外国人介護職とのコミュニケーション方法!現場ですぐにできる工夫策とは?
本日のお悩み:外国人介護職の方とのコミュニケーション方法を知りたい!
最近、外国人の介護職の方が施設に入ってきました。
基本的な会話は問題がないものの、業務において細かい指示を出そうとすると、伝わらなかったり、誤って伝わってしまったりとコミュニケーションに苦戦しています。
専門的な内容を伝える際や、細かい作業について伝える際にできる工夫策を教えてください。
現場で実践できる外国人介護職とのコミュニケーションのポイントや工夫策を紹介します!
執筆者/専門家
伊藤 浩一
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14
私は茨城県水戸市にある「いばらき中央福祉専門学校」で、介護福祉士養成の授業を担当しています。今年度の1年生には、インド・ネパール・ベトナム・タイといった多様な国籍の外国人学生が16名在籍しており、日本人学生と同じ教室で一緒に学んでいます。そのような環境の中で、私自身、日々「伝えることの難しさ」と向き合いながら授業を行っています。
私が担当している科目は「コミュニケーション技術」で、「伝える」「受け取る」「共に考える」といった基本的な力を育む、非常に重要な授業です。言語の壁だけでなく、文化や価値観の違いもある中で、学生たちにとって分かりやすい授業をどう進めていくか、試行錯誤と実践の毎日です。
また、私は特別養護老人ホームの施設長も務めており、現場では3人のベトナム人介護福祉士と共に働いています。教室でも現場でも、外国人とのコミュニケーションには多くの工夫が求められており、その重要性を日々実感しています。
この記事では、外国人介護職とコミュニケーションをとる際のポイントや、工夫策を紹介します。
外国人介護職とコミュニケーションをとる際のポイント
1.伝わらないことを前提にしたコミュニケーションの大切さ
まず何よりも大切なのは、「伝わらないことを前提に接する」という姿勢です。
外国人介護職員や留学生と関わる際、私が一貫して心がけているのは、「伝わらないかもしれない」という前提でコミュニケーションを取ることです。たとえ日本語能力試験でN2やN3を取得していても、介護現場で使われる日本語には専門用語や敬語、慣用句などが多く、実際のやり取りには別の壁が存在します。
だからこそ、最初から「伝わらない可能性がある」「誤解が生じるかもしれない」という前提で、丁寧に伝える姿勢が何より重要だと感じています。
2.「わかりません」と言える安心感を育む
加えて、彼らが「わかりません」と安心して言える空気づくりも欠かせません。文化的な背景や遠慮の気持ちから、理解していなくても曖昧にうなずいてしまうことがあります。
だからこそ、私たちが「わからないことは悪いことではない」と伝え、安心して質問できる環境を整える責任があるのです。
【現場ですぐできる!】外国人介護職とのコミュニケーションの工夫策
ポイントを確認したところで、ここからは外国人介護職とのコミュニケーションにおいて、現場ですぐにできる工夫策を紹介します。
1.短く、端的に伝える
2.やさしい日本語を日本人スタッフが学ぶ
3.英語の活用
1.短く、端的に伝える
外国人スタッフへの指示は、短く、端的に伝えることが重要です。
■改善したほうがよい例
【改善したほうがよい例】
「○○さんのオムツ交換して、それからレクの準備をお願いします。できそうだったら水分もね」
このような指示は、日本人には自然でも、外国人スタッフには混乱を招きます。特に早口で言われると、理解が追いつかず、誤解が生じる可能性が高まります。
理由としては、1回の指示に複数の行動が含まれていること、そしてそれぞれの行動が具体的に示されていないことが挙げられます。また、「それから」「できそうだったら」といった接続詞が言葉を長くし、要点が曖昧になってしまいます。
■良い例
【良い例】
「○○さん。3時。おむつをかえます。そのあと、水を飲ませます」
このように、一文一動作でシンプルに伝える工夫が効果的です。「水を飲ませます」という表現は、日本人からすると敬語として不適切に感じるかもしれませんが、「水を飲んでいただきます」「水分補給を行っていただきます」といった敬語表現は、外国人には理解しづらいことがあります。
そのため、まずは簡潔な言い方で伝え、徐々に敬語を学んでもらう段階的なアプローチが望ましいです。
2.やさしい日本語を日本人スタッフが学ぶ
「短く端的に伝える」ことは、「やさしい日本語」の考え方にも通じています。「やさしい日本語」とは、外国人に伝わりやすいように日本語を調整して話す方法で、介護現場でも非常に有効です。
日本人スタッフが以下のポイントを意識することで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。
・カタカナを避ける
・否定表現より肯定表現を使う
「やさしい日本語」は支援の技術であり、相手への思いやりでもあります。ちなみに、私の施設では日本語教師の方に研修をお願いし、スタッフ全員で学ぶ機会を設けました。
■カタカナを避ける
カタカナ語は日常的に使われていますが、外国人には伝わりにくいことがあります。ひらがなや漢字の習得に精一杯で、カタカナまで十分に学べていない場合もあるため、注意が必要です。
【例】
チェックする × → 確認する ○
スケジュール × → 予定 ○
■否定表現より肯定表現を使う
「〜しないでください」よりも「〜してください」の方が、意図が明確に伝わります。否定表現は回りくどく、理解しづらい傾向があります。
【例】
利用者さんを一人でトイレに連れて行かないでください ×
→ トイレに行くときは、必ず職員と一緒に行ってください ○
エプロンは使い回さないでください ×
→ エプロンは毎回、新しいものを使ってください ○
3.英語の活用
インドやネパール出身のスタッフの中には、英語を理解できる方も多くいます。そのため、難しい言葉や表現は英語に置き換えて伝えることも効果的です。
たとえば、「報告」は “report”、「確認」は “check”、「伝えてください」は “Please tell me” など、簡単な英単語を使うだけでも大きな助けになります。
この方法は授業でも取り入れており、ホワイトボードに英単語を書いて説明することがあります。ある日、スペルを間違えて書いてしまったところ、学生たちが笑いながら「違います、先生!」と訂正してくれました。
少し恥ずかしい出来事でしたが、こうしたやり取りも立派なコミュニケーションです。間違いを通じてお互いの距離が縮まる、そんな温かい瞬間でした。
まとめ:やさしい日本語は思いやりのかたち
「やさしい日本語」は、単に言葉を簡単にする技術ではありません。それは、相手を理解しようとする姿勢であり、伝えようとする思いやりのかたちです。
外国人の職員や学生と向き合うとき、「伝わらない前提」で工夫を重ねること、「わからない」と言える安心できる環境を整えること、そして「伝わるための手段」を柔軟に選ぶことによって、少しずつ通じ合える場面が増えていきます。
私たちの一言の工夫が、外国人の方々に安心感と笑顔をもたらします。それこそが、介護の質を向上させる近道であり、現場における信頼関係の土台となるのです。
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