わら筒に入った男たちに水をぶっかける!? 約700年の歴史をもつ奇祭「水止舞」が7月15日に大田区・厳正寺で開催
大きなわら筒に入った男たちが、ひたすら水を掛けられながら、道路を転がされていく。そんな目を疑うような光景が繰り広げられるのが、2024年7月15日(月・祝)に東京都大田区の厳正寺(ごんしょうじ)で行われる「水止舞(みずどめのまい)」だ。この奇祭は一体、どのような経緯で行われるようになったのか。
雨乞いと雨止めの両方を祈願
水止舞の起源は、今から約700年前に遡る。元亨元年(1321)夏、武蔵国が大干ばつに見舞われた際、厳正寺の住職・第二世法蜜上人がわらで龍の像を作って雨乞いをしたところ、雨が降り出した。ところが2年後、今度は長雨が続くようになり、田畑に甚大な被害を及ぼした。
そこで、住職は獅子の仮面を3つ作り、それを「水止(しし)」と呼び、農民に被らせ、笛や太鼓を鳴らし、ほら貝を吹きながら天に向かって躍らせた。すると、雨は止んで空は晴れ渡り、人々は感謝の舞として「水止舞」を捧げるようになったという。
水を掛けられてはほら貝を吹き鳴らす龍神役
「雨を降らせる雨乞いの祭りは全国に数あれど、雨を止ませるための祭りというのは珍しいと思います」と、厳正寺水止舞保存協力会の鳴嶋さんは話す。
祭り当日は、言い伝えに則って、まずは雨乞いの儀式である「道行(みちゆき)」から始まる。わらの縄を渦巻き状に巻き上げた筒の中に男性2人が入り、ほかの男衆によって行列の先頭で転がされる。2人は龍神役で、容赦なく水を浴びせられながらも、ほら貝を吹き続ける。「鳴り響くほら貝の音は、雨が降って喜びの雄叫びを上げている様子を表しているんですよ」と鳴嶋さん。
その後厳正寺に到着すると、「雨止め」の儀式がスタート。先ほどの龍神のしめ縄をほどいて舞台を囲み、その中で、雨止めを願う3匹の獅子が笛や唄に合わせて舞を披露する。このように、龍神の道行を行う「雨乞い」と、3匹の獅子が舞を捧げる「雨止め」を合わせて「水止舞」とされている。
約700年もの間、この地に脈々と受け継がれ、東京都無形民俗文化財に指定されている民俗芸能をぜひ現地で見学しよう。道行は13時に大田区立大森第一小学校前の交差点を出発。見物客もびしょぬれになるので、覚悟して臨もう!
開催概要
「水止舞」
開催日:2024年7月15日(月・祝)
開催時間:13:00~15:00頃
会場:厳正寺(東京都大田区大森東3-7-27)
アクセス:JR京浜東北線大森駅からバス「大森東中学校」下車、徒歩6分
【問い合わせ先】
厳正寺水止舞保存協力会☎080-4931-4321
公式HP:https://www.mizudome.com/
取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者より提供