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家族で支える在宅介護の体験記

「みんなの介護」ニュース

中村 亜美

「在宅介護って実際どうなの?」

「家で介護しているけど、他の人ってどんな感じなの?」

このような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?

私は、今年、初めて在宅介護を経験しました。

私は在宅介護をしたというほど、主体的に動いていたわけではないので、正しく言えば「在宅介護のお手伝いをしていた」という表現が正しいかもしれませんが、そこで感じたことや大変だったことなどを、この記事で紹介していきたいと思います。

在宅介護のリアルを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてほしいです。

祖父の在宅介護と家族の想い

祖父の在宅介護は3週間程度でしたが、突然のことで家族は戸惑うばかりでした。

しかし、在宅で祖父と過ごした3週間の中で、かけがえのない時間を過ごし、家族の心の整理ができたともいえます。

ここからは、祖父が余命宣告されてから家に帰り看取りをするまでのエピソードを紹介していきます。

突然の余命宣告

当時祖父は、94歳。要介護1の認定を受けてデイサービスに週2回通っていて、私の両親と祖母と4人で暮らしていました。

多少の物忘れはあるものの、自分の身のまわりのことは辛うじてできており、近くのスーパーに自転車で買い物に行くのが日課となっていました。

趣味は、家周辺の用水路周りを綺麗にすること。

近所の方にもよく褒められるほど、綺麗に花を咲かせていました。

しかし、この頃から、よく「体がえらい(つらい)。もうあの世へ行きたい」とよく言うようになっていました。

ネガティブ発言が増えてきていて、なんとなく辛そうな姿もみてとれたものの、その他の祖父は普段と変わらない様子。

家族も安心しきっていて、定期健診以外は特に病院にかかることもなく過ごしていました。

祖父は、膀胱がんを患っておりますが、進行の様子はないと言われていたため、いつものように総合病院に定期健診に行きました。

定期健診でいつものように採血をすると、医師の様子が変わります。

「貧血がひどく、すぐにでも輸血しなければなりません。膀胱がんが進行して腎臓を圧迫しているため、いつ腎不全を起こしてもおかしくない状態です」と医師が説明した後、すぐに入院が決定しました。

そして、入院後の面談で余命は1カ月程度であることが告げられました。

治療する道はないため、退院後は療養型施設か在宅での介護かを選択しなければなりません。

突然の祖父の余命宣告に加え、すぐに決断しなければならない大切な選択に母も頭を抱えてしまいました。

退院後の在宅介護を決意

結局、1週間ほどで退院することになりました。

入院中、リスク回避のためにペースト食しか許されず、自由の利かない生活をしていたように思いました。

病院側にも都合があるのでしょうが、ほとんどのことを制限された影響もあり、ADLは低下。意識もうろうとする祖父をみては切なくなったのを覚えています。

そんな姿を見て心を痛めていたのは、私だけではありませんでした。

退院後の在宅介護に対し、消極的であった祖母は、祖父の姿を見て「好きだったウナギをせめてもう一度食べさせてあげたい」というようになりました。

キーパーソンである母も在宅介護経験がなく、不安を抱えていたようでしたが、医療知識のある看護師の叔母の後押しもあり、退院後は祖父を自宅に戻すことを決意。

その旨を担当医に伝え、家に帰宅する準備をするのでした。

在宅介護をするための準備

病院を退院して在宅介護をするときには、以下のような準備が必要です。

往診医の確保
訪問看護サービスの利用準備
ケアマネージャーに状況を報告
必要な福祉用具のレンタルや購入の手続き

祖父が退院する際に、担当の看護師がパイプ役として往診を行っている医師を紹介してくれます。

退院した当日、紹介された往診医のもとへ母が行き、紹介状を渡して祖父の生活状況などを説明しました。

また、母がこのとき心配していたのが福祉用具の準備でした。

「ベッドや手すりがほしいけど、お願いしても届く頃にはいつ届くかわからない」と心配していましたが、ベッドなどの福祉用具はケアマネージャーを通して注文し、退院した次の日に到着。

福祉用具のレンタルや購入品が届く速度は状況によって異なりますが、早めに届けてくれることが多いようです。

オムツやウエットティシュなどの必要物品も揃え、陰部洗浄ボトルにはドレッシングボトルを利用していました。

在宅介護が始まってから

在宅介護が始まってからは、私が午前中、午後は母と叔母が交代で祖父の介護を行いました。

家に帰った途端、安心したのか嘘のように表情が変わり、よく話すようになりました。

自分で歩いたり、常食を食べたりすることもでき、祖母がずっと食べさせてあげたいと言っていたウナギも、食べさせてあげることができたのです。

そのときにはにかみながら言った「生きていてよかった」という祖父の一言は、家族みんなの心にじんわりと沁みました。

在宅での介護は、常に家族が高齢者の見守りをする必要があります。

私は、実家に帰った午前中だけ介護を手伝う程度でしたが、祖父と一緒に住む祖母と母の一番の辛さは、「常に祖父のことを気にしていなければならなかったこと」であったと後になって話してくれました。

また、母は、祖父が帰ってきてから本人の安心した表情が見られるなど、嬉しいこともある反面、在宅介護の厳しさも痛感したといいます。

祖父が夜中に起きて一人で出かけようとしたり、眠れないと祖母を起こしたりと大変なこともありました。

さまざまなことを乗り越えていく過程で、祖父が家で過ごす時間が経過するごとに、家族の気持ちが、より祖父への介護へ向かっていっている感じがしました。

しかし、2週間目には嘔吐を繰り返すようになり、食欲も徐々に低下。

一人で歩けなくなり、全介助が必要となりました。

だんだんと衰えていく祖父を見ながら、「食べられるものはないかな?」「ラジオなら聞けるかな?」と、なにかできることはないかと家族みんなが考えていました。

3週間目は、食事もままならなくなり、悲しさもありましたが気持ちを切り替え、本人が少しでも安楽に過ごせるように口腔内を綿花で湿らせたり、声をかけながらオムツ交換したりするなど、意識や介護の仕方を変えていくことに。

そして、最期は明け方でしたが、家族に看取られながら息を引き取りました。

在宅介護を経験して

私は、介護スタッフとして施設での介護を経験してきましたが、看取りのときに悩むのはリスクとの闘いでした。

「本人の自由にさせてあげたい気持ち」と「リスクに対する責任」の狭間で、毎日葛藤していたことを覚えています。

必要なリスク管理も確かにありますが、リスクマネジメントが過剰で必要のない部分まで制限がかけられ、高齢者の自由をも奪っているのではないかという場面で葛藤したことは、正直、何度もあります。

在宅介護の最大のメリットは、そういった不必要な責任意識にとらわれない選択ができることではないでしょうか。

本人の好きな時間に寝て好きなものを食べさせてあげる。最後の責任者である家族が介護するからこそ、柔軟な選択ができるのだと思います。

また、最後の3週間、祖父に寄り添ったことで、家族の心の整理もできたように感じました。これまでの祖父との思い出を振り返りながら一緒に過ごした時間はかけがえのないものです。

もちろん、在宅介護の選択肢が全て正しいわけではありません。さまざまな事情で家での介護や看取りができない方もいます。

最期を施設や病院で過ごす場合であっても、自責の念に囚われず、家族以外にもスタッフという介護・看取りのサポーターが増えたという気持ちで前向きに捉えるのが良いと思います。

どんな状況であっても、介護に正解はありません。

完璧な介護を目指すのではなく、高齢者と家族の気持ちを重視しながら、一緒に過ごす時間こそが大切であると私は思います。

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