため、マスクを持参し鑑賞しましょう。
3月18日(火)お昼過ぎに作品を鑑賞してきたので、そのようすを紹介します。
院内学級で学ぶ児童生徒の作品
院内学級では、国語や算数だけでなく音楽や図工などの実技教科を学ぶ時間も保障されています。
「院内学級 夢の木展」では、図工や美術の時間だけでなく「元気の時間」(自立活動)で制作された作品の一部を展示されていました。
院内学級に在籍する児童生徒のなかには、長期間病棟から出られない子どももいます。そのような子どもたちが、院内にいながらも体験できる活動を多く取り入れているのも、院内学級の特徴のひとつ。
子どもたちが作った作品は、どれも豊かな表現かつ繊細なものばかり。つい、見入ってしまいます。
院内学級に関わる人たちのメッセージ
「院内学級 夢の木展」の企画は、院内学級の先生ではなく、倉敷中央病院内外のさまざまな人たちに院内学級の存在を知ってほしいとの想いで開催が実現したとのこと。
こちらのメッセージが書かれた木は倉敷中央病院で制作されたものです。
桃色の花びらは院内学級を卒業した子どもたちやその保護者、緑色の葉っぱは院内学級に関わる医師や教員、そして所々にある鳥は作品を鑑賞した来院者からのメッセージ。
卒業生やその保護者にとって院内学級がどのような存在だったのか、院内学級にどのような人たちが携わっているのかが一目でわかる展示になっています。
展示終了後は、小児科病棟での展示も検討しているとのこと。院内学級で頑張る子どもたちやその保護者へのエールの言葉や展示への感想を、募集中です。
倉敷中央病院 担当者へのインタビュー
「院内学級 夢の木展」を企画した、倉敷中央病院ボランティアコーディネーターの三宅優子(みやけ ゆうこ)さんに話を聞きました。
──「院内学級 夢の木展」の企画意図を教えてください
三宅(敬称略)──
当院では、院内学級の子どもたちの学習の軌跡を、外来一階の「医療情報の庭」近くの掲示板で常時展示しています。
今回の会場よりも小さい掲示板での展示ですが、内容は大変好評で来院者から「元気をもらえた」「院内学級の子どもたちを応援している」といったメッセージが多数寄せられています。
そのため、以前から院内学級の子どもたちの作品をもっとたくさんの人たちに見てもらいたいと思っていました。
会場のセントラルパーラーは来院者が集う広場で、定期的にイベントも開催される場所です。院内学級の存在や教育活動を周知するのに適した場所だと考え、企画しました。
病弱・身体虚弱児のための院内学級は、倉敷中央病院を含めて倉敷市内に二か所。岡山県内でも六か所しかないため、認知度は高くありません。
また、当院は総合病院のため、生まれたての赤ちゃんから高齢者までさまざまな人が来院する病院です。そのため「院内学級」の存在は知っていても、どのような教育活動がおこなわれているのか知らない人もいます。
より多くの人に院内学級の取り組みを知っていただければと思っています。
──見どころを教えてください
三宅──
院内学級の子どもたちが制作した作品は、どれも素敵なので一つひとつじっくりと見てほしいです。子どもたちの作品は、院内学級の先生たちに選んでもらい展示しています。
また、倉敷中央病院として制作したのは、院内学級に関わる人たちの生の声を集めたメッセージの木です。
院内学級卒業後も当院に通院している子どもたちやその保護者、院内学級に携わる医療スタッフや先生がたにメッセージを依頼しました。院内学級に携わっている人たちの顔を思い浮かべてもらえたらと思い、許可をいただいたかたの職種やお名前も記載しています。
こちらも、一つひとつ読んでいただきたいです。
──ボランティアなども積極的に受け入れているのですね
三宅──
普段院内で過ごす子どもたちには、院外の人と関わる機会も積極的に保障したいと考えています。さまざまな人と交流することでリフレッシュにもなりますし、学びも深まると思うので。
ボランティアスタッフは、今回の作品展にある絵手紙の制作や読み聞かせの活動などをしています。新型コロナウイルス感染症拡大対策期間はオンラインでおこなっていましたが、対面での活動にはかないません。
現在は、感染症対策を講じつつ、積極的にボランティアを受け入れています。興味のあるかたは、ぜひお声がけください。
ボランティアスタッフのなかには、院内学級の卒業生もいます。病院のスタッフよりも院内学級に詳しく、入院する子どもたちの想いも良く理解してくれる頼もしい存在です。
──開催にあたって、印象的なエピソードを教えてください
三宅──
メッセージの木に寄せられたメッセージにある卒業生の保護者のなかには、お子さんを亡くしたかたもいらっしゃいます。そのような親御さんが「卒業生の保護者」として協力してくださり、初日に展示を鑑賞しに来て、楽しかった思い出を振り返ってくれたことをありがたく思っています。
また、院内学級に在籍したことのない現役高校生が作品を鑑賞して「自分も勉強を頑張りたい」と書いてくれるなど、鑑賞者の声が続々と集まっていて。さまざまな人が鑑賞してメッセージを書いている姿がうれしくて、いつも以上にセントラルパーラーの前を通ってしまいます(笑)
会期中には会場で音楽イベントも開催されるので、引き続き展示を楽しんでいただきたいです。
──最後に読者へメッセージをお願いします
三宅──
作品を鑑賞してほしいのはもちろんですが、まずは院内学級の存在を知ってもらう機会になればと思っています。
ぜひお越しいただき、感じたことや子どもたちへのエールをお寄せください。
おわりに
「夢の木」を眺めながら三宅さんが「お刺身が食べたい!は入院患者さんの本当にリアルな声です」と微笑んでいました。
病院食に生ものは禁物。小児科病棟の子どもたちだけでなく、病院での生活を経験した人たちの「リアル」が詰まった展示になっているとのこと。
物語やドラマの世界ではなく、院内学級の生の姿が垣間見られる貴重な作品展です。院内学級に関わる人たちや在籍する子どもたちへ、エールの声がたくさん届くよう願っています。