日々のスキンケアの大切さを伝える、肌専門のサロン「楚々」。
中央区の住宅街に「楚々」という肌専門のサロンがあります。ピーリングや機械を使わず、自宅での肌のお手入れを見直して、きれいな肌になる方法を教えてくれるサロンなんです。オーナーである池乗さんは、長年化粧品業界に携わり肌に向き合ってきた、お肌の専門家。そんな池乗さんに、サロンをつくったきっかけや大事にしている考えなど、お話を聞いてきました。
楚々
池乗 亜紀 Aki Ikenori
1969年新潟市出身。高校卒業後、国産の化粧品メーカーに就職。美容部員として20年以上働く。自身の肌の悩みがきっかけとなり2022年に「楚々」をはじめる。身体を動かすのが好きで、走るときはフェイスガードを欠かさないんだとか。最近は時間さえあれば皮膚について勉強していて、本人曰く「 この姿勢が学生の時にあったなら人生変わってた」そう。
基本のお手入れの大切さに気づいた、会社員時代。
――池乗さんは、これまでどんなことをしてきたのか、教えてください。
池乗さん:高校を卒業した後、国産の化粧品メーカーに就職しました。化粧品のCMが好きで、「いいかも」って思ったのがきっかけでした。
――実際、働いてみてどうでしたか?
池乗さん:お察しかもしれませんが、CMみたいな華やかな世界じゃなかったです(笑)。 入社してから1ヶ月間、お肌のお手入れやメイクなどの研修をみっちり受けました。その後、新潟市外のお店に配属されたんです。都会のデパートとは違って、待てば人が来るお店ではなかったので苦労しました。自分から外にでて、工場や銀行で働く方に売り込みに行っていたのは、今思えばいい経験でしたね。
――訪問販売もやっていったんですね。
池乗さん:外に売りに行ったとしても、買ってくださるとは限らなくて。まずは声をかけたり、パンフレットを配ったりして、自分の顔を売ることからはじめましたね。 今振り返ると、この頃がいちばん大変でした。しょっちゅう泣いていましたから(笑)。その後はデパートのなかの店舗に異動して、20年ほど働きましたね。
――池乗さんは会社員の頃から、お店を持ちたいと考えていたのでしょうか。
池乗さん:子供の頃から「自分で事業をやりたい!」って思っていたんです。父も祖父も、自営業だったのが大きいかもしれませんね。会社員時代も、その思いはずっとありました。
――できたお店は化粧品を販売するお店ではなく、お肌専門のサロンなんですね。
池乗さん:これには、私が経験した肌の悩みが大きく影響しているんです。30歳を過ぎた頃、肌の悩みが増えて、皮膚科の薬を使い続けていたんです。1回塗れば肌がきれいになっていくんですけど、5日たったぐらいで、また肌が荒れていくんですよ。
――ふむふむ。
池乗さん:病気になって、薬を塗れなかったことがあったんです。そしたら、ものすごく肌が荒れてしまって。後日、皮膚科でちゃんと調べてもらうために、検査入院をしたんですよ。そこでも薬を塗れなかったので、顔じゅう真っ赤だし、ハンバーグのようなニキビができてしまって……。そしたら、担当の先生に「それがあなたの今の肌だよ」って言われて、愕然としました。
――痛い現実を突きつけられてしまったんですね。
池乗さん:肌をきれいにするための製品を売る仕事を10年以上やっているのに、自分の肌がこんなにボロボロになってしまって、どうしたらいいかわからなくなっちゃったんです。それを会社の肌に詳しい先生に相談したら、基本的なスキンケアを変えるべきだって教えてくれました。洗顔は石鹸に変えてとか、乳化剤がいっぱい入っている乳液は使わないで、とか。それを守ったら、薬に頼らずに肌を変えていくことができたんですよ。
――おぉ。スキンケアを見直しただけで!
