川崎市営霊園 「無縁墓」進まぬ認定 職員らも対応に苦慮
川崎市営の霊園2施設で、無縁化の可能性がある墓の対応に市は苦慮している。継承者や縁故者と連絡が取れず、5年以上管理料を滞納している墓は約450件。しかし「無縁墓」と認定するには多くの手続きを要するため、その数はわずか5件にとどまっている。
「無縁墓」は、継承者や縁故者がいなくなったり管理費が一定期間支払われていない墓を指す。高齢化や過疎化により全国的に増加傾向にあり、管理料の滞納や、老朽化が進むことで倒壊の危険性もはらむ。
川崎市営の「早野聖地公園」(麻生区早野)と「緑ヶ丘霊園」(高津区下作延)を合わせ、3万8454基の墓のうち、5年以上にわたり管理料が未納になっている墓は約450件。中には10年以上、縁故者らと連絡が取れていない墓もあるという。しかし、こうした無縁墓の可能性がある墓も、正式に認定しなければ撤去などはできない。また、その基準も各自治体の判断に委ねられており、認定手続きには多くの時間と労力を要する。
川崎市によると、無縁墓の可能性のある所有者に管理料の催促など通知を行い、返答のない場合は当該区画に看板を掲げ申し出を呼び掛ける。それでも応答がなければ、1年程度の猶予の後、官報への掲載手続きを経てようやく認定となる。
市建設緑政局緑政部霊園事務所の担当者は「1年以上かけても親族を探せない場合もある」と対応に苦慮する。実際、市が現在、無縁墓と認定したのは5件のみで、それ以外は調査中だという。
緑ヶ丘霊園に合葬墓
市はこうした状況を踏まえ、2019年に緑ヶ丘霊園に合葬型墓所を設置した。約2万件の遺骨を埋葬できるため、「墓じまい」をして移設する継承者も多い。毎年約300の募集枠に対し、申込数は平均5倍以上だという。
市内で民間墓地を管理運営する寺院の住職は「高齢化や核家族化など時代は急速に変化しており、今の時代に合った供養の形が求められている。民間、公営を問わず近年、合葬墓の需要が高まっている。無縁墓対策を含め事前に近親者で話し合う事も大切」と話す。家族が集うお盆シーズンを機に、無縁墓にならない対策の必要性が求められている。