人気のシャインマスカット 国内では拡大 輸出には高い壁
今日は、この時期旬の果物「シャインマスカット」についてです。
「ちょっと高級なフルーツ」というイメージがあるかもしれませんが、最近ではスーパーやカフェでも気軽に楽しめるようになり、幅広い世代に人気が広がっています。
秋の主役 シャインマスカット
いま、シャインマスカットをめぐる状況はどうなっているのか。東京青果株式会社 果実第二事業部 森本隆史さんに聞きました。
東京青果株式会社 果実第二事業部 森本隆史さん
基本的にはシャインマスカットは美味しくて食べやすくて人気があるっていう商品ですので、入荷量、販売数量が減っていきますと単価はおのずと上がっていくのかな。8月の下旬から9月の上旬が一番安値の基調で動いたのかなと印象は強いです。(今の時点の価格はいかがでしょうか?)ほぼ昨年並みの価格まで回復しているのが現状かなと思います。シャインマスカットがもっと安くなって本当に値ごろ感が出るようになれば、他の果物はもっと売れなくなるのではないかな。それだけ根強さ、人気の絶大さっていうのは恐ろしいものを感じます。
今年は「シャインマスカットが安くなった」というニュースが話題になりましたが、その報道をきっかけに「食べたい!」という人が一気に増え、結果的にさらに人気が高まり、よく売れたため、今は少しずつ価格が上がり始めているそうです。
中にはスーパーで1房1000円を切る価格で売られていたものもありましたが一方で、品質の高いものは引き続き高値で取引されていて、市場には「お手頃なもの」と「高級なもの」両方が出回る、二極化した状況になっているようです。
農家にも嬉しい その理由は?消費者からすればシャインマスカットが安く食べられるのは嬉しい話ですが、実は消費者だけでなく生産者にとっても嬉しいポイントがあるんです。近畿大学附属農場 教授 佐藤 明彦さんに聞きました。
近畿大学附属農場 教授 佐藤 明彦さん
栽培する側からすると、病気が少ない、それから実が割れにくいといった栽培のしやすさがありますので、生産者にとっても喜んでもらえる品種だったと思います。やっぱり高い値段でたくさん売れたということがポイント。「収量」というのは1本の木に対してブドウどれだけつくるかということなんですけどその収量性が良いので、たくさん取れればその分生産者にとっては利益なりますから、そういった点でもプラスになったかな。生産が拡大していくとやっぱりいろんな生産者の方いらっしゃいますので、ポイントは品質を高く維持するということになると思うんですね
「たくさん採れる」「病気に強い」「実が割れにくい」。手間がかかりすぎず、しっかり収益が見込める点は、生産者にとって大きなメリットです。
実際、シャインマスカットの栽培面積は15年間で1300倍に拡大していて、今では全国で栽培されています。
生産量が増えたことで価格が下がり、手に取りやすくなったことで、さらに人気が広がっているという構図です。
ただし、生産者が増えるほど、味や品質にバラつきが出やすくなるため、今後は「どうやって品質を守っていくのか」が重要な課題ということでした。
人気の果物に立ちはだかる大きな壁シャインマスカットは、2006年に日本で品種登録された国産のブドウの一種で、日本生まれの果物。
消費者からも生産者からも高い支持を受けていて、これだけ人気なら「ぜひ世界にも」と思うかもしれませんが、実は輸出には大きな壁があります。再び、近畿大学の佐藤教授のお話です。
近畿大学附属農場 教授 佐藤 明彦さん
果物全般にそうですけれども、例えば輸入の検疫の問題があります。それから使ってる農薬も日本と海外では違いますので、その国に合わせた農薬の基準に守らなくてはいけなく、高いハードルになるんじゃないかなと思います。実際やってみないと分からない部分があると思いますが、日本の果物のPRという点では大きな部分があると思う。ただブーメラン効果といって、例えば海外から逆にシャインマスカットが日本に輸入されるような事態になりますと国内のシャインマスカットと海外生産者のシャインマスカットが競合するのでそこはやはり日本は品質を良いものを作って勝負をしていかなければ値段の点では負けてしまいますので、緊張感を持って様子を見た方がいいんじゃないかなと思います。
果物を輸出する際には検疫が必要ですが、その厳しさは国によって違いますので、各国の農薬基準などに対応する必要があります。
また、世界で生産が広がれば、海外との価格競争が起きることも。
今後は輸出をどう進めていくのか、重要な岐路に立っています。
輸出はチャンスでもあり、リスクでもある。難しい判断になりそうです。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:森本茉菜)