Yahoo! JAPAN

【子どもの熱中症】「汗をかかせたほうがいい」は危険な誤解! 正しい暑さ対策とは〔小児科専門医が解説〕

コクリコ

子どもの熱中症対策。旧常識「子どもは汗をかかせたほうがいい」について小児科医・森戸やすみ先生が新常識を解説。子どもに多い病気やケガへの対処法の最新知識を伝える連載「令和の子どもホームケア新常識」第10回。

写真▶【自由研究】頭のいい子”を育てる100均グッズは?〔東大名誉教授も太鼓判〕

【旧常識】子どもは汗をかかせたほうがいい。現代の子育てやホームケアには、私たち親世代が子どもだったころとは大きく変わってきているものが多数あります。子ども時代の記憶を頼りに、古い常識のまま子育てをしていませんか?

本連載【令和の子どもホームケア新常識】では、子どもに多い病気やケガへの現代の正しい最新対処法などを、小児科医・森戸やすみ(もりと・やすみ)先生が解説。

第10回は「子どもは汗をかかせたほうがいい」という旧常識について。

無理に汗をかかせなくても汗腺は発達する

今年(2025)も全国的に厳しい暑さが続き、心配なのが子どもの熱中症。「子どもは汗をかいたほうがいい」「冷房は子どもの体に悪い」と言われて育ったママパパ世代の中には、暑さとどう付き合えばいいのか、迷ってしまう人もいるのでは?

令和の現在はどう考えられているのか、森戸やすみ先生に聞きました。
───
「子どもは汗をかかせたほうがいい」といわれる理由のひとつは、「汗をかかないと汗腺が発達しない」という説があるからだと思います。でも、少し誤解している方が多いかもしれません。

そもそも汗には、「体温を一定に保つ」という大切な役割があります。暑さを感じると脳の体温調節中枢が指令を出して汗をかき、その汗が蒸発するときに、皮膚の表面から熱を逃がして体温を下げているのです。

汗を分泌しているのは、全身の皮膚にある「汗腺」という器官。実はすべての汗腺が汗を出せるわけではなく、汗を出す力のある「能動汗腺」と、出せない汗腺があります。

ある研究によると、能動汗腺の数は2歳半ごろまでに決まり、大人になっても変わらないことがわかっています。2歳半ごろまでに適度に汗をかく習慣をつけて、一定程度の数の汗腺を能動汗腺にすることが大切なのですね。

ただ、「汗をかく習慣をつける」というのは、「暑い環境で無理にでも汗をかかせる」という意味ではありません。近所を散歩したり公園で遊んだりすると、自然と汗をかきますし、涼しい室内にいても動いたり踊ったりすれば汗が出るでしょう。通園があるお子さんなら、行き帰りの時間でも暑さを感じるはずです。

このように1日にトータルで1~2時間ほど、暑い環境にいたり、運動したりすれば、数日から2週間程度で体が暑さに慣れ、汗をかけるようになるといわれています。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。「意外と短い時間でいいんだな」と思われたのではないでしょうか。

元気に生活をしていれば、汗をかくチャンスはたくさんありますので、それで充分です。熱中症のリスクもある中、子どもに暑さをがまんさせたり、無理に汗をかかせる必要はないでしょう。

冷房は子どもが快適な温度設定に

では、「冷房は子どもの体に悪い」というのは、どうでしょうか。実は、この説に医学的な根拠はありません。もちろん、体の冷やし過ぎはよくありませんが、それは大人も同じですよね。

温暖化によって年々気温が高くなり、毎年夏は災害級の暑さが続いています。そんな過酷な暑さを昔のように自然の風だけでしのぐのは無理ですし、むしろ危険です。特に子どもは暑さに弱く、熱中症になりやすいので、積極的にエアコンを使っていただきたいと思います。

子どもが暑さに弱く、熱中症になりやすい理由のひとつは、体温調節機能が未熟なことが挙げられます。「能動汗腺の数は2歳半ごろに決まる」とお伝えしましたが、汗腺から汗を出す機能は、7~9歳ごろまではまだ未熟です。

年齢が低いほど、暑さを感じてもすばやく十分な量の汗をかくことができません。子どもが汗っかきに見えるのは、大人に比べて体表面積が小さいのに、汗腺の数は変わらないから。汗腺の密度が高く、たくさん汗をかいているように見えるのですね。

また、気温の影響を受けやすいこと、体が温まりやすく冷めやすいこと、もともと体内に水分と塩分のたくわえが少ないうえに自分で補給するのが難しいこと、年齢にもよりますが、自分で脱ぎ着して体温調節できないことなども、熱中症になりやすい理由に挙げられます。特に幼い子どもは「暑い」「気分が悪い」と言葉で訴えることが難しいので、お子さんの様子をよく見るようにしてください。

