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現役書店員が選ぶ、社会について考える1冊──「句読点」編【NHK100分de名著キャンペーン2024】

NHK出版デジタルマガジン

現役書店員が選ぶ、社会について考える1冊──「句読点」編【NHK100分de名著キャンペーン2024】

書店インタビュー


NHK「100分de名著」シリーズ おすすめの1冊(第2回)

シリーズ開始から13年で累計1000万部の発行を記録し、現在全国の書店とNHK出版公式サイトにてキャンペーンを実施中の、NHK「100分de名著」シリーズ。

今回は、現役書店員の方に当シリーズの中からおすすめの1冊を紹介していただきます。

第2回は島根県出雲市の商店街にお店をかまえる書店、「句読点」の店主・嶋田さんにお話をうかがいました。

※第3回は近日公開予定

――まずは簡単に、お店の紹介をお願いします。

嶋田:2021年の10月に、古本と新刊を扱う書店としてオープンしました。店内は約40平米(約13坪)で、在庫は4000冊くらい。そのうち新刊は400冊くらいで、あとは全部古本です。

商店街のなかにこぢんまりとたたずむ

嶋田:大学在学中くらいから、会社に就職するよりも自営業をしたいと思っていました。もともと本は好きだったのですが、漠然と将来のことを考えていた頃に、全国あちこちで個人で本屋を営業している人たちの存在を知り、いいなと思ったのが開店のきっかけです。

 大学を卒業して4年ほど出雲のゲストハウスでアルバイトをしていたのですが、出雲に個人経営の書店がないということもあり、「じゃあつくろう」と。「都市部よりも地方の方が余白や偶然性に開かれているのではないか」と思ったことも、出雲を選んだ理由のひとつです。

古本と新刊が混ざりあう店内。お客さんは地元の人が多い。

政治に対して無力感を持っている人に

――今回選んだ本は、『NHK「100分de名著」ブックス オルテガ 大衆の反逆』ですね。

嶋田:「100分de名著」は実家に住んでいた頃から放送を見ていました。おもしろいと思っていたのですが、今回選んだオルテガの回で「『100分de名著』すごいな!」と思ったんです。

 『大衆の反逆』のことも、講師の中島先生のことも全然知らなかったのですが、目からうろこが落ちました。フランスの思想家であり政治家であるトクヴィルの、「中間領域をたくさん持っている社会は民主主義がちゃんと機能している」という言葉が紹介されていて、特に印象に残っています。

――ここでいう中間領域とは、行政と個人の間の領域、つまり地域や趣味や仕事でつながった、様々なコミュニティを表しますね。

嶋田:そうですね。その頃はまだ本屋を開いていなかったのですが、「世の中にこういった中間領域となる場所があることは大事なんだな」ということが印象に残っていて、店をつくるときにこの本をすごく参考にしました。単に本を売り買いするだけの場所ではなく、偶然の出会い、思いがけない本との出会いをつくれる場にしたいなと。

 その一環として、定期的に読書会をしています。忙しくて本を読む時間がないことを逆手にとって、読書に集中するだけの「純粋読書会」を月2回やっています。読書の時間が終わったら座談会。読んでいた本のことでも、関係ないことでも話し合える場にしています。それとは別に、毎月1冊課題図書を指定して、月末までに読了して語り合うというオーソドックスな読書会も続けています。

 リピーターの方も増えてきているので、ちょっとずつコミュニティができつつある実感はありますね。

 本書の中で中島さんは、チェスタトン の言葉を引用して「平凡なことを続けることこそが非凡なことである」とおっしゃっているのですが、日々お店を続ける中で、この言葉をすごく大事にしています。

――『大衆の反逆』が実生活にすごく活きているんですね。この本はどういう方におすすめしたいですか?

嶋田:「ある程度政治に関心を持っているけれど、具体的にどうすればいいのかわからない」という人にすすめたいですね。

 今の日本の政治について、まずいと思いつつ、「投票に行ったところで自分たちの望むような結果は得られない」という無力感を持っている人って多いと思うんです。

 でも、本書の特別章に、「投票だけが政治参加ではなく、政治に参加するルートはたくさんある」ということが書いてあって、僕は「自分たちにできることはまだまだあるんじゃないか」と思っています。本書の中でもたびたび言及されている「トポス」 は地方のほうがしっかり根付いているのではないか、と思ったのも出雲に本屋を開いた理由として大きかったです。この店がそういうふうに機能しないかなと。

『100分de名著』は、その道の専門家の方がこれ以上ないくらいに的確にまとめてくれていて、全然知らなかった世界を知ることができる。若い人にもっと本を読んでほしいと思っているのですが、具体的に何を読んでいいかわからないという声も多く聞くので、そのときにこのシリーズをすすめています。

店主・嶋田さん。「『100分de名著』を読むと、縁遠かった本がすごく身近に感じられます」

句読点
X(旧Twitter)アカウント:@books_qutoten
インスタグラムアカウント:@books_qutoten

今回ご紹介した『NHK100分de名著ブックス オルテガ 大衆の反逆』は、全国の書店、またNHK出版の特設ページでも展開しています。

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