67歳母の「お金をかけず心豊か」な暮らし【登録者数39万人超のYouTubeチャンネル】
登録者数39万人超のYouTubeチャンネル「Kuro―北国の暮らし」から生まれた書籍『北国の暮らし 今を豊かに生きる家しごと庭しごと』(KADOKAWA)。動画に無言で登場する、Kuroさんの67歳母と92歳祖母が、この本で初めてご自身の暮らしや秘訣について語っています。庭仕事に精を出し、日々の暮らしを慈しむ「始末のよい暮らし」は、まさに未来への種まき。北国の大地で培われた、穏やかで豊かな暮らしのヒントが詰まっています。日々の生活をより健やかに過ごすための知恵を、ぜひ本書から見つけてみませんか。
※本記事はKuroによる書籍『北国の暮らし 今を豊かに生きる家しごと庭しごと』から一部抜粋・編集しました。
手の届くものを愛する、活かす
YouTubeで公開している私の調理する様子や完成した料理を見て「丁寧に暮らしていることに憧れます」などと言ってくださいますが、昔からやってきたことばかりです。凝った料理でもありません。
冷蔵庫や冷凍庫にあるもので料理するのが得意な主婦料理家です。予想以上に好意的に受けとめられているので、戸惑いの方が大きいです。
私の暮らしは特段、丁寧な暮らしを意識してきたものではありません。
そもそも私が暮らす田舎町には外食できる飲食店が、ごくわずかしかなく、食べたいなら自分で作るしかなかったのです。そんな事情から、手に入るもので作るというのが私の原点になりました。
結婚生活をスタートさせた40年以上前は、町の人口は今の2倍でした。町内には複数の食料品店があり、その頃は店舗の規模も大きく今より選ぶ余地があったと思います。私の料理の腕も未熟で、作る料理は一般的なものに限られていたので、調味料も一般的なもので事足りていました。
けれども、人口減少で食料品店は2軒に減りました。調味料の取り扱いも一般的なものだけで、アジア料理やスパイスカレーに必要な香辛料もありません。都市に住む友だちや妹からは「こんなに食材、少ないんだ」と驚かれたこともありました。
意外かもしれませんが、田舎暮らしに少々コンプレックスを感じていました。でも、「ないなら作ろう。イチから作るのは自分らしい」とも捉えていました。考え方を切り替えることで自分を納得させていたのだと思います。主婦歴40年以上を経て、料理の腕も上がり、蓄積してきた経験や工夫が拠り所にもなりました。
開拓時代のアメリカ西部で生きた家族の物語『大草原の小さな家』は、ドラマを見て大好きになり、本も読みました。主人公の少女・ローラやその家族が、厳しい自然や貧しさの中でも食事や娯楽などに工夫を凝らして生きていく姿、ないものを作り出すのはすばらしいと思ったものです。彼らの心豊かに暮らしている姿からずいぶん影響を受けました。
北海道の小さな町で子どもを育て、料理を作る私を重ね合わせていた部分もあると思います。
『大草原の小さな家』シリーズは愛読書です。
長い主婦料理家の歴史のなかで料理の腕も上げていき、フーコックのヌクマム、アルベルトさんのオリーブオイル、ゲランドの塩などこれでなくては、という調味料との出会いもありました。それらはインターネットを活用し、取り寄せていますが、醬油や料理酒、みりん、砂糖などの調味料は、地元で買えるものを選ぶことにしています。
塩は料理に合わせて使い分け。
調味料は独自の審美眼で選んでいます。
購入するときは裏面の食品表示をしっかり見ます。できるだけ保存料や添加物が入っていないものを選びますが、原料の産地もチェックします。例えば、醬油なら、原料の大豆は国産であることが望ましくて、北海道産大豆を使っているものがあれば、そちらを選びます。私の購入は微々たるものです、生産者さんを支えることにつながればいいなぁ、と思って選んでいます。
それから、価格も重視します。調味料が大量に必要だった子育て時代は安い価格のものを選んでいました。でも今は、夫婦ふたり暮らし。考え方が変わって高い価格の商品を選ぶようになりました。価格の分だけ、原料素材や製造へのこだわりがあるような気がします。
調味料は地味な存在だけど、料理の仕上がりを左右するもの。しかも料理のたびに使います。全国、全世界の調味料を揃えたい気持ちはありますが、毎日の料理に使う基本調味料は限られています。
カンボジア産の粒胡椒「カンポット」はベトナムで買ったミルで挽きます。
この地で育った新鮮な野菜と手に入れやすい調味料、取り寄せている好みの調味料。田舎にいても研究し続け、これらで完成させることができる料理を、私は作り続けてきただけです。