県内市町村 生成AI 約6割が利用 本紙調査 「業務の時短に効果」
人工知能(AI)を用いて文章や画像を作成する生成AIが世界的に普及する中、業務に導入する自治体も増えてきている。神奈川県内33市町村のうち、導入済が12市町村で実証実験中を合わせ6割近い19市町村が生成AIを利用していることが、タウンニュース社の独自アンケート調査で明らかになった。
同調査では1月1日現在の生成AIの導入状況や活用事例、効果、課題などについて県内の33市町村に聞いた。
導入済みと回答したのは36・3%にあたる12市町村。実証実験中を合わせると19市町村(57・5%)が生成AIを利用していた。
議事録要約などに活用
利用するすべての自治体が「効果があった」と回答。具体的には「業務の時間短縮」をほぼすべての自治体があげた。
活用事例として多かったのは「あいさつ文案の作成」「議事録の要約」「企画文書の作成」「アイデア出し」など。さらに、「市長の動画・音声生成AIを使い『市長アバター』を作成し、英語で行政情報や観光情報を発信する」(横須賀市)、「ビッグデータを使った数値予測や行動最適化」(横浜市)、「Excel関数、VBAなどのコードの生成」(平塚市)などもあった。
課題は、セキュリティー面や生成AIが作成した内容の正確性などに対する懸念のほか、生成AIを使いこなす人材育成や技術習得など、「使う側」の問題が多くあがった。
未導入の自治体で「検討中」と回答したのは8自治体で、うち3自治体は導入を予定していた。実証実験はしたものの導入には至らなかったのは2自治体。そのうちの1つ大磯町は、「有効なものだとは思っているが、一般的なリスクを鑑みた。事業者の提案をもらいつつ、検討は継続していく」とした。
4自治体「予定なし」
残る4自治体が検討も導入予定もなかった。
未導入の自治体はいずれも「業務効率があがる便利な技術」という認識はある一方で、「導入費用」「セキュリティー」「技術面」「利用規約の策定」「専門知識を持つ職員がいない」などをハードルと捉えていた。
横須賀市先進事例で他市けん引
横須賀市は2023年4月に全国で初めて対話型AI「チャットGPT」を全庁業務に導入。導入後には全国の自治体から問い合わせが相次ぎ、同年8月には民間企業と連携し、地方自治体の生成AI活用の知見をまとめたポータルサイトを開設した。また同年度からは自治体や企業関係者を対象とした「生成AI合宿」を実施するなど、生成AI導入のけん引役として存在感を高めている。
25年度からは新たに市立学校で生成AIサービスを導入する。期末テストなどの自動採点サービスや学級通信などの文章作成を支援し、教職員の長時間勤務の解消につなげる考えだ。市デジタル・ガバメント推進室では「業務の時間短縮や新たなアイデアの創出など、さまざまな効果がある。今後新たな生成AIがあらわれた際には有用性を検討し、前向きに取り組んでいく」としている。