猛毒クラゲを捕食!青い天使とも呼ばれる<アオミノウミウシ> 蓄えた刺胞を攻撃にも使うことが判明?
ユニークな形が特徴のアオミノウミウシは、別名「青い天使」とも言われる小型の軟体動物です。
本種は見た目もさることながら生態も特徴的で、カツオノエボシを捕食し、その刺胞(毒針のような器官)を背側突起(ミノ)の先端に取り込むことが知られており、これを「盗刺胞」といいます。
一方、取り込んだ刺胞については、これまで防衛以外の役割が判明しておらず、詳しい利用方法は不明だったようです。
そんななか、新江ノ島水族館の山本岳飼育員と東海大学の小口晃平講師を代表とする研究チームは、アオミノウミウシがミノを手のように使い防御以外にも利用していることを明らかにしました。
この研究結果は「Ecology」に掲載されています(論文タイトル:Blue angels have devil hands: predatory behavior using cerata in Glaucus atlanticus)。
特徴的な突起を持つアオミノウミウシ
アオミノウミウシはアオミノウミウシ科に分類される裸鰓目(らさいもく)の軟体動物で、色と背側突起(ミノ)が特徴的です。
背面は灰色、腹面は濃紺色をしており、普段は表層で腹面を上にして生活。大きさは50ミリほどまで成長します。
ウミウシというと岩礁などにへばりついているイメージがりますが、アオミノウミウシは暖海の外洋に広く分布する種であり、日本では千葉県以南の太平洋側や島しょ域で見られます。
普段は外洋の表層で生活しているものの、時期や条件が重なると海岸に漂着することもあるようです。
刺胞動物を食べて貯蔵
アオミノウミウシは見た目が変わったウミウシとして有名ですが、刺胞動物であるギンカクラゲ、カツオノカンムリ、猛毒のカツオノエボシを捕食することでも知られています。
さらに、アオミノウミウシなどミノウミウシ類の多くは、捕食した刺胞動物の刺胞を消化せずに体内に取り込むことで、武器として利用。アオミノウミウシの場合、盗んだ刺胞を背側突起(ミノ)にある刺胞嚢に蓄え、防御として利用することが知られています。
ミノは攻撃にも利用されることが判明
従来、アオミノウミウシの背側突起(ミノ)は防御に使用されるものと考えられてきましたが、新江ノ島水族館の山本岳飼育員と東海大学の小口晃平講師を代表とする研究チームは、アオミノウミウシのミノや盗刺胞への理解を深めるために、本種の行動観察を行いました。
観察の結果、アオミノウミウシは体の前方のミノをまるで手のように扱いシラスを捕食する行動が見られ、ミノが防御だけではなく獲物を捕食することにも利用していることが判明。この行動はシラスだけではなく、様々なクラゲに対しても確認されたようです。
このことからアオミノウミウシがカツオノエボシなどの刺胞動物以外にも、魚など様々な生物を捕食することが示されました。本種はより広範な食性に進化したことが示唆されています。
長期飼育が難しいアオミノウミウシ
アオミノウミウシは見た目の美しさから水族館でたびたび飼育される生物ですが、生態に謎が多く長期飼育の難しいといわれています。
今後の研究によりアオミノウミウシの生態がより解明されれば、長期飼育が可能になりアオミノウミウシが多くの施設で見れるようになるかもしれませんね。
(サカナト編集部)