演者も作り手も実は苦労の連続…!? YouTube制作のリアル!動画撮影の裏側
釣り人が情報を得るためのツールといえば、新聞や雑誌、釣り専門番組、最近ではSNSやYouTubeといった動画配信サービスが挙げられますよね。もちろん私も好きな釣りの新商品をチェックしたり、トレンドの釣り方を学ぶ意味でも日々お世話になっているわけですが…。
さて、今回はそんな釣りの「情報」についてのお話。釣具メーカーが配信する「動画」の、撮影の流れや裏側をちょっぴり紹介します。決して「われわれはこんなにも頑張っているんです!」という頑張りをアピールする内容ではありませんのでお気軽にご覧ください(笑)。
これが私の商売道具!
動画撮影のアイテムたち
カメラはまったくの初心者。使い方は先輩社員から教えてもらいました
さて筆者である私ですが、実は釣具メーカーの広告販促担当でもあり、動画撮影など「作り手側」の業務にもあたっています。 “カメラマン”や“動画クリエイター”などと名乗れるほどの知識や腕はありませんが、動画撮影が入ったときには現場に駆けつけて対応しています。
現場には「商売道具」と身一つで行くわけですが、まずは、動画撮影に必要なアイテムたちを紹介したいと思います。
・ビデオカメラ
・ミラーレスカメラ
・三脚
・ワイヤレスマイク
・イヤホン
・ビデオカメラ予備バッテリー
・モバイルバッテリー
・充電コード
・モバイル照明
・フィッシュグリップ
・ハサミ
・ビニール傘
なかでも、とくにバッテリーや充電コードは忘れないように心がけています。カメラのバッテリーは時間が限られているので、撮影が丸1日、もしくは宿泊して2日目も撮影が続く場合には必須アイテムなのです。
また意外と役に立つのがビニール傘。もちろん土砂降りでの撮影は避けたいところですが、撮影中に通り雨に降られることもあります。防水のビデオカメラを使っているわけでもないので、せめて傘で雨水をしのいでいます。
という感じで、撮影に必要なカメラ類やマイクなどの周辺機器、バッテリー、そのほか撮影に必要なアイテムをバッカンに詰め込んで撮影に臨んでいます。
舞台は灼熱のサーフ…
マゴチねらいのサーフフィッシングにチャレンジ!
2025年7月のこと。今年の新商品である「ジャックアイ フリフリシャッド(ハヤブサ)」の動画撮影ということで、三重県のサーフでマゴチをねらって実釣しました。
ハヤブサフィールドスタッフの土口泰明さん。三重県の七里御浜をホームにルアーフィッシングを楽しむ超現場型アングラー
今回、撮影に協力してくれたのはフィールドスタッフとして活躍している土口泰明さん。土口さんにアングラー、つまり演者として登場してもらいました。土口さんは普段、三重県・熊野市の七里御浜でルアーフィッシングを楽しまれており、なんと年間釣行回数は300日を超える、超現場型アングラーといった方なのです。
そんな土口さんと、事前に今回の取材の企画や内容をやり取りしていましたが、撮影前日の夜、改めてホテルロビーの一角で作戦会議をすることに。しかし、土口さんは予定していた時間よりも遅れて到着、その日は仕事を夕方で切り上げる予定が長引いてしまったようでした。ご自身の仕事もこなしながらの撮影協力…いつもありがとうございます。
無事に土口さんと合流したところで作戦会議をスタート! といっても、たわいもない会話をしながら、明日の撮影場所や内容の確認をしたといった具合。三重県のサーフは平日でも満員御礼ということで、明朝はロビーにAM3:00に集合。早めに出発することにしました。「明日はよろしくお願いします!」と早々に解散したのでした。
アングラー泣かせ…?取材の辛い部分
さて、撮影当日。予定通りの時間に釣り場に到着して日の出を待ちます。この日のためにプラ釣行も行ってくれていた土口さん、気合十分で撮影に臨みます!
