愛犬の死を乗り越えるためにできること ペットロスで起こることや前を向くための対処法とは
ペットロスは普通の感情です
愛犬に対する思いは、飼い主さんごとに異なります。相棒、兄弟姉妹、親友など、それぞれに表す言葉は異なるかもしれません。しかし、共通している思いは「我が子」のような存在だという気持ちではないでしょうか。
実際に、愛犬は飼い主さんがいなければ生きていけない存在であり、お互いに親子間で生じるような深い信頼と愛情の絆で結ばれています。そんな大切な存在である愛犬を失えば、深い悲しみに襲われ、別れを受け入れられずに苦しむのは、人としてごく自然な感情です。
悲しみに耐えかねて、しばらくは何も手につかなくなるかもしれません。それを、周囲の人が必ずしも受け入れてくれるとは限りません。現在の日本では、まだ伴侶動物は家族だということが理解されずに「たかがペットでしょ」と言われてさらに傷つくかもしれません。しかし、家族を失って悲しみに暮れるペットロスは、ごく普通の感情です。
ペットロスで起こること
ペットとの別れが原因となり、飼い主さんの心に生じる打撃のことをペットロスと言います。そして、その打撃が引き金となって心や身体に現れるさまざまな症状を総称して、ペットロス症候群と言います。
ペットロスとして受ける心の打撃の強さは、飼い主さんの性格や、愛犬とどのような別れ方をしたのか、また生前愛犬とどのような付き合い方をしていたのかによって異なります。
悲しみを感じつつも日常生活に支障をきたすことなく暮らせる方もいれば、ペットロス症候群を経て日常生活に戻る方もいます。しかし中には、なかなか愛犬の死を乗り越えられず、うつ病を発症してしまう方もいます。
ペットロス症候群として現れる症状には、以下のようなものが挙げられます。
心理的症状
✔身近にペットの気配を感じることがある
✔ちょっとした刺激にも涙が出て止まらなくなる
✔物事に集中できない、または集中力が続かない
✔突然強い孤独感や不安感が襲ってくる
✔眠れない
✔何に対しても興味が湧かない など
身体的症状
✔食事が喉を通らない、または食べ過ぎてしまう
✔嘔吐や下痢、便秘などの消化器系の症状が出る
✔急激な体重の減少、または増加
✔疲れが抜けない
✔身体に力が入らない
✔めまい など
これらの症状が現れても極端に心配せず、ペットロスと向き合うことで愛犬の死を乗り越えられれば、日常生活に戻ることができます。
しかし、上記のような症状が2ヵ月以上続き、日常生活にも支障をきたしているという場合は、うつ病を発症している可能性も考えられます。できるだけ速やかに、心療内科、精神科、グリーフケアに対応したカウンセリングサービスなどに相談することをおすすめします。
では、次章でペットロスを乗り越えるための対処法をご紹介します。
ペットロスを乗り越えて前を向くための対処法
一般的に、ペットロスでは下記のような心理状態の段階を経て愛犬の死を受け入れられるようになると言われています。
1.否定:愛犬の死を受け入れられない
2.交渉:何かと引き換えに愛犬を生き返らせてくれと神様などに交渉する
3.怒り:交渉が受け入れられずに愛犬の死を何か・誰かのせいにしてしまう
4.受容:怒りが落ち着き、愛犬の死を受け入れられるようになってくる
5.解決:愛犬の思い出と共に、通常の日常生活を送れるようになる
このような段階を、焦らずにご自身のペースで進むことを心掛けましょう。この5つの段階を進むために有効だと言われている対処法には、下記のようなものがあります。ご自身の状況に合わせて、できることから始めてみましょう。
(1)愛犬を亡くした悲しみを感じながら、別れを惜しむ
(2)ご自身の気持ちに合った方法で、愛犬を供養する
(3)自分の気持ちを言葉に表す
(4)愛犬との思い出に浸る
(5)ある程度愛犬との思い出に浸れたら、遺品を整理する
(6)しっかり食事をとる
(7)眠れなくても横になって体を休ませる
(2)の供養では、一旦遺骨を自宅に引き取り手元供養を行い、将来的にペット墓地に納骨したり、一緒に納骨できるお墓を購入したりすることも可能です。
(3)では、愛犬とご自身との関係性を理解しているご家族やご友人と愛犬の思い出話をすることが望ましいと言われています。しかしそのような話し相手がいない場合は、SNS等のペットロスを抱えている方たちのコミュニティに参加したり、専門のカウンセラーに頼ることも、前に進むためには役に立つでしょう。
ペットロスを乗り越えるためにすべきではないこと
時々、ペットロスを乗り越えようと無理をして、かえって悪化させ、うつ病にまで発展させてしまう方もおられます。下記のような行動は、かえって状況を悪化させる可能性があるため、覚えておきましょう。
(1)愛犬のことを無理に忘れようとする
(2)わざと明るく振る舞う
(3)自分の気持ちを閉じ込めて表に出さない
(4)状況も心理状態も落ち着く前に、新しい動物を迎え入れる
(4)では、亡くなった愛犬の身代わりとしてではなく、その子自身を大切にできる心の状態になるまでは、安易に新しい子を迎え入れないようにしましょう。
まとめ
ある大手の保険会社のアンケートでは、ペットロスを経験された飼い主さんの51%が、3ヵ月程度で回復したと回答されています。しかし、中には1年以上続く方もいます。たとえどれだけ時間が掛かったとしても大丈夫です。愛犬との大切な日々を思い出しながら、焦らずご自身のペースで少しずつ前を向いていきましょう。
また、愛犬のケアや看病、介護などへの後悔が強い場合に、ペットロスが長引く傾向があるようです。愛犬が元気なうちから、愛犬とのその日その日の生活を丁寧に楽しく過ごすことも、ペットロスを乗り越えやすくするための対策になるでしょう。