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【受験に意味はあるのか】東京都知事選に挑んだ安野夫妻の勉強法。勉強嫌いは勉強を好きになれる?

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【受験に意味はあるのか】東京都知事選に挑んだ安野夫妻の勉強法。勉強嫌いは勉強を好きになれる?

2024年東京都知事選挙に出馬した安野貴博さん。そして、選挙演説でも注目を浴びた妻の黒岩里奈さん。おふたりとも東京大学の出身であり、安野さんは法学部、里奈さんは文学部を卒業されています。本記事ではそんなおふたりが東大を目指した理由や独自の勉強法、これからを生きる子どもたちに伝えたいことを聞きました。

東大の魅力は進路選択を先延ばしにできること

ーーおふたりがなぜ東大を選んだのかを最初に教えてください。

安野さん:私は高校生のときから情報系に興味があり、理系を選択していました。ただ、大学で情報系を選択してその道に進むことが、果たして本当にいいのかまだ確信が持てなかったんです。

そんなとき、東大は1・2年生の途中までは教養学部としてさまざまなことを学び、そのうえで進学する学部を選ぶことができる「進学振り分け制度」があるということを知ったんです。選択を先延ばしにできることに魅力を感じ、東大の受験を決めました。

里奈さん:私も進学振り分け制度には魅力を感じていました。実際に、入学時は文科二類という経済学部に進む人が多いコースに入ったのですが、結果的に工学部に進み、最後は文学部で卒業したんです。東大は興味があれば理系も文系も関係なく好きな授業を取ることができるので、東大のよさをフル活用して卒業しましたね。

安野さん:あとは、私たちが高校生の頃に『ドラゴン桜』のブームがあり、ドラマで阿部寛さんが「とりあえず東大に行け」と連呼していたことも、東大に興味を持った理由のひとつですね。

里奈さん:「バカとブスは東大に行け」と(笑)。たしかに、けっこう刺さったよね。

安野さん:阿部寛さんが言うなら間違いないという雰囲気もあったように思います(笑)。

夫婦ともにE判定からの受験がスタート

ーー東大に合格するために勉強されたと思いますが、どのような勉強を、いつ頃からしていたのでしょうか?

安野さん:私の通っていた高校は、5月にある運動会が終わると「高校生活は終わった、勉強するか」と言って、みんなが勉強し始めるような学校だったんです。逆に運動会が終わるまではみんな勉強する雰囲気ではなく、私も受験勉強を始めたのは、高校3年生の5月以降でした。もちろん5月に受けた模試ではE判定でした。

里奈さん:物理の模試で、限りなく0点に近い解答用紙を見せてくれたことがあったよね。

安野さん:物理なんて全くわからなくて、塾に行きたくても入塾も許してもらえないレベルから始まりましたから。

里奈さん:解答用紙を見てみると、大喜利みたいになっていて、答える気がないんですよ。

安野さん:いや、答える気はあったよ(笑)。でも、制限時間が90分あるのに、何を聞かれているのかも分からないから、3分でやることがなくなってしまって。やることもないし自力でいろいろと考えてみようと思って、いちゃもんをつけながら解答してみたんです。

「そもそもこの問題は成立していない可能性がある」などと解答用紙にびっしり書いたんです(笑)。でも、0点でした。「考え方には光る部分はなくはない」みたいなコメントをもらった気がします。

里奈さん:採点した人が優しい(笑)。私も高校生活は部活のことしか考えていない毎日だったので、受験勉強は部活を引退した高校2年生の秋にスタートしました。英語劇部だったので英語は得意だと思い込んでいたのですが、いざ勉強し始めたら、中学生レベルの単語も知らなくて衝撃を受けました。演劇はひたすら丸暗記なので、英語の勉強にはなっていなかったんですね。

得意だと思っていた英語ですらそんな状態だったので、私も安野と同じく塾に行きたくても入塾させてもらえませんでした。高校3年生にあがるときに初めて受けた東大模試は、もちろんE判定でした。

教科書で勉強しても50%は無駄になる。合格までの最短経路とは

ーー意外にもおふたりともE判定からのスタートだったんですね。そこからどうやって東大合格を掴んだのでしょうか。

安野さん:私の場合は、分からなくても過去問から解いていく方法を取りました。分からないなりに「こういう単語があるらしい」「どうやらこういう質問をされるらしい」と傾向が見えてくるので、それに対して必要な知識を教科書から探すような、過去問ファーストスタイルでした。

過去から傾向をつかみ必要なことだけを学習するというのが、受験勉強においては最短経路だと思うんですよね。もし教科書に書いてあることだけを覚えたとしても、50%くらいは絶対に出ないことなので。過去問経路で必要なことだけをやって、最後の1~2カ月でB判定くらいまで上がった記憶があります。

