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平日休んだらうちの子だけスタメン外され、仲間に声援送ったら「うるさい」と恫喝。モラハラコーチのもとに居続けていいのか問題

サカイク

友達と遊ぶ約束さえ断ってまじめに参加しているのに、平日休んだからとベンチに。ほかの子も休んでたのに、その子たちはスタメン。なんで?

仲間に声援送ったら「うるさい」と恫喝され、静かにしてると「もっと声出せ」って......。どうしたらいいのか。モラハラコーチの元に居続けさせていいのか? というご相談。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに寄り添いアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

 

<サッカーママからのご相談>

初めまして。いつもサカイクの記事を参考にさせていただいています。

現在、少年サッカーにて活動をしていますが、昨年度の6年生が大きな大会で地域優勝をしたのをキッカケにチームの方針が変わり、平日練習に参加しない子はトップチームへの招集はないとなりました。

ただ、Jr.ユースで頑張りたいやる気のある子は多少技術力がなくても、トップチームへ参加させますとあり、息子はとにかくやる気は人一倍あるため、友達との遊ぶ約束さえ断って全力でチーム練習に励みましたが、現状では4月頃から始まった差別に苦しんでいます。

他の子が休んだ場合には、サボるなとは言われますが試合参加が認められます。息子が休むと即スタメンを外されます。

先日は、スタメンではない理由をお前は平日休んでいるからと言われましたが、当日は、同じく休んでいてもスタメンの子が2人いました。

また、試合に出られないならとベンチで声を張り上げ応援していると、うるさいと恫喝され、静かにしていると、もっと声出せよと言われるしまつです。本人も自己肯定感が下がり、何やっても自分はダメなんだと自信を失いかけています。

同コーチは基本的にモラハラ気質で、他の保護者も諦めています。JFAへの相談も考えましたが、音声などの証拠集めはかなり厳しいと思いますので、ほとんど対処はしてもらえないのではと考えています。

息子は一度辞めると言いましたが、今は再び気持ちを入れ替えて励んでいます。

息子のために何をすべきでしょうか? ご教示いただけますと幸いです。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

地域優勝したことで、もともとモラハラ的なコーチの方のお尻に火がついてしまった。そのため、子どもへの差別的扱いがよりいっそう強くなったとお見受けします。

苦しむお子さんの姿を外から見ているのはお辛いことでしょう。

結論から申し上げると、このチームから去ったほうがいいと私は思います。お母さんからの文面をみると、このコーチは子どもたちの頑張り云々ではなく、現時点でスキルの高そうな子どもをそろえてまずは試合で勝つことを目指しているように映ります。

 

■「頑張り」などの度合いは完全に指導者の主観

ご相談文に「Jr.ユースで頑張りたいやる気のある子は多少技術力がなくても、トップチームへ参加させますとあり、」と書かれていますが、その文言はどの時点でどこに記されていたのでしょうか。

お母さんが「他の子が休んだ場合には、サボるなとは言われますが試合参加が認められます。息子が休むと即スタメンを外されます」と書かれているように、コーチらがよこした上記の文言は、子どもを頑張らせるための幼稚な仕掛けのように私は感じます。

なぜなら、「頑張り」や「多少技術力がなくても」の〝度合い〟は、数字で測られるものではありません。コーチから「頑張っていない」「技術力がなさすぎる」と判断されるわけなので、完全にコーチの主観です。

このような曖昧な指標を持ち出す人物は、おおむね指導の質のスケール(物差し)がこれまた曖昧だった昭和・平成の時代の価値観を引きずっている場合が多いです。

それは彼らだけの責任ではありません。彼らもそのような扱いを受けてきたため、教えられたように教えています。

しかしながら、これだけ日本サッカー協会(JFA)がジュニア指導のあり方について新しい情報を提供し、本人の意欲があれば書籍やDVD、YouTubeなどでいくらでもコーチングの質向上ができる時代です。

それでも、子どもたちに曖昧なことを伝え差別しているのであれば、つける薬はなさそうです。

 

■辞めたいと言われたとき、親はどうすればいいか

一方で、お母さんの行動にも疑問を覚える箇所があります。

息子さんが「一度辞めると言いましたが」とありますが、彼のこのときの決意にお母さんはどのように向き合ったのでしょうか? 辞めることを反対したのでしょうか? 

もし、反対したり、お母さんのほうが慌てたり、躊躇してしまったのなら、もう一度考え直してください。

子どもが「ほかのチームに移りたい」と言ってきて、親がその理由に納得できたのなら、移籍してもいいと私は思います。息子さんは幸いにもサッカーが大好きなようです。でも今、指導してもらっているコーチのことは恐らく好きではないはずです。その理由ももっともです。

もし地域に適当なチームがないのなら、スクールだけ通うといったこともできます。それもないのなら、違うスポーツをしながら、中学になったら再びサッカーをすればいいのではないでしょうか。

 

■親が移籍をリードすると親子間にしこりが残る 家族で対話することが大事

親のほうが移籍をリードしてしまうと、親子の間にしこりが残ります。移籍した先で、似たようなことが起きたり、試合に出られないと、そのことを100%移籍をリードした親のせいにしてしまいがちです。

よって、どうするかを息子さんやご家族の方、お父様がいらっしゃるならみんなでよく話し合いましょう。

その際は、息子さんの気持ちを十分聴くこと。そのうえで、お母さんたち親が大人としてコーチのやり方をどう感じているかを説明してあげてください。

息子さんにもっともよいサッカー環境はどんなものか。これからサッカーをすることでどんなふうに成長していきたいのか。そんなことを話してください。

良くない指導環境であるにかかわらず子どもが移籍を拒むときは、ほとんどの場合長年一緒にやって来た仲間と離れたくないことが理由のようです。

 

■ドイツでは移籍も活発、元のチームに戻っても温かく迎え入れる

日本の少年サッカーの指導環境は、欧州よりも古い感覚です。コーチの態度や指導はもちろんのこと、リーグ戦よりもトーナメントが多い大会運営など環境設計も新しいものではありません。

例えば、ドイツなど欧州では、育成年代の移籍は非常に活発です。地元のプロリーグの下部組織にスカウトされて移籍すると、チームメイトやコーチは「頑張ってきて!」と励まします。そして、移籍してうまくいかず、また元のチームに戻ってきても「また一緒にやろう」と温かく迎えます。

これは、サッカーの育成環境にいる大人たちの価値観が、「(チームの)勝利よりも個の育成」というひとつの哲学で貫かれているからです。どのクラブに行っても、同じ空気感、同じ価値観で子どもがサッカーを楽しめるようになっています。

  

■日本では付き合いのあるチームからの移籍がご法度のように受け止められている

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

対する日本は、「個の育成」が勝利の上に成立すると受け止められています。

加えて、何よりコーチ間の人間関係がウエットです。移籍の希望があっても、いつも練習試合をするチームから子どもを受け入れることはご法度のように受け止められています。

勝つことは、サッカーを追求するモチベーションを保持するひとつの動機付けではありますが、あくまで外発的な動機付けです。

「サッカーが好き」「サッカーってすごく面白い」というような、子ども自身から湧き出る内発的な動機付けには叶いません。

サッカーを継続する土台をつくるのがジュニア期です。それなのに、日本の子どもたちは足元がグラグラしたままサッカーをしているように見えます。

どうか息子さんのためにも、自己肯定感を高められる良い育成環境を親御さんは模索してください。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「叱らない時代の指導術: 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践」(NHK出版新書)

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