釣れなくても…投げ続けるしかない!
日の出を待ってAM4:30撮影開始。まずはオープニングのコメント撮りからです
さぁ、ここから撮影がスタートするわけですが、さすがは大人気ポイント。平日でも満員御礼状態です。隣同士、オマツリにならないよう釣り座を選んで撮影を開始しました。
釣りを開始して3時間ほどが経過すると、周りの釣り人は竿を畳み始めました。地元の方は仕事前の時間に竿を出す人が多いのか、8時を回るころには釣り人はほとんど帰ってしまったという状況。そのうちに土口さんと私のみとなりました。
気付けば周りの釣り人はいなくなっていました。そういえば竿を曲げている人を見たでしょうか…?
釣果はというと、ここまで「ノーヒット」…。撮影を開始してあっという間に時間が過ぎ去っていくのですが、本命のマゴチが登場しません。ジリジリと太陽が照りつけるなか、土口さんはルアーを投げ続けてくれました。私もいつか来るであろうヒットを逃さないために、必死にカメラを向け続けました。
土口さん:
「今日はかなり渋いですね…」
私:
「ここまで渋いとは思っていなかったです…みなさん帰ってしまいましたね」
土口さん:
「ですね。でも投げ続けるしかないので。やりましょう!」
そうなんです。どんな状況であれ、取材を成功させるためには投げ続けるしかないのです…。(もちろん休憩を挟みながら)
しかも今回の取材はサーフフィッシング。船釣りであれば魚探などでポイントをある程度絞り込めますが、広大なサーフではそんなわけにはいきません。「釣れるであろう」ポイントを行ったり来たり、いわゆるランガンスタイルで投げ続けていきました。
マゴチは一体どこにいるのか。広大なサーフを行ったり来たり
朝からルアーを投げ続けたものの未だにノーヒット。結局この日はお昼過ぎまで投げ続けましたが、マゴチの顔を見ることはできませんでした。
撮影リベンジも…やっぱり釣りは自然相手!
前回の取材は失敗に終わったわけですが、間髪を入れず、日を改めてリベンジです! なんとか撮影を成功させ、みなさんにお届けするためにも、土口さんと再び三重県のサーフを訪れました。
この日は朝からではなく午前中、日が昇ってからのスタートにしました。いつも通りオープニングの撮影を終え、沖に向かってルアーを投げます。
間髪を入れずリベンジ撮影。今日こそは成功させたい…
前回から海の状況も変わっており、釣果も出始めたとのこと。今回は期待できそうな雰囲気です。相変わらずの暑さですが海風が心地よく、「あとはマゴチのやる気次第!」と思っていた矢先、海を見ると濁りが入り始めました…。
私:
「なんか濁ってきていませんか?」
土口さん:
「やっぱりそうですよね。なんだか風も強くなってきたような…」
さきほどまで心地よかった海風があっという間に「爆風」に。風のおかげで岸寄りの砂が巻き上げられて、強い濁りが入ってきたのです。
土口さん:
「こんな予報でしたか? 濁りが強すぎてコレでは…」
私:
「いや~、これはキビシイ。風が弱く濁りも薄い場所はないですかね?」
スマホの天気予報を見ると、夕方にかけて風が強くなる予報に。日本の南にある台風の影響のようでした。
この日は私の都合で終わりの時間が決まっていたこともあり、なんとかして成功させたいと場所変えを決行! 少し離れたサーフへ移動することにしました。
ルアーを投げても手前に戻ってきてしまうような爆風。しかも強い濁りも
しかし…場所を変えても爆風&濁りは健在。いや、むしろ強くなっているような…。
それでも「投げ続けるしかない」。夕方の時合いに期待して投げていきます。しかし、今度は1投ごとにゴミや海藻が引っかかってくる始末。そんななかでも土口さんは、攻略の糸口を探してくれています。
土口さん:
「なにもない砂浜でも沖に出る流れがあるはずなんです。そこにルアーを通すとゴミが引っかかってこない。そういう場所に魚が着くんじゃないか…と」
この日のスタートは遅かったとはいえ、すでに数え切れないほどルアーを投げ倒している土口さん。体力的にもキツイはずなのに黙々と投げ続けるのでした。
黙々と投げ続ける土口さん。厳しい状況でも攻略の糸口を探していきます
どんな状況でも魚をヒットさせるために、そして、取材を成功させるために奮闘してくれた土口さん。しかし、その甲斐もむなしく…風や濁りに手も足も出ずといった状況。改めて、魚釣りは自然相手なのだと痛感させられたのでした。
辛いときばかりじゃない!?
