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子どもの糖尿病とは?1型2型の初期症状や肥満との関連など【医師監修】

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子どもの糖尿病とは?1型2型の初期症状や肥満との関連など【医師監修】

監修:藤井明子

さくらキッズくりにっく院長 /小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医

子どもの糖尿病は1型と2型がある?それぞれの原因や初期症状など

糖尿病とは、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが体内で充分に働かないために生じる疾患のことです。インスリンは血液中のブドウ糖(血糖)を抑える役目をしていますが、うまく機能しないことで血糖が多くなり尿中にも含まれてしまうため糖尿病と呼ばれています。

糖尿病にはのどの渇きや尿の回数の増加などの症状があるほか、血糖値が高くなると意識障害に陥る可能性があります。また、糖尿病が続くことで網膜や腎臓などへの合併症などにつながるリスクも指摘されています。

糖尿病は原因や症状の違いによって、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分かれています。また、糖尿病は大人だけでなく、子どもも発症することがあります。

今回の記事では子どもの糖尿病について詳しく紹介していきます。

1型糖尿病は膵臓がインスリンをほぼ、あるいはまったく分泌することができないことで生じます。原因としては、インスリンをつくる膵臓の細胞が何らかの要因で破壊され、充分なインスリンをつくれなくなるためだと考えられています。

2型糖尿病と比べて子どもが発症しやすく、子どもの糖尿病の中の約3分の2が1型糖尿病だと言われています。割合としては、18歳未満の子ども350人に1人の割合で発症していて、子どもの慢性疾患の中でも大きな位置を占めています。

多くの場合は4~6歳、または10~14歳の間に発症するとされていますが、近年では5歳未満の子どもにも増えており、まれに乳児がかかる場合もあります。

1型糖尿病の症状としてはまず尿量の増加が見られます。子どもによってはおねしょをすることや日中の尿意をがまんできない、などの問題も起こります。
また、水分が失われてしまうことによりのどの渇きを訴えることもあり、脱水状態になると筋力低下、疲労感、吐き気などの症状が表れてくることもあります。

2型糖尿病はインスリンは分泌されているが、身体がインスリンにうまく反応しなくなることによって発症します。
原因として遺伝や肥満、高血圧、運動不足などが挙げられています。この2型糖尿病は主に青年期に起こることが多いと言われていますが、近年では子どもの発症も増えてきています。

2型糖尿病にも、のどの渇きや尿量の増加などの症状がありますが、1型糖尿病と比べて進行が遅く、症状に気づかない場合もあります。学校などで尿検査をした結果、2型糖尿病が判明することも珍しくありません。

子どもの糖尿病は治る?治療方法など

糖尿病の治療法としては、食事療法と運動療法、それにインスリンの注射などがあります。
糖尿病を完全に治癒することは難しいと言われており、これらの治療の目的は生活するうえで安全な範囲に血糖値を保つことです。そのため、糖尿病の治療は長期にわたって続くことになります。

1型糖尿病と2型糖尿病では治療方法が異なります。

■食事療法および運動療法
1型糖尿病の治療を始めるときに、主治医や栄養士などから食事計画の立て方のレクチャーがあります。

1型糖尿病の子どもの場合は、食事に関して厳格な制限はないため、それまでの食事と同様な物を食べることができます。ただ、乳児や未就学児などは自身では食事のコントロールが難しい傾向があるほか、自身の症状をうまく伝えることができないため、養育者が注意してみる必要があります。

■インスリンを注射投与
1型糖尿病の治療として、インスリン注射があります。診断を受けた後は基本的に入院することが多く、そこで脱水状態のケアとインスリンの投与が行われます。

1型糖尿病にはほかに有効な治療法がないため、インスリン注射は欠かせない治療法です。最初は入院中に行い、血糖値の変化を見ながら調整していきます。

退院後もインスリンの投与を続ける必要があり、医師と養育者で話し合ってどのように進めていくか決めていきます。

■食事療法および運動療法
2型糖尿病では肥満が見られることも多く、治療の一環として体重の管理を行う場合があります。食事の内容や摂取量を調整し、スナック菓子や清涼飲料水などをやめ、野菜と食物繊維を多くするといった形に変えていきます。

それと共に運動習慣をつけることも大切になります。定期的に運動することにより、血糖値が抑えられるようになり、体重の減少にもつながります。ただ、激しい運動は低血糖状態を引き起こすこともあるため、医師と相談しながら適度な運動を行っていきます。

■定期的に医師を受診する際に血糖値を下げる薬(血糖降下薬)を処方されます
2型糖尿病の場合は、通常は入院せずに治療を行っていきます。血糖降下薬と呼ばれる血糖値を下げる薬が処方されるため、服薬していくことになります。

ただ、2型糖尿病であっても症状が重度だと入院してインスリン治療を行う場合もあります。

障害がある子どもには肥満が多い?予防のために保護者ができることはある?

