絶滅危惧種のゾウ、川の激流で命を落とす 動物園に戻りスタッフと最後の別れ(インドネシア)
インドネシア・バリ島のバリ動物園は17日、飼育していた45歳のスマトラゾウ“モリー(Molly)”の死を発表した。モリーは16日、ゾウ使いともう1頭のゾウとともに日課の散歩に出かけた。しかし、川を渡ろうとした際、大雨で増水した川の激流に流されてしまった。モリーは17日の早朝、川底の岩場で発見された。
【動画】動物園の敷地内で埋葬されたスマトラゾウ。スタッフたちは最後の別れを告げた
―穏やかで安全な川のはずが…
バリ島のギャニャール県にあるバリ動物園によると、通常はチェンチェン川を渡るルートは流れが穏やかで安全だった。しかし、数日の集中豪雨で水位が急上昇した。16日も強い流れが発生し、モリーはバランスを崩して流された。もう1頭のゾウとゾウ使いは無事に川を渡ったが、モリーは激流の勢いに抗うことができなかった。
―雨季の自然災害が引き起こした悲劇
インドネシアでは毎年10月から3月にかけて雨季が続き、大雨による洪水や土砂崩れが頻発する。バリ島も例外ではなく、集中豪雨が川の水位を急上昇させることがある。観光地として人気のバリ島だが、自然災害のリスクは常に存在している。
バリ動物園はバリ自然資源保護局(BKSDA)や地域災害管理庁(BPBD)、地元コミュニティと協力して、川沿いや周辺地域の捜索を進めた。そして翌朝6時30分、モリーの遺体を発見した。
―絶滅危惧種の貴重な1頭を失う
世界自然保護基金(WWF)によると、スマトラゾウは「絶滅危惧種」で、現在の個体数は約2,800頭とされている。森林伐採や生息地の喪失、密猟が原因で個体数は急減しており、モリーの死は種の存続にとって大きな損失だ。
バリ動物園では、ゾウたちに精神的・肉体的な成長を促すため、遊びや散歩などを取り入れている。チェンチェン川を渡ることもゾウたちの健康維持のための活動の一環だった。しかし、今回の事故を受け、動物園は雨季における安全ガイドラインを見直す方針を明らかにした。
―スタッフと来園者に愛されたモリー
バリ動物園の広報責任者エマ・チャンドラ氏(Emma Chandra)は、モリーの死に深い悲しみを表明した。
「モリーは私たちの家族の一員であり、2013年からともに過ごしてきました。彼女の優しさと人懐っこい性格は、スタッフや来園者の心を癒してくれました。」
「私たちはモリーの死を深く悼むとともに、モリーがもたらした喜びと愛情に感謝します。この困難な状況で捜索活動を支えてくださったすべての方々にも、心からお礼を申し上げます。」
―悲しみの中で最後の別れ
バリ動物園は敷地内でモリーの埋葬を終えた後、Instagramで「モリーは午後8時30分、愛する家に戻りました。埋葬の際に降った激しい雨は、モリーの心優しい存在を思う涙のようでした。安らかに眠ってください、モリー」と追悼メッセージを投稿した。
画像は『Bali Zoo Instagram「It is with a heavy heart that we share the sad news of Molly」』より
(TechinsightJapan編集部 八田理子)