エアコンを使う際も同じですね。「冷房の設定温度は何度がいいのか」と聞かれることがありますが、エアコンの機械や環境などによって設定温度と実際の温度が異なることも多々ありますし、数字ではなく、お子さんの様子で判断するのがよいと思います。

汗をびっしょりかいていたり、顔が真っ赤であれば設定温度は下げたほうがいいですし、寒がっていれば当然上げるべきです。子どもも大人も快適に過ごせる温度に設定しましょう。

「冷房をつけたまま寝てもいいのか」ともよく聞かれますが、特に小さなお子さんの場合、寝ている間に大量の汗をかくと熱中症のリスクが高まります。夜中に何度も起きてしまうほどの暑さなら、睡眠不足も心配です。直接お子さんに風が当たらないように注意して、上手に使用すればよいのではないでしょうか。

また、同居するおじいちゃんおばあちゃんが「エアコンは贅沢品」「冷えは体に悪い」などと、エアコンを使いたがらずに困っているご家庭もあるようです。毎年、熱中症で死亡する悲しいニュースがありますが、死亡例で圧倒的に多いのは高齢者です。年齢を重ねると、暑さや口の渇きを感じにくくなることがわかっています。

平均気温が上がっている昨今、エアコンは贅沢品ではなく、命を守るための必需品です。子どもに暑さをがまんさせたら強い子になるわけではありません。大事なお孫さんのためにも、おじいちゃんおばあちゃん自身のためにも、冷房を適度にきかせて命を守る行動をとっていただきたいと思います。

熱中症予防にはこまめに水分と塩分の補給を

熱中症は、何より予防が大切です。汗をかきすぎて体内の水分や塩分が不足することで起こるので、こまめに水分や塩分を補給しましょう。水やお茶と、塩分のあるおやつを一緒に摂るのがいいですね。

乳児の場合、水分補給は母乳かミルクで。特別量を増やす必要はないので、欲しがったらあげます。ミルクは薄めずに、いつもどおりの濃度で作ってください。離乳食を食べ始めた子なら水やお茶でもいいですし、母乳やミルクの回数を増やしても。欲しがったら、その都度あげましょう。

特に夏場になると、市販のスポーツドリンクを「健康にいいから」と、お子さんに飲ませているケースがよく見られます。たしかに水分の補給にはなりますが、スポーツドリンクは糖分が多く含まれた清涼飲料水です。

毎年暑い時期になると、清涼飲料水を大量に飲むことで起きる急性の糖尿病「ペットボトル症候群」が問題になっています。甘いお菓子は一度にたくさん食べられませんが、甘い飲料は飲めてしまうものです。熱中症予防のための水分補給なら、水やお茶のほうが安全だと思います。
〔小児科医:森戸やすみ〕

【子どものホームケアの新常識 その10】
暑さをがまんして無理やり汗をかかせなくても、汗腺は発達する。命を守るためにも、エアコンは積極的に使ってOK。

取材・文/星野早百合

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 『自分は小さい』と思いこんでいる大型犬→小型犬が通った隙間を通ろうとして…まさかの『切なすぎる光景』が話題「なんで?って顔w」「可愛い」

    わんちゃんホンポ
  2. FANTASTICS・世界が仮面ライダーに! 日野友輔へピシャリ「お前、むしばむぞ」 映画『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』上映会

    動画ニュース「フィールドキャスター」
  3. 肉球をマッサージしてもらう犬→至福の一時かと思いきや…想定外だった『オナラ連発』に68万再生の反響「初めて聞いたw」「可愛いw」と爆笑

    わんちゃんホンポ
  4. PLAZA限定!tower×スヌーピー 日常生活に役立つおすすめ便利グッズ2選♪

    ウレぴあ総研
  5. 「これ引きに北海道行きたい」世界自然遺産・知床半島で引ける“シャチ(幸)みくじ”が可愛い「シャチあれ!」

    Domingo
  6. 北斗晶「申し訳ないと思いつつも」毎年ファンから送られてくる品「有り難くいただきます」

    Ameba News
  7. 【ELIONEさん(沼津市出身)の新アルバム「Just Live For Today」】つくりものではない。うわべだけでは決してない。ヒップホップへの信頼と崇敬の中に咲く「篤実」の花

    アットエス
  8. 花火の夜にシャボン玉 伊賀・陽夫多神社で31日

    伊賀タウン情報YOU
  9. 『八月納涼歌舞伎』第三部『野田版 研辰の討たれ』の特別ビジュアルが公開 勘九郎主演で新たな研辰が誕生

    SPICE
  10. 実は“激レア”⁉昭和レトロな配色がかわいい『赤胴車』を阪神西宮駅で見てきた 西宮市

    Kiss PRESS