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練習をサボった子が先発で真面目なわが子はベンチ。上手ければ休んでいいのか問題

サカイク

練習を早退したり、週末Jリーグを観に行くからと欠席するのに公式戦でスタメンに選ばれる子。うちの子と技術的には大差ないのに、引っ込み思案な息子が良くないの......?

うちの子は休まず練習に出ているのに、しょっちゅう休む上手い子が選ばれることに同じ月謝を払っているのに納得いかない、という気持ちを持ったことがある保護者は結構いらっしゃるのではないでしょうか。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、お母さんがどうすべきかアドバイスします。
(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<子どもたちに実力差を作ったコーチに不信感。「スタメン取れなければやめる」の条件つけるべきか迷います問題

 

<サッカーママからのご相談>

息子2人を同じクラブチームに所属させています。長男は元々おっとりしており、サッカーで運動できれば良いくらいでした。次男は大人と話せず引っ込み思案ではあるものの、技術はあります。

息子達が所属しているチームには親子でJリーグファンの方が多くおり、水曜日に早退したり、土日に欠席する方がいらっしゃいます。

それでも、風邪以外で遅刻も欠席もしない息子(次男・8歳)より、Jリーグ観戦のために欠席する子が公式戦でスタメンで出ます。

技術は大差ありません。

引っ込み思案な次男が悪いのでしょうが、月謝8000円払って、休まずに練習に行ってるそのチームでは上手くならないという事でしょうか?

私は、休んでも上手ければ良いという育て方をしたくありません。

それでも、彼にとって環境が変わる事の方が良くないのかもと悩みますが、この環境のままで良いとも思っていません。

毎回試合のたびにイライラしてしまいます。

チームを変えるべきか、スポーツの世界はそういうものだと考えるべきか 教えて下さい。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

ご長男のことも書かれているのですが、8歳男児は次男さんということで話を進めますね。

2人の息子さんたちが所属しているチームは、練習を休んだとしても上手な子を試合に出すとのこと。生真面目に練習に出続ける次男さんを不憫に感じているようです。

そこで私から4つほどアドバイスさせてください。

 

■公式戦だけに目を奪われずに、チームの指導方針を今一度確認してみよう

1つめ。公式戦ばかりに目を奪われないこと。

お母さんの書かれていることだけでみると、実力主義で指導するクラブかもしれません。そこにお母さんは不満を感じておられるようですが、こういったクラブの指導方針や、クラブが掲げるミッション(社会的使命)、ビジョン(目指すべき姿)を入団を決める際に確認してから入れたでしょうか。

どんなことを掲げているか。それをチームのホームページなどで今一度見直してください。

もし、子どもを主体に全員がサッカーを楽しめる環境を目指しているようなら、息子さんは公式戦に出られなくてもその後にB戦と呼ばれる試合でプレーしているのかもしれません。

ほかには、例えば練習試合等を組むなどして、年間を通して全員に同じだけプレー機会を与えるようにしているクラブは少なくありません。

ぜひ公式戦だけ注目するのではなく、息子さんが練習試合や練習で頑張っている姿に視線を送るようにしてください。

 

■「上手ければいいわけではない」には賛成、自分の力で変えられないこと(=他人)に翻弄されないで

2つめ。コーチを始めとした、周囲の大人は変えられません。そこを今一度こころに留めてください。

練習に来ない子どもをどう扱うかはさまざま考え方があります。それはチーム(もしくは担当コーチ)の考えによりますが、私たち保護者はそこを矯正も強制もできません。お天気と一緒です。

自分の力で抗えないものに抵抗したり、がっかりするよりも、ご自分のお子さんの顔をもっと観察し対話することにエネルギーを使いましょう。

何より、他人の子どもが練習を欠席しているか否か、試合に出たかどうかを気にしているご自分自身をどう思われますか? ほんの少しでも自己嫌悪に陥る瞬間があるのであれば、このことについて考えあぐねるのはやめましょう。

他方、練習に出ていない子が先発したことを息子さんが怒っているのであれば、自分でコーチに「おかしくありませんか?」と言えるといいなと思います。

もちろん無理強いは良くないですが「自分で言ってみたら?」とやさしく背中を押してもいいでしょう。子どもが気にしなければ、親が干渉する必要はありません。

お母さんが書かれている「上手ければいいわけではない」の意見に、私も大賛成です。そして、息子さんは真面目に練習に出ています。じゃあ、それでいいではありませんか。

サボっても俺は上手いから試合に出られるんだと、自慢するような子どもでなくて良かったではありませんか。

無論、他の子どものことはわかりません。要するに、他の人の子育てや、変えられないクラブの価値観に翻弄されてはいけません。人は人、自分は自分です。 

 

■子どもがサッカーを楽しんでるのに親がチームにネガティブな感情を持つのはマイナスになる

3つめ。わが子がサッカーを楽しんでいるのなら、チームにネガティブな感情を抱くのはマイナスになると心得ましょう。

お母さんは「技術は大差ない」と書かれていますが、サッカーの評価は足下のスキルだけではありません。どこまでサッカーをご存知かはわかりかねますが、ひとつ言えるのは、お母さんの評価はチームとは関係ありません。

サッカーについてはチームに任せること。親はなるべく評価せずに頑張ったり努力するプロセスだけを見て「頑張ってるね」と励まし続けましょう。

息子さんが試合に出られないことで、こころが揺れるのはよくわかります。そこで「残念だったね」と子どもの感情に共感するのはよいことです。

が、お母さんが子どもの「悔しい」という感情に同化してはいけません。わが子が評価されなかったり、何かがうまくいかないたびに親が揺れていると、子どもの自己肯定感は下がります。

なぜならば、試合に出られない自分は愛されない存在、という受け止めになるからです。したがって、試合に出られなくても「サッカーが好きならいいじゃない。真面目に練習に通っていてすごいなってママは思ってるよ」とほめてあげてください。

自分が成果を出さないとママの機嫌が悪くなる――そのような日々は子どもにとって針のむしろです。

子どもにとって家庭は安全基地であるべきです。嫌なことがあっても、お母さんの笑顔を見るとホッとする。うちのママは結果じゃなくてプロセスだけ見てくれると子どもに伝わるように接してください。

  

■主体的に取り組む子どもが伸びる! チーム状況や子どもの気持ちを観察し続けて

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

4つめ。とはいえ、クラブがB戦を組むといった配慮がなかったり、息子さん自身が「もっと試合に出たい、チームを替わりたい」と言うのであれば、もう少し試合に出られそうなクラブを探しましょう。

以前は何人も選手を抱えてふるいにかけ勝利のみを目指す。出して!と 頼んで前に出てくる子どもに、コーチが「上手くなってからね」と両手で押さえる姿を私は何度も見ました。

お母さんは「スポーツはそんなものか」と書かれていますが、スポーツの捉え方は時代とともに変化してきています。

とにもかくにも子どもの意思を尊重してください。子どもの気持ちを無視してクラブを渡り歩く親御さんは少なくないです。そうしてしまうと、うまくいかない時に子どもは親のせいにし始めます。

主体的に取り組んだ子どもが必ず伸びます。サッカーのスキルよりも、息子さんに笑顔があるかどうかに注目を。そして長男くんにもぜひ目を向けましょう。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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