糖尿病を引き起こす原因の一つに肥満がありますが、「障害のある子どもと肥満には関連があるの?」と不安を抱いている方もいるかもしれません。

実際に障害と肥満の関係についての調査結果と肥満の予防方法についても紹介します。

ある調査によると、発達障害のある子どもの肥満頻度は男児で11.9%、女児で17.1%という数字が出ています。これは同時期に行われた児童生徒の健康状態に関する調査において、小中学生の肥満頻度が男児で9.9~11.0%、女児で8.1~9.5%であることと比べると、男女ともに高い数字になります。

発達障害のある子どもに肥満が多い要因としては、発達障害の特性や周りの環境の兼ね合いで拒食や偏食になることが挙げられています。また、運動面にも要因が見られ、特性により運動自体が苦手なことや対人関係が不得意なことによって集団で遊ぶ機会が少ないことが関係しているとも考えられています。

2型糖尿病は青年期以降に多く見られる疾患ですが、現在では子どもの糖尿病のうち3分の1は2型糖尿病と言われています。子どもの肥満が気になる方は、家庭でもできる対策をしていくといいでしょう。

家庭でできる対策としては、食事、生活リズム、運動習慣があります。食事では、まず成長期の子どもに食事制限をすることは好ましくありません。そのため三食栄養バランスの良い食事をし、間食をしすぎないようにすることが大事です。おやつは時間や量を決めて、糖質や質がなるべく少ないものにするといいでしょう。

生活リズムの乱れも肥満の要因となり得ます。なるべく早寝早起きをし、食事の時間も毎日同じになるようにしましょう。そのため、スマホやゲームをする時間を決めて、睡眠の時間を確保し質を高めていくようにしましょう。

また、運動をする習慣をつけることで、肥満の解消になるだけでなく、睡眠の質の向上も望めます。まずは親子でできる簡単な運動から始めて、「身体を動かす」ことが楽しいと感じられるようにするといいでしょう。

ただ、家庭だけで肥満を解消するのは難しいこともあると思います。また、子どもに発達障害がある場合などは、発達障害の特性も理解したうえで対策をすることが必要となります。そういったときは、専門機関に相談してみることも方法としてあります。

主な相談先として、以下のような機関があります。
・かかりつけの小児科
・子ども家庭支援センター
・市町村保健センター
・児童相談所
・児童発達支援センター

子どもの健康や発達について相談ができますので、活用してみるといいでしょう。
場所によっては電話での相談ができることもあります。WEBサイトを確認してみるといいでしょう。

子どもの糖尿病の合併症

子どもの糖尿病には、さまざまな合併症のリスクがあります。

その中でも、糖尿病性ケトアシドーシスは重篤な合併症として知られています。糖尿病性ケトアシドーシスはほとんどが1型糖尿病の合併症として生じます。強いのどの渇きや頻尿、体重減少、吐き気、嘔吐、呼気のフルーツ臭などの症状があり、治療しないと進行して昏倒や死に至ることもある大変危険な合併症です。

ほかにも、糖尿病の症状で血管にダメージを与えることにより生じる合併症もあります。糖尿病網膜症といって、目の血管の損傷による視力低下や、腎不全につながることもある糖尿病性腎症、神経が損傷することにより手足のしびれなどが生じる糖尿病性神経障害などが挙げられます。こういった合併症は比較的2型糖尿病に多く見られると言われています。

心臓発作や脳卒中が生じることもありますが、子どもの時期に現れることはほとんどないと言われています。
また、合併症には精神的なものも含まれます。糖尿病が発症したことで約半数の方が、うつ病や不安などの症状を訴えると言われています。

糖尿病が発覚した場合は治療を行っていくと共に、子どもの精神的なケアも同時に行っていくようにしましょう。

糖尿病はインスリンが体内で十分に働かないことで起こる病気です。大人の病気と思われがちですが、子どもにも発症することがあります

糖尿病はインスリンが体内で十分に働かないことで起こる病気で、1型糖尿病と2型糖尿病という種類があります。

糖尿病は大人の病気と思われがちですが、子どもに発症することもあります。子どもの場合は1型糖尿病の割合が3分の2、2型糖尿病の割合が3分の1と言われています。

糖尿病の治療としては、食事療法と運動療法、体重管理のほかに、特に1型糖尿病ではインスリン注射が行われます。糖尿病には糖尿病性ケトアシドーシスなど重篤な合併症があることでも知られており、なるべく早く病院を受診して治療を行っていくことが大切です。

それと共に、うつ病などの精神疾患につながるリスクも指摘されているため、身体的な治療だけでなく子どもの精神的なケアも大事にしていきましょう。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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