池乗さん:そうなんです。肌を根本から変えるためには、基本のお手入れがいちばん大事なんだって実感しました。それで、私みたいな肌の悩みはあるけど薬には頼りたくない方に向けて、基本的なお手入れを見直してもらう場所をつくろうと思ったんです。
「楚々」は、肌をじっくり見て、とことん話す場所。
――店名を「楚々」にした理由を教えてください。
池乗さん:この部屋がもともと茶室だったのもあり、和の雰囲気のある名前にしたかったんです。響きがいい言葉を探していたら「楚々」という言葉に出会って。この言葉は美しい景色を見たときに使うみたいで、 ここに来ることで、肌のお手入れの意識が変わり、美しい肌が見られる場所にしたいと思ってこの名前にしました。
――池乗さんの経験からも、肌の基本的なお手入れが大事だと感じたのですが、そもそも「基本のお手入れ」ってどんなものでしょう。
池乗さん:洗顔の仕方や、化粧品の付け方などですね。肌がきれいになるためにお手入れしていたとしても、使い方次第では肌を痛めてしまう要因にもなるんです。肌のお手入れが原因で、肌が荒れてしまう人が多いと感じていて。毎日のお手入れを基本から見直せば、肌の悩みは解決できるっていうことを、ここではお伝えしています。
――そんな肌の悩みを解決するために、どんなことができるのでしょうか。
池乗さん:まず、はじめてていらっしゃった方には、今抱えている肌の悩みや普段のお手入れ方法を聞いています。いちばん最初に困りごとを話してほしいので、肌についてじっくりお話をする時間をつくっています。それから肌がきれいになる仕組みを断面図を使って説明しています。
――肌の基礎的なことから教えてくれるんですね。ここでは、珍しい診断をしていると聞きました。
池乗さん:肌のキメの診断をしています。キメは肌の健康状態がわかる大事なバロメーターなんですよ。キメの型を採って、後日、59あるキメのパターンと照らし合わせて、肌トラブルの原因と改善点をお伝えしています。キメが好きすぎて、このレプリカ診断を取り入れることにしたんです(笑)
――そんなことができるなんて。なぜキメに興味を持ったのでしょうか。
池乗さん:会社員時代、肌にとても詳しい先生に教えてもらっていたんです。その先生と出会ったことによって、肌と言われている顔の皮膚に興味を持ちました。そこからずっと勉強をしていたら、キメを見ただけでその方の将来の肌が予測できるようになっちゃいました。
――今では、キメのプロフェッショナルなわけですね。キメの型をとった後は、どんな行程があるんでしょう。
池乗さん:最後に、実際に洗顔を体験していただいて、正しい洗顔の方法を教えています。肌に負担がかからない洗い方を体験していただいますね。
――家でのお手入れ方法までしっかり教えてくれるんですね。カウンセリングの中で、池乗さんが大切にしていることを教えて下さい。
池乗さん:いっぱいあるんですけど、いちばんはお客様の肌と、お客様自身を理解することですね。まずは話をとことん聞いて、お客様が何を求めているのかを探っています。カウンターの形や位置も、お客さまとの距離感がちょうどよくなるようにこだわりました。
薬や機械に頼らない、自分で整えるお手入れを。
――今ここには、どんな方が来ているのでしょうか。
池乗さん: 私と同じように皮膚科に通っているけど、なかなか肌が改善しない方や、肌のお手入れをちゃんとやりたいけど、やり方がわからない方に来ていただいています。年代は20代から70代までと、幅広いんですよ。
――ここに来たら、いろんな年代の肌悩みが解決できるんですね。ここではお手入れのための化粧品も買うことができると聞きました。
池乗さん:自分の肌がボロボロになったときに使って、肌が改善したと実感できた商品を置いています。でも無理に販売はしていないんですよ。ここは肌についてじっくりお話をする場所だから。肌のことで困ったとき、まずは悩みを話してもらえる場所にしています。
――まさに駆け込み寺ですね。
池乗さん:そうなれたら嬉しいです。今の時代、スキンケアに関する情報がいっぱいあって迷子になっちゃう方も多いですから。もちろん、私も最初そうでしたし。そんな方に、いったん基本に戻りませんかって、見直してもらえる機会をつくれたらいいなと思います。
――まずはお手入れの方法に立ち返って、ということですね。
池乗さん:そうそう。毎日のお手入れって、すごく地味なんです(笑)。でも、地味だとしてもコツコツ続けていけば、どんなに良いエステや施術よりも良い肌が待っていると思うんです。毎日正しくケアをすれば、肌がしっかり変わっていくんですよ。
――帰ったら、さっそく自分のお手入れ方法を見直してみようと思います(笑)。池乗さんの今後の目標を教えてください。
池乗さん:今、インナーケアについて少しずつ学んでいるんです。身体の健康状態が、直接肌に関わってくるので。今までお伝えしていたスキンケアに加えて、インナーケアについてもお伝えできるように、自分の身体でいろんなことを試しています。今も、こまめに水分をとって身体の循環を促していますし(笑)。今後は肌と一緒に身体の健康についてもお伝えできるようになりたいですね。
楚々
新潟市中央区 近江3-21-11
10:00〜19:00