ひとり旅の魅力とは? 旅先でおいしいお店をどう探す? 旅番組ディレクターとホンネ座談会!
読売テレビの人気旅番組「遠くへ行きたい」の女性ディレクターのお二人と一緒に、秋の旅特集のテーマである“ひとり旅”の魅力、これからしたい旅などについて、ホンネトーク。旅取材のプロならではのティップスやエピソードも必読です!
( Index )
メンバー紹介【テーマ #1】ずばり、女性の旅は増えていますか?【テーマ #2】ひとり旅の魅力を再発見!【テーマ #3】“映えより笑い” 。今、ニッチな旅が面白い!【テーマ #4】旅とSNS。どう使う?【テーマ #5】旅番組のロケの思い出「想定外を楽しもう!」【テーマ #6】おいしい飲食店の探し方読者のみなさんへ! 「今、して欲しい旅」
メンバー紹介
左から)
ディレクター福島
TBS系「日立 世界ふしぎ発見!」のディレクターを経て、「遠くへ行きたい」ディレクターに。学生時代はバックパッカーとしてインドやカンボジアなどを旅をしていた、生粋の旅好き。プロフィールの写真は、「遠くへ行きたい」のロケハンで北海道の木古内を訪れた際、みそぎ体験をしたときのもの。
ディレクター吉田
「遠くへ行きたい」を担当して17年のディレクター。最近のオススメの旅先は、熊野古道と尾道。子どもと一緒に楽しむ旅のスタイルを模索中。
編集S
秋旅特集の担当編集。公私ともに旅が好きで“トラベルワークバランス”をどう整えるかが常に課題。旅取材の経験も多数。はじめてのひとり旅はスペインのアンダルシア。中学生の頃の夢は、もちろん(?)ミステリーハンター!
【テーマ #1】ずばり、女性の旅は増えていますか?
annaでは「わたしを甘やかす、秋のひとり旅」をテーマに秋の旅特集を公開します。女性ひとりでも気軽&身軽に楽しめる旅のスタイルやディスティネーションが増えているという背景から企画されましたが、お二人の周りではどうですか?
吉田
ひとりで旅に出る女性は年々増えていると思います。「遠くへ行きたい」のロケでは、観光都市だけではなく全国津々浦々の市町村に行くことが多いのですが、ひとり旅とおぼしき女性をよく見かけますよ。みなさん、情報を上手に集めて、本当に自分が行きたい場所を見つけて旅している印象です。周りに流されることなく、自分自身が本当に求めている旅をしている人が多いと感じます。
【テーマ #2】ひとり旅の魅力を再発見!
旅は自分らしさを取り戻す時間
ひと昔前まで「女性のひとり旅」というと、少し後ろ向きなイメージを持たれがちでしたが、今は社会の多様化やSNSの進化によって、旅のスタイルも多岐にわたるようになりました。今、改めて「ひとり旅」の魅力ってどこにあると思われますか。
福島
私は女性のひとり旅は大賛成!
自分で考えて決断して行動することで、おのずと自分に自信がつくんです。自分が何を好きで、何を嫌いか、どんな瞬間が好きで、受け入れられないことは何か――そのようなことが鮮明に感じられるから、自分をより深く知ることができる。
編集S
自分と向き合い自分を知り、自分らしさを取り戻す時間ですね。様々な価値感にふれ視野が広くなるといった外向きな変化もありますが、自分の内側に向き合うことの影響も確かにあります。
福島
そう。そしてそれが、不思議と心のデトックスにつながるんですよね。自分にも自信がつくし、いいことだらけ(笑)。
吉田
仕事の延長線上のひとり旅の話ですが、ロケハンの時、現地の人と会話をしながらその土地のことを知っていく過程がすごく楽しいんです。ひとり旅は、他者との関わりを通して自分自身を見つめ直す大切な時間。社会が多様化する今だからこそ、ひとり旅の魅力が際立つのかもしれません。
【テーマ #3】“映えより笑い” 。今、ニッチな旅が面白い!
普段、ロケなど仕事でいろんな旅を体験されていますが、ご自身の好きな旅のスタイルについて教えていただけますか?
福島
“映えより笑い”ですかね。
王道の観光地よりも、マニアックでニッチな場所を巡る旅が好きですね。旅の醍醐味は、特別な出会いや体験にあると感じているので。
岩手の遠野にて「河童釣り」に挑戦する、俳優の前川泰之さん。2023年8月13日放送回より ⓒytv
福島
今年の夏は、以前番組(「遠くへ行きたい」)で別チームが取材した岩手の遠野に行きたいと思っています。そこは、民俗学者・柳田國男の「遠野物語」の舞台になったところで、河童(カッパ)や座敷童子など妖怪伝説や不思議な民話がたくさん残されているところ。しかも河童を捕獲したら1000万円の謝礼も出るそうです(笑)。SNSを見ていても、他とは違うニッチな旅の体験をアップしている人が増えている気がします。
【テーマ #4】旅とSNS。どう使う?
確かに。マニアックでニッチな旅のコンテンツはつい見続けてしまいます。一方、旅の楽しみのなかには、旅の思い出を仲間と共有したり、SNSでシェアしたりするところにもあると思いますが、SNSとの向き合い方についてはどうお考えでしょうか。
福島
旅のアウトプットは手帳(「ほぼ日手帳」を愛用)に写真を貼ったり面白かったことを書いたりしています。旅に関係する仕事をしているので、アピールポイントのひとつとしてSNSに投稿することはもちろんありますが、前者は自分のためだけの旅を楽しむという切り分けですね。
吉田
私は、SNSに積極的に投稿するタイプではなく、旅先の情報を得るために活用しています。本当に心に響いた瞬間を捉えた1枚の写真に言葉を添えて投稿することもありますが、基本的には旅そのものを楽しんでいます。
【テーマ #5】旅番組のロケの思い出「想定外を楽しもう!」
旅番組を手掛けるお二人ならではの、これまでのロケで印象的だったエピソードについても知りたいです!