失敗した分、成功の喜びは大きい
結局、7月に行った取材は不発に終わったわけですが、撮影日は限られていますし、どこまで行ってもやっぱり釣りは自然相手。「前日まで釣れていたのに…」なんていうことは多々あります。
しかし、取材はこんなときばかりじゃありません。厳しい状況のなか成功する取材もありますし、再三にわたって実釣を繰り返した先に釣果を得ることもあります。上手くいかないほど、成功したときの喜びは大きなものなのです。それはもちろん作り手側も同じで、演者さんと一緒になって喜びを分かち合うことができる瞬間でもあります。
失敗した分、成功したときの喜びは大きい
取材が終われば…ひたすら編集作業!そして公開
さて、作り手側の喜びムードはほんの束の間。取材が無事に成功したら、今度は動画の編集作業をこなしていきます。
動画編集は便利な専用ソフトで
まずは、撮り終えた動画を見ながら使うシーンをカットしていきます。カットし終えたらテロップを入れ、BGMや必要なイラスト、写真などを挿し込んでいきます。そしてサムネイルを作ったら、最終チェックをして、問題なければ公開となります。
ザックリとした流れはこんな感じですが、とにかく時間がかかる作業なのです…。もちろんほかの業務もこなしながら進めていくことになるので3日~4日ほど時間を要するといった具合です。
撮影時間のトータルが10時間を超すこともあるにもかかわらず、最終的には、たった15分前後の短い動画に仕上げます。1日の出来事をギュッとまとめる必要があるので、「視聴者さんにとって必要な情報は何なのか?」「この動画で伝えたいことは?」といったテーマを常に意識しながら、編集に努めています。しかしこれが一番難しい点で、途中で方向性がブレてしまうと動画としての完成度が低くなってしまうのです。いかに「視聴者目線」に立って編集を進められるか…ですが、毎回試行錯誤しています(汗)。
編集作業の繰り返し。作り手の役割はみなさんに情報を届けること
といった具合に、日々さまざまな動画コンテンツが配信されるなかで、できるだけ早く、鮮度のよい情報をみなさんにお届けするため、内容やクオリティにこだわって編集作業を進めているというのが、作り手側の実状(情熱(?))なんです。
今回は釣りの「情報」という視点から、動画撮影の流れや裏側を紹介しました。
新商品の発売時期に合わせて動画配信するため、その取材はアングラー(演者)にとって、決してよいタイミングや条件ではないことが多い釣具メーカーの動画撮影。それでも、釣り人のみなさんに商品や使い方、ダイナミックな釣りの楽しさといった「情報」をお届けするために、これからもトライ&エラーを繰り返しつつ、頑張って取材を続けていきたいと思っています。
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レポーター
プロフィール:鷲見 大地
1998年岐阜県生まれ /岐阜県在住
「海なし県」育ちということもあり河川で釣りを覚え、渓流ルアーフィッシングや鮎の友釣りをメインに釣りを楽しむ。釣具メーカー・ハヤブサに勤務し、最近は堤防・磯釣り・船釣り、SWルアーフィッシングなどに触れながら、日々勉強中。