里奈さん:私は塾でも学校でも全く授業の内容が分からなかったし、そもそも机に向かって一時間集中することもできなかったので、これは独学で自分なりの方法でやるしかないと気付いたんです。残り時間が少ないなかで自分に合った勉強法は何か、と調べたり考えたりして、そこで和田秀樹さんの『受験は要領』という本と、ドラゴン桜に書いてある勉強法を愚直にやるという勉強法を選択しました。

具体的には私も安野と同じく、東大の過去問だけをやりました。ただ、東大の過去問を解けるようになるためには何が必要なのかと考えると、基礎がないまま問題集を解いても本当になんの意味もないと感じて。だから、東大の過去問を解くために、まずは中学1年生の教科書からコツコツと積み上げていきました。

あとは、2ちゃんねるで受験のスレッドがあって、よい参考書や、その参考書を終わらせるには何時間かかったとかの情報が全部あったんです。それが本当に参考になって、2ちゃんねるがなかったら東大には受からなかったと思います。

安野さん:ひろゆきさんに感謝ですね。

ーーこれまでにもご夫婦で受験の話をしたことがあると思いますが、お互い自分とはスタイルや考え方が違うと思ったことはありますか?

安野さん:同じドラゴン桜世代で、最初はE判定からギリギリ合格した組としては、スタイルはけっこう近かったと思います。ドラゴン桜で紹介されていた『DUO3.0』という単語帳をお互い使ったりもしていたので。DUO3.0は単語ベースではなく英文ベースで書かれていて、その英文だけ覚えれば、難しい単語が一気に覚えられる効率のよい単語帳でした。

里奈さん:私たちはお互い効率を追求しないと短い期間で合格までいくのは難しいという切迫感があったので、効率を追求したスタイルの勉強法にたどり着いたのだと思います。

効率のよい勉強のために事前に知っておくべきこと

ーー学びにもいろいろな種類がありますが、あくまで「受験特化」の勉強でいうと、勉強ができない人の特徴はなんだと思いますか?

安野さん:おそらく自分の脳にどのような種類の情報を入れるべきか、というメタな思考があまりないのかもしれません。私は思い返すと、自分の脳にどの順番で何を入力するのが一番よいのかを考えることにも時間を費やしました。計画を立てたり、まずは勉強のやり方を勉強したり、一段階メタなところにリソースを配分できているかどうかの違いなのかもしれません。

里奈さん:もしかすると情報の取り方にも差があるのかな。情報には2種類あって、ひとつは自分の外側の情報で、勉強法だったり参考書だったりが該当します。ただ、それと同じくらい大事なのが、自分の内側の情報。それは、自分にとって何が大事なのか、自分はどのようなタイプなのか。たとえば集中力があってコツコツやるのが得意なのか、5分で飽きちゃうのか。

そのような自分の内側の情報も知っておくことが大事なのかなと思います。自分はどのようなタイプなのかと考える習慣があったり、自分のことをよく理解している人は、効率的な勉強が得意な傾向が強いのかな、と。自分の外側に溢れる情報と、自分の内側にある情報をマッチさせるのが、効率化の近道なのかもしれません。

ーー自分は勉強が嫌いだと思っている人は、勉強を好きになれるのでしょうか?

里奈さん:勉強のなにが嫌いなのかを分解してみるとよいかもしれません。私は小学生の頃から学校で板書をすることや座って話を聞くこと、大人に高圧的に勉強を押し付けられることなど苦手なことがたくさんあって、学校には行きたくなかったんです。なんのためにやるのかが分からなかった。

ただ、塾という違う環境に行ったときに、勉強そのものが嫌いなわけではないと気付いたんです。学校教育では本質的ではない挫折経験をしてしまう子がどうしてもいると思うけど、勉強が嫌いと一括りにするのではなくて、何が嫌いなのかを突き詰めることで、自分が好きなことや得意なことが見えてくるかもしれません。

受験勉強中の24時間を大公開

ーー受験勉強中の一日のスケジュールを教えてください。

安野さん:まず重要だったのは睡眠で、私は寝ないと頭に入らないタイプなので、毎日8時間は寝ていました。午前中は頭もクリアで集中力があるので、過去問を実際の制限時間で解くなどします。夜も勉強はしますが、その頃にはもう集中力がないので、お風呂の中で単語を覚えたりすることに時間を使いました。

本当かわかりませんが、暗記系は夜に覚えてそのあと眠ると記憶が定着するという説を信じていたので、それに則って時間配分していました。

また、受験勉強中は趣味に使う時間がないので、気分転換の意味も含めて東京都内のいろいろな自習室や図書館に行きました。いろいろな場所で勉強をするのは、科学的にもいいらしいですよ。「この場所で覚えた単語」というように、脳に定着しやすいようです。