福島
たくさんあるのですが、ハードなものから(笑)。「世界ふしぎ発見!」のADになって初めてのロケがアフリカ南東部にあるマダガスカルでした。
参考画像)マダガスカルの国獣「キツネザル」。写真/pixta
福島
ジャングルでサルを探す内容だったんですが、マラリア対策の薬が効きすぎて熱を出し、しまいには現地の病院に入院することに……。そのときのミステリーハンターは竹内海南江さん。その時、竹内さんから秘境を旅する心得やサバイバル術をたくさん教わりました。その経験があって、今も頑張り続けられています。本当に感謝しています。
編集S
竹内さん直々のアドバイスを得られるとは、ミステリーハンターに憧れていた私からしたら、うらやましい気持ちもあります(笑)。ひとり旅に限らず、旅を楽しくするのに「調べ・備え」は重要なエッセンスですね。
福島
本当に! ADは三脚担いで歩き続けるのに、こともあろうかジャングルにデニムで行ってしまうほど、知識不足でした。
吉田
ロケでは想定外のことが起こるのが当たり前です。天気予報はもちろんのこといろいろ調べてもいざ現地に着くと、状況が全く違うということも(笑)。でも、それが逆に新たな発見や出会いを生むことがあるのも旅の魅力ですよね。
徳島を旅する板谷由夏さん。2024年4月7日放送回より ⓒytv
吉田
例えば、俳優の板谷由夏さんと一緒に徳島県を巡るロケで、本来吉野川をカヌーで下るアクティブな旅を企画していたのですが、1週間ずっと雨が続いて。ロケ先で(代替の)旅のプランを作る事態に。でもそのおかげで、旅先の歴史や文化を新たに見つけることができましたし、そういった経験がいつも自分自身を成長させてくれると感じています。
【テーマ #6】おいしい飲食店の探し方
旅先での楽しみのひとつは食! 番組作りでもおいしい飲食店を探すのは大事なミッションだと思いますが、どのようにリサーチされていますか?
吉田
Web検索も欠かせませんが、現地に行って実際にお店を見ながら“足”で探します。地酒や郷土料理がメニューにあるお店に対しては、ぐっと信頼感が増しますね。
編集S
わかります。同じ“テロワール”のお酒と料理は相性抜群ですし、それらがつくられた場所で食べるとより一層おいしく感じられそうです。
福島
私はお肉が好きで、土地名×お肉の銘柄などで検索して、お肉の卸業者が経営しているお店を探すなど、以前は徹底的にリサーチする派でした。
でも「遠くへ行きたい」を担当するようになってから、スタイルが変わりました。偶然見つけたお店が意外とおいしかったなどの経験から、現地での出会いを楽しむようになったんです。駅で観光案内所の人におすすめのお店を聞いて。そのお店の店主にまたおすすめを聞いてといった具合。
編集S
グルメリレー、楽しそう! 最初の観光案内所の人がカギを握ってますね(笑)。
福島&吉田
まさにそう!
読者のみなさんへ! 「今、して欲しい旅」
最後に。旅の大先輩のお二人から、読者のみなさんに旅を楽しむコツやアドバイスをお願いします!
吉田
プライベートでは、子どもと一緒に旅をすることが多いんですが、半分は計画的に半分はフリーにといった割合で、旅程に余白を作るようにしています。
子どもの機嫌で予定が変わることもしばしばありますし、いざ現地に行ってみるとやりたいことが変わってくるケースも多い。また、ハプニングが起こっても、余白があるとそれを楽しむ余裕を持てます。なりゆきで旅のプランがどんどん変わっていくのも、楽しい旅のひとつの姿だと思います!
編集S
今だと地図や翻訳アプリなど、デジタルツールがフォローアップしてくれますしね!
福島
旅に限らず、自分の「好き」や「 欲望」を止めないことですね。好きなことや推しがある時点で、もう、人生最高なんですよ。私は歴史好きで城巡りが趣味なんですが、その「好き」がきっかけで性別や年齢、国籍を問わず幅広い城好き、歴史好きな友だちがたくさんできて、とても楽しいですね。
編集S
今は、推し宣言も気軽になりましたし、仲間も見つけやすいし、もっと「好き」を究められます。
今回の座談会をアレンジしてくださった 「遠くへ行きたい」プロデューサーの森さんが「ひとり旅だからこそ自分が開く」とおっしゃっていたのがとっても印象的で忘れられません。自分しかいないから自主的に行動しないといけない。ぼっちで閉じているようで、人とのつながりを自分からたぐりよせる。実は外向的な旅のカタチなのかもしれませんね。そしてそれにはそこそこの気力と健康がものをいうなというのが、個人の実感です。
福島
そうなんです。特に今思うのが、20代のバイタリティや好奇心は二度と帰ってこないとっても大事なもの。今しかない気持ちを大切にして欲しいですね。
編集S
まさに、思い立ったが旅の吉日! 今の気持ちに正直に、今しかできない旅を楽しみたいですね。
参考/読売テレビ「遠くへ行きたい」 写真/pixta、ⓒytv イラスト/illust AC 取材・文/吉村セイラ