里奈さん:これはもっとも勉強に時間を費やしていた時期で、起きている時間のほとんどは勉強をしていましたが、私も睡眠時間8時間はキープしていたと思います。安野と同じく寝る直前と起きた直後は暗記系がよいと思っていたので、起床後はすぐに英単語帳を聞いていました。

私は復習をとにかく大事にしていて、前日に間違えた問題は、必ずできるようになるまでやっていました。夜は23時まで予備校の自習室にいて、家に帰ってからはチャットをしたり2チャンネルを見てリラックスして、お風呂に入りながらまた英単語帳を聞いて、そのあとすぐに寝るという生活をしていました。ちなみに、家はリラックスする場所と決めていたので、家で勉強は一切しませんでした。

受験勉強は果たして意味があったのか

ーーおふたりとも社会に出てからもう長いと思いますが、今あらためて考えてみて受験勉強は大切だと思いますか?

里奈さん:受験勉強が大切かどうかの前に、学ぶことが大切かどうかでいうと、個人的には大切だと思います。学ぶことで知識や考え方の引き出しが増えると、同じものを見ても面白いと感じるポイントが増えると感じます。

実際に社会に出てからは、相手が考えていることを想像できるような「自分の引き出し」が少しずつ増えている気がして。それは国語や英語、社会などのいわゆる学びから引き出されている部分もゼロではないという意味では、学んでいてよかったなと思います。

安野さん:受験勉強がよかったかどうかに関して、ふたつのレイヤーがあると思います。ひとつめに、受験勉強で学んだことを活かせているかというと、僕は普段の生活で「あのとき勉強したやつだ!」と感じたことは、人生であまりありません。

一方で、一定の期間のなかで課題を与えられて、その大きなプロジェクトに立ち向かう経験は、のちの人生で活きると思っています。受験勉強は限られたリソースのなかで、どのように時間を最適に配分してどのように進めていけばいいのかというメタ思考が必要になるので、ある種のプロジェクトマネジメントの経験だと思うんですよね。

実際に社会に出て仕事をするとE判定だろうと関係なくて、来月までにこれができないといけない、というような状況に追い込まれることはあるじゃないですか。そうなったときに、何をどの順番でやっていくのがいいのか、自分はどのくらいまでならできるのか、そのような経験を、高校生のうちにやったことがあるというのは、自分の財産になるのかなと私は思います。

子どもたちには自分を守るアナザーワールドを持ってほしい

ーーおふたりが幼少期に受けた教育について教えてください。

安野さん:小学生のときは家の本棚や図書室の本をよく読んでいました。小学5年生から、SAPIXに通い始めました。

里奈さん:幼少期は勉強やピアノをやらされていた記憶があります。私も小学4年生からSAPIXに行っていたのですが、学校では同調圧力のようなものにあまり馴染めなかったので、塾は楽しかったですね。どんな発言をしても自由に受け止めてもらえる風土が当時の私には合っていました。

また、幼少期は自分の世界を持つということを大切にしていました。日記を書いたり本を読んだり、親や先生に干渉されない領域を持つことが必要だったように思います。それは結果的に学びにもつながっていて、そのおかげで世界を嫌いにならなくて済んだ、というと大げさかもしれませんが。安野くんにとってはそれがプログラミングだったのかもしれないね。

安野さん:今の話を聞きながらまさにプログラミングのことを考えていました。プログラミングは子どもも大人も関係なくて、コードをきちんと書くことができれば忖度せずに動いてくれる世界。里奈が言うように、僕自身もアナザーワールドを持っていたことで、精神衛生上助けられていた可能性がありますね。

ーーこれからを生きる子どもたちに対して、大切にしてほしい考え方はありますか?

安野さん:自分のやりたいことを見つけて、それをとことん突き詰める人が、基本的には世の中で活躍すると思います。自分はまだ子どもだから無力だと感じる子もいるかもしれないけれど、そのような思考は一旦解き放って。自分は何がしたいのか、何ができるとよい世の中になるのか、と考えてみたらいいと思います。

里奈さん:そうですね。一方でちょっと矛盾してしまいますが、最近は自分の好きなものや自分の特性を見つけなければならない、というプレッシャーが強くなってきているようにも思っていて。好きなものができない、というコンプレックスを味わう子も多いかもしれません。

でも、たとえば親や友だちから押し付けられたことであっても、それが自分にフィットするかどうかを考えることはできますよね。自分が苦手だったり嫌いだったりするその感情も大切にしてほしいと思うんです。

たとえば「私は勉強が苦手なんだ」と思って完結するのではなく、「勉強の何が苦手なんだろう?」と突き詰めて考えることが、自分の理解につながり、ひいては自分を肯定できることにもつながっていくのかもしれません。そこをもっと大人だったり教育だったりが、サポートできたらいいなと